その後の私


親知らずを抜いた。4時間で麻酔は切れた。ああ。これから

私は痛みと共に生きるのだろうか。


心の灯火
「顔の輪郭七変化」を胸に抱いて。

私は歯を抜いて1650円払った。保険が効いてこの金額は

はたして高いのか安いのか微妙である。

「では、明日も来てくださいね。消毒しますので。」とナースに言われた。

ああ。ナースと言っても、受付のお姉ちゃんなんだが

なんとも親切に見えるのだろう。痛みを体験した後に

自分の目に映る人間と言うのは

優しさのオーラをバックに抱えた善人に見える。

私はお釈迦様にでも会ったような気分になり

思わず手を合わせようかと思ったほどである。

「はい、痛み止めの薬です」

そう言われ私が手に取ったのは、白の紙袋である。

歯を抜くこと自体は、麻酔が効いてるので大丈夫だが

問題はその後らしい。

「2時間は食べ物を口にしないでくださいね」と言われた。

奥歯に挟んだガーゼを噛んで、ぎこちない日本語で

「お世話になりました」と言い、待合室を出た。


左の頬が、膨れているような気がする。

舌もまだ痺れている。この感覚で顔を殴られたら

痛みは感じないのだろうか?でも
試す勇気もないので

このままブーツを履き、、私は愛車の待つ駐車場へ歩く。

気分の向くまま、ドライブかねてショッピングコースにする。

痛みはない。しかし、奥歯に埋まったガーゼを変えたくなった。

「あまりマメに交換しないでくださいね。うがいも頻繁にすると

出血止まりませんから」

そう言われたのだった。1時間くらい経ったので

見るのが怖いけど、鏡を用意してみた。

ガーゼを取りだしたら、
ピンク色を通りこして真っ赤になっている。

そして、この不自然な四角の形が不気味である。

思ったより大きな穴に、埋まっていたのか〜!


親知らずとは、一番面積の大きな物体である。

私の「人生勘違い度」には負けるだろうが、

口の中ではかなり独占したペースをKEEPしていたのだ。

私は、真っ白のガーゼを口にした。

これから鉄の味に染まるのである。


口の中で、ガーゼの端の糸が絡んでいる・・・・

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