ピアスの穴


ピアスにまつわるエトセトラ。

ピアスの穴を空けると、幸せになれる!

男運が良くなる!

そんなジンクスを聞いた事はなかっただろうか?

男運に関しては、ピアスの穴が奇数だと良くなると言う。

また、ピアスの穴を開けようとしたが、

耳から白い糸が出てきて

それを引っ張ったら、耳が聞こえなくなったと言う

都市伝説みたいな話もあった。

ピアスの穴を開けたくて、
自分で耳を氷で麻痺させて

安全ピンで思いっきりブスッと刺す。

そうして空けたと言う友人らも何人かいた。

暫く経って、その一人が
私の弟であった事もあった。



私は、まだ美容室でピアスを空けてもらえる時代に

ピアスを空けた。18歳の痛い思い出だ。

私はピアスにものすごく憧れた事もなかったし、

周りがピアスしてようと自分は別に〜。と言う感じだった。

しかし!耳の中にスッポリと埋まっているピアスより

下に揺れているホルダータイプのピアスに

心を惹かれ、「空けたい!」と思うようになった。

思い立ったが吉日!私は晴れたその日に

ピアスを空けてくれる美容院に向かった。

どこでも空けてもらえるものだと思っていたが

場所によっては断られた。

友達の働いていた美容室はダメだった。

美容室とは、パーマやアタマのセットの他に

化粧もネイルもピアスも着物も全部

女の欲しい物を備えてあるものだと思い込んでいた。

私は友人が「親子で一緒に開けた」と言う美容室に行った。

始めからここに直通すれば良かった。



そこのパーマ屋さんの女性は

「いいよ〜。じゃあ、そこに座って」と引き受けてくれた。

髪をカットするワケでもないので

鏡の前に座らせられても、タオル類は私の胸にかけない。

その女性は、鏡越しの私にマジックを見せた。

そして「このマジックで、自分で左右対象になるように

印をつけてみて。」と言う。

鏡をみて、耳の位置を確認する。だいたい同じ位置かと

思う所に印をつける。印と言っても●←こ〜ゆ〜丸。

どうやらこれがイメージらしい。

「はい、ここでいいのね!?」

そう言われた。その後、

耳にピストルみたいな物を当てられた。

何をするのだろう?

針を耳に刺すのではないのですか?

「痛いのは一瞬だからね!じゃあ行くよ。」

ピアスって開けるの痛いよね?

でも、
イヤリングをずっとしていて痛くなるより

この一瞬の痛みで耳を飾れる方が、良くないか!?

「あの〜。。どの位 痛いんでしょう?」

私は鏡越しに質問した。

「出産に比べたら、どうって事ない痛みよ!

生理痛くらい?」

「私、生理痛きついんですよね・・」

「大丈夫よ。一瞬で針が耳に入って、もう終わりだから。」

私はもうここまで来たら後戻りは出来ない。

もう、まな板の魚のようだ。


あのホルダーのピアスする!その決心ひとつで

痛みを乗り越える事にする。それしか方法はない。

「一瞬で済むならお願いします」

「じゃあ、いくよ!」

その瞬間。
耳を一直線に通り過ぎる、衝動に似た痛みが

私の体を支配した。

え〜!なにこれ〜!痛い〜!


「ほら、もうピアス入っているでしょ!」

鏡をみると、金色に光る丸いピアスが耳にあった。

「はい、じゃあ今度は反対側!」

私は右の耳の痛みに神経を集中させていた。

しかし、すぐにグッサリと耳の痛みが出来たので

集中する場所がすぐに変化できた。

反対側の耳の痛みが出来たお陰で

私は右の痛みを、かろうじて忘れられた。

これをもっと分かりやすく例えるのならば

次の恋が、前の恋を忘れさせる効果である。

目の前にある、新たなPAINのお陰で

前の痛い恋を忘れられる。

女は痛い目に遭って、磨かれるのである。

これは私の独特の特論である。



私は鏡に映る自分の耳に

金色に光る輝きを見た。

鏡に映る私は、顔が引きつっている。

何故なら「わ〜い!

これで念願のピアスが出来る!」と言う思いより、

痛い。なんだか気持ち悪いのだ。

吐きそうだ〜!と思っていたからである。

生まれて初めて開けたピアスは

痛みと吐き気に襲われたと言うのが

率直な感想なのである。



つけてみたい耳の下にぶら下がる、

ダイヤのピアスは準備しただけムダだった。

「ピアスの穴が完璧になったら

好きなピアスできるから。それまでは

この18Kの、今、耳に入っているのをしてね。」

耳の中に入っているこのピアスは

金が75%で、金属アレルギーのある人向けである。

耳たぶを一気に突き破れるよう

先の方が尖っている。

キャッチと呼ばれる耳の後ろのピンで

ピアスを止めるのを知った。

初めてのピアスは、ぴったりと耳に

触れさせないで、少し浮かせて空気の通りを

良くするものらしい。


一ヶ月は、このピアスを外さず、

オキシドールで時々消毒するよう言われた。

私は1万円を払い、その美容室を出た。

帰宅する途中も吐きたくなる。

この耳の異物感に神経を集中させると

帰り道もうまく歩けない。

帰宅して、一番に母に見せた。

「N子親子が開けた所に行ってきたよ。1万したよ」と素直に言った。

親にもらった大事な体を・・・・こんなに痛めて・・・。

・・と、ちょっと言って「よよよ」と泣いて見る。(←↑嘘である。)


これで好きなピアスが出来る日が来るのは

近いのか?と思ったら

そうでもなかった。

何故なら、私はこの三ヵ月後

膿んでしまったのである。


P.S この話は次回に続く。