味噌汁の悲劇


あれは私が14歳と言う、青春の真っ只中に居た頃に起きた悲劇である。

当時から私は、ロングヘアーがポリシーの学生であった。

今思うと・・・中学生と言うのは、たかが一歳の年の差で

どうしてあんなに気を使う年代だったのだろうか。


ちょっと脱線するが、今 私の頭に浮かんでいた、

「たかが1〜2歳の差で起きた当時のアホらしい」事

書かせてもらう事にする。


その1いくら部活で朝練があるからと言っても、1年生は体育着で着てはいけない。

その2・ダサい体育着(ジャージ)なのに、ズボンの裾を1年生が折ってはいけない。

     2年生になると、折ってもいい。3年生になると
    
     裾の先が開くのを抑える為に、右斜めから余分な裾を引っ張ってきて

     
折込式方法を取る事が許される。

その3・ポニーテールは、先輩に目をつけられるので控える。


この様な「くだらない」と思える暗黙のルールが、実在していたのだ。

しかし、これらは校則違反と言うより、

女同士の視点から見た上下関係の礼儀とも

言えるであろう。

だが、この様な集団で属している事により

社会に出たら「先輩と同じバッグを持って出勤するのは、控えよう」と言う


意識と常識が発達するのである。

いつも世間の目とは、女が作り出すものなんのだろうか?


さて。このような窮屈な集団の中で、いかに先輩に目をつけられないように

生きるか?が、私らの課題であった。

しかし、幸いにも私が属していた部活

(バドミントン部と言う名の
帰宅部)の

女の先輩達は、とてもユーモラスで毎日楽しく接してくれた。

そんな環境に身を置いていたせいか、私は1年生の時から

「暗黙了解のポニーテール」にしてもOKだったのである。

しかし、私の場合、人よりロングだったので

ポニーテールを二つに分け、

みつあみにして通学していたのである。

今時、こんな頭をしている学生はいないと思うが

私の、その髪形は、結構 髪の毛が上に上り、さらに

みつあみ攻撃なので、頭が重かったのである。


話が脱線してしまった。本題に入ろう。

当時の私は、わら半紙と呼ばれている安い紙に

書かれた「給食メニュー」を

冷蔵庫に貼り付け、それをチェックしてから学校に行くのが

楽しみだったのである。


私の通う学校は「月・水・金」がパンDAYで、

「火・木」がご飯DAYだったのだ。

あれは、忘れもしない10月のご飯の日だった。

「今日は焼き魚か。味噌汁ね。でも明日は

フルーツヨーグルトが食べれる。ワクワク」

こんな事しか考えていない14歳だったのだ。


お昼時間。私は給食をもらうコースを通り終え、

自分の席に戻ると、自分のカバンの口が開いている事に気づく。

今日は、隣のクラスのMちゃんから
「バービーボーイズ」

「ブラック リスト」をダビングしてもらったカセットを入れていたんだった。

なくさないように、ちゃんとカバンを閉めよう!

そう思い、私は机の横に掛けてあるカバンに手をかけた。

・・と、その時である。


私の頭の上で、「チャポン」と音がした。

顔を上げると、味噌の匂いがする。

私の目の前には、

給食を持って席に行こうとしている、N君が居る。

今、私は現状判断が出来た。

・・私の髪の毛の、シッポが

N君の、味噌汁に入ってしまったのである。

N君は「あ〜はははははは!みかりんの髪、入っちゃった。」と

ゲラゲラと陽気に笑っている。

私は一瞬、どうしていいか分からなかったが

釣られて一緒に笑った。

「N君、ごめんね〜!みかりんの味噌汁と交換するよ!」と私は言い、

席の前で、味噌汁をチェンジした。

私は、そのまま女子トイレに駆け込み、

シッポの先の髪を、石鹸をつけて洗ってみた。

すると、隣のクラスのYちゃんが

私の異常行為に笑いながら「何したの?」と言う。


私は「味噌汁に、髪を突っ込んだ」と白状した。

Yちゃんは「
今日は味噌汁の日なんだね〜。

みかりんの
髪の匂いで分かるよ。でもね、

味噌汁の中のワカメまで 

付いて来なくて良かったね〜」
と言った。

 

淡き味噌汁の、悲劇的な思い出である。