モデルごっこ〜その3〜


メイクもバッチリ。髪型もいつもと違う印象。自分のストライクゾーンを

離れた服を見にまとって、私が会場の席に着いたのは一番最後だった。

丸いテーブルに7人掛けの椅子。各グループごとにまとまって座っている。

周りを見渡すと、モデルさんそれぞれが一目で分る。


「お待たせしました。いよいよステージ発表です」

司会の女性がそう言うと、会場が暗くなり照明だけになる。

「これからグループの代表の方が、モデルさんのファッションポイントを

話してもらいます。」

これはプロデュースした人の意志の表現だと思う。

「モデルさんは、名前を呼ばれたらステージにお願いします」

この場合のモデルとは、自分の希望に基づいて

アレンジされた内なる自分を表現するのだと思う。

1番目の女性の発表が始まる。


スクリーンに変身前の姿が映る。ああ。下からカメラ撮られると

顔の輪郭違うんだよな〜・・そんな事を思っている私だったが

次々とステージに上がる女性を見て感じた事。


早々と歩くとサマにならないのを、何処から感じたのだろうか。

みんなゆとりをもって歩いている。そして、緊張の顔をするより

堂々としていた方が、服も自分もステージに映える。

結局は姿勢正しくなんだろうけれど、素敵な服を着ています。

そう思うだけで、姿勢も歩く姿も変わる。

ポーズも、「恥ずかしい」と思うと、全部観客に伝わる。

何気なく、ジャケットの襟ぐりを持つ50代女性。

そんなシンプルなポーズもサマになります。

みんな拍手でした。



ステージを歩いている時は、スポットライトが追いかけてきてる。

モデル女性に司会の女性が、「変身後の感想」を聞いている。

これは打ち合わせがない。アドリブだ。でも、その方が

素の気分を伝えられそうだ。


いよいよ私の出番。Oちゃんが代表でマイクに向かってくれた。

「タイトルはカジュアル&ゴージャスです。

みかりんさんの目元が大変印象的なので あえて目元に

アクセントを持つカラーを使い 服は、ファーの豪華さを出す為

シンプルなベージュのパンツルックです。」

・・そんな風にコーディネイトしてくれたなんて!もう

その思いだけでも嬉しい。それらを私は上手く表現出来たのだろうか。


ステージに向かう。聞きなれた洋楽の音が

ファッションショーの気分にさせる。ステージに立つと

人の視線、視線、視線の嵐!ああ。見られて嬉しい。

一周回ってポーズ。派手なアクションは不要。

左手を腰にあてるだけでいいのよ。

しかし2度目のポーズで違う事をしようと思い、悩んでいるうちに

正面で立ち止まって、笑顔でごまかしてしまった。

ああ。モデル失格だね。

やっぱり私はプラモデルなんだね。


今の気分と感想を言う事になった。

「自分では使わないシャドーの色、服のジャンルですが

これは自分以外の人に選んでもらう事で、

オシャレの視界が広がった気がします。

どうしても自分だけだと、冒険出来ない部分が出てきますが

それを変えてくれるのが、周りの意見と思いました」

そのまま本当に感じた事を言った。


最後に6人全員がステージに並んだ。

盛大な拍手が聞こえた。「カメラは、もっと前からどうぞ」

そう司会の女性が言う。

一緒に参加した岡山県の人らと並びながら

私はステージで笑顔を作る。

見知らぬ人の視線が、やっぱり気分いい。

カメラに向かうのが、好き。



今度は、私も誰かを変身させる側に

回ってみたい。

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