夏体験物語1


その日の私は普通に仕事をしていた。

まさかこの何気ないOL生活をしていて

一気に切ない出来事が2件も来るとは・・

「泣きっ面に蜂」とはこの事なのか。

夏の蒸し暑さも、度が過ぎている。

私をここまで悩ませるその出来事を

順を追って話したいと思う。


いつものようにランチの後

私は店内の通路にあるベンチに

座って電話を見ていた。

誰も居ないのを見計らって

ベンチで過ごしていた。

10分くらいネットをみていたら

目が疲れてきた。

食後は眠くなるけど


さらに文字を見ていて眠くなった。

私はそのまま電話を握りしめて

半分寝ていた。

通行人の目も

気にならないアホなOL。

そして、これは私だけじゃないのだが

「あ!もう起きないと!」と言うタイミングが

分かるのだ。

この時間に起きよう!と心に決めると

ちゃんと目覚められる。


今日は5分しか寝てないけど

起きるタイミングが分かるのだ。

5分経った!

私は起きて、すぐ電話をバッグにしまう。

そして目の前のエスカレーターで

下へ下ろうと、

乗るタイミングを見計らっていた。

いつも顔を合わせる清掃の女性が

お客さんと話をしていた。

私は軽く頭を下げ、売り場に戻ろうとした。

出てきたエスカレーターに足を乗せ

下へ下って行く途中に悲劇が起こった。

私はペットボトルを

持っていない事が判明した。

あ!あのベンチに忘れた!

私は振り返ってベンチをみると

見慣れた茶色のウーロン茶が


ベンチに転がっている。

だんだんペットボトルの位置が

下に沈んで見えてくる。

私が下へ下がっているからだ。

私は背中越しに、エスカレーターを

何段上ればいいか見た。

5段か!

5段くらいなら

このままバックしてペットボトルを

取り戻せる!

一番下まで行って、もう一度

エスカレータに乗るより早い!


よし!
サントリーのウーロン茶

取り戻せ〜〜!←今、私の中では

♪愛を取り戻せ〜♪(←語尾はハモる。)


北斗の拳が流れている。ゆわっしゃー!

あたたたた。


私は下りのエスカレーターの流れに

逆らって上へ上へと昇る。

後ろを向いて、逆行するのだ。

1段、また1段上に上がる私。

2〜3段はまだ平気なのだ。

だけど、気が付くと

上っても上っても


また1段また1段と増えてくる。

5段で済むと思ったのに!

まだ階段らしくなっている所は

越えるのはラクだ。

大山は、エスカレーターの出だし!

あそこがクライマックスなのである。

そこをクリアしようとしても

段として出てくるワケではなく

細長くそして、ゆっくりと段になる為

(逆視線であなたも見て見よう!←やらね〜よ!)

ここを飛び越えていると

自分がハットリ君の気分になってくる。


山を越え谷を越え〜〜♪

かれこれ7段は越えた!

かかってこい!←バカ?

こんな所で思わず本気になっている

独身アラフォー女。

しかも思った以上の運動!

越えても越えても、次々と山が来る。

でも、私は忍者ハットリ君じゃないから

これ以上は無理かも!

もう、勤務中に

本格的なエクササイズ。

本気になって飛び越えないと

無様な姿で下に落ちていくからね。

ええ、私の人生の姿ではなくてよ。

なんだかジムで何かやってる気分!

ラストの1段キター!飛んだ〜〜!

ファイト〜!いっぱ〜つ〜!

と思ったら

次の瞬間、
こけた。

エスカレーターの乗る所で

見事にコケタ。


あの、
銀色の足元注意と

書いてある所で滑った。


40歳の女が、こんな所で

まぬけに転んだ。

清掃の女性、その姿の私を見て

見事にスルー。

「大丈夫ですか?」という言葉もなく

見て見ぬふり。

いや、冷たいんじゃない。

こんなアホなこけ方した私を

見えてないフリをしているのだ。

私は変な霊感が憑いたのか

この女性の心境が痛いほど

分かる。

「アラフォーの女性がこけてる。

しかも、エスカレーターを逆行して

こけている。」


この私の一部始終みた彼女は

何事もなかったかのように

一緒に居たお客さんと会話を

続けている。

私はコケタまま、

清掃女性の思考回路を

見事に読み当ててしまった。

私の背景にある

下行きのエスカレーターは

何もなかったかのように

ただ自動的に流れている。

物の気持ちの分かる、

オカルトの私には

まずこのエスカレーターは

「流れに逆らっているアホな女を

弾き飛ばしていやった!」と

勝ち誇った気持ちが

手に取るように分かった。

モノの気持ちと、人間の気持ちを

同時に読んだ。これぞ

オカルトのポリシーである。


とりあえず、私はコケタが

左足の膝付近にアザのような

こぶが2個出来ていたが

これで済んで良かった!と思った。

エスカレーターで降りようとしていた人が

誰もいなくて良かった。

誰も巻き込まなくて良かった!

私も顔面から転んで

鼻血ブーなどじゃなくて

良かった。


大難が小難で済んで良かった!

プラス思考をするのが私だ。

いつまでもここで転んでいては

いけない。転んだら

立ち上がればいいのだ!

私は何事もなかったかのように

暑い夏なのに

涼しい顔をした。

そして私は颯爽と歩き

サントリーのウーロン茶を

取り戻しにベンチに行った。

飲みかけのウーロン茶。

無事にゲットである。



そして私は何事もない顔をして

先ほどハットリ君気分で

乗り越えたエスカレーターに乗る。

今度こそ、普通にエスカレーターを

下る一般人を演出である。


売り場に戻った。

今日はコケタけど、誰にも

笑われずに済んだので

まあいい事にしよう。

そう思って過ごしていたら

第2の悲劇が私を待っていたのだ。


〜次へ続く〜