おできって、これですか?


20代後半に「吹き出物」の存在をキャッチした。

自分の頬に出来て幻滅したのである。

軽く2年は悩んだ。悩みの種。

私は吹き出物になる種を持って

生まれたのである。

だけど、まだ救いだったのは

「ニキビ」と言うネーミングがある事。

吹き出物ではあるが、まだ

「ニキビ」と言われる方が可愛げがある。

同じ吹き出物でも

呼び名が変わるだけで印象が変わる。

可愛げのない呼び名もある。

それは「おでき」である。

「おでき」は、もっと面積を取り

体の場所に「ここに居ます」と

自分アピールをするような存在感がある。


今回私は、その「おでき」と言う

可愛げのないネーミングの方の

吹き出物を背負う事になったのである。


事の始まりは、何気ない休日であった。

私はお風呂の残り湯を使って

洗濯をしていたのである。

冬物のセーターを

手洗いしていたのである。

洗剤はファーファである。

今流行りの香りの強い洗剤は

苦手である。

匂いがきつ過ぎて具合が

悪くなるのである。

仕上げはアクロンである。

♪アクロンなら毛糸洗いに

自信が持てます♪

思わず歌ってしまったのである。

その手洗い洗濯をする為に

私はお風呂のお湯を

洗面器で救っていたのである。

何度も洗い流しているうちに

右肩と腕に負担がかかってきた。

そして、セーターを洗い終え

洗濯機に脱水をしていた頃

私は自分の体の異変に気付いた。



お風呂の水を救い上げているうちに

右腕に負担がかかっていると

思っていた腕は平気で、

何故か左の肩甲骨が凝っている。

はて?どうしてなのか?

私は両腕を回してみた。

右の肩甲骨は凝っていない。

おかしい。

普通に生きていて、

肩甲骨が凝るなんてあるのだろうか?

このコリをほぐすのに

私はS字になっている肩たたきを

背中に置いてみた。

コリだと思う場所に

グリグリと肩たたきのS字の先を

当ててみた。

どうやらここが凝っていたらしい。

コリをほぐして一安心。

しかし、これが悲劇の始まりであった。

この体の異変は次の日

現れた。



次の日、左の肩甲骨が

うずく・・と思って

合わせ鏡をしたのである。

すると、私の目に入ってきた光景は!

左の肩甲骨が赤くなっているではないか。

しかもこれは、よく見ると


中心がボコっと出て、周りは

赤く取り囲んでいる。

目玉焼きの様な状態。

私はビックリした。

肩甲骨って、盛り上がるんだと。

いや、元々盛り上がっているけど

赤くなってますますフィーバーしてる。

これは、S字肩たたきで

肩甲骨をほぐした結果である。

そして、この肩甲骨を良く見ると

見方によっては、


乳首と乳輪に見えるかも。

とマジメに思った。

程よい乳の大きさに

程よいバランスの乳輪と乳首。

こうやってマジメに書いていると

どこかの変態親オヤジかと

思える内容である。

これは私を正面から見た図と

後ろから見た図が、

一緒になるかもしれない。

「どっちが前でしょう?」と

言って正解される確率は

少ないかもしれない。

そんな事を真面目に考えながら

ふと我に返る。



「黄色のロングドレス着た時

このおできの存在は消せるのか?」

私は急に女モードに切り替わった。


変態オヤジが偽物の胸に

喜んでいる気分でいる場合ではない。


私のお気に入りのこのドレスは

ハッキリ言って出番が少ない。

だからこそ、出番のある時に

綺麗に着たいのである。

背中のガッツリ開いたドレス。

(こういうのしか持ってない)

そこに「おでき」は不要!!

そう。この左の肩甲骨!

ここに出来たのは紛れもない

「おでき」である。



私は生まれて初めて

ドレスの良さを見事に

ぶち壊してくれるその「おでき」の

存在感に圧倒された。


もう、どっちが背中で

どっちが胸でしょう?と言う

次元どころではない。


上手く隠れない「おでき」は

ファンデーションか

コンシーラーで消すか?

だけど、きっと落ちる。

暗闇だから

何もしなくても大丈夫か?

それは一理あるが、でも

ドレスを着ている私が

テンション低めである。

バンソーコーで偽乳輪を隠すか?

でも、それをやったら

左の肩甲骨のくせに

・・・・トップレス・・・・


私は悩んだ。

だけどすぐにいい案を思いついた。

それは!薬を塗る事である。

バカに付ける薬はないと

言われているが

私に付けなくてもいいから

左の肩甲骨に塗ったくるのである。

(※塗りたくる・・と言いたい。)


そして、「おでき」登場の夜は

夜寝る時、背中にプチ痛みはあったが

三日も過ぎたら薬が効いた。

左の肩甲骨が平になった。

ただ、綺麗には戻らなかった。

茶色のシミみたいに

私の背中に留まった。

私はここでも「おでき」の

強力なエネルギーを

感じる。


おできで結構。

もっと世の中に出させろ!

そう語っているように見える。

「胸か肩甲骨か分からない」

正面から見ても

後ろから見ても

あまり変わらない私の体型・・・。

おできが、私の代わりに

何かを代弁してくれている気がして

ならない。