29歳の延長線


その日の私は、前の売り場に用があった。

居たのは、Eさん(28)と Iさん(34)(共に男性社員)であった。

私が売り場に「お疲れ様で〜す」と笑顔を添える。するとIさん

「あれ?みかりん、何処か違う!?メイクか?髪型か?」と言う。

みかりんは何処もいじっていない。でも ああ、分った。

「昨日で、30歳になったんです。だからかな?」と言ってみた。

Eさん「そんな、昨日までと変わらないでしょう!」

Iさん「変わったのは、その
腫れぼったい額か?」

あう〜。改めて言葉にされてしまった。


そうである。私はマユゲが痒くなったのである。

自慢じゃないが、私は変な虫に好かれるのである。

マユゲを蚊にさされ、いじくっていたら

痒みの世界は 更に輪を広げたのである。

これぞ「痒み共和国」の誕生である。

コンシーラーで隠しても赤い!痒み止めを塗っても赤い!

キンカンにまで手を出し、マユゲ付近を攻めてみた。

暫く上を向いていたのに、液体が落ちてきて

目に染みてきた。ああ、人は何故 上を向くと口を開くのだろう。

私の目ん玉が、しぼむ〜。


「ねえ、みかりん、それって拡大してきたんでしょう?

そのまま突入して行ったら、お岩さんになれるじゃん!」

いくら私が永遠に変わらないオバケを

目指しているからと言っても

お岩さんになんぞ 憧れた事はないのだ。

「みかりん、マユゲ付近のオデコ赤いから

何処か変わったように見えたんだね」

面白可笑しい変化なら、ノーサンキューである。


「ああ、ついでに30になったんだっけ。30になったら

もうセーラー服止めようよ!」

なんでじゃ〜!!私は今年の冬のイベントに

セーラー服を着ていこう!と心に決めていたのじゃ。

好きな服を着るのに年齢制限があってたまるか!

私は無限の世界が好きである。制限されるのは苦手である。

「・・・そう言えば、セーラー服 買ったって言ってましたよね、

最後の20代の時・・・」

うぉ〜!!あんたら本当は、みかりんのセーラー服姿を

見たいんじゃないのか!?

本当は、セーラー服姿の私を拝みたいんじゃないのか!

何故、素直に言わないのだ!


そう もがきながら、私は マユゲを痒がる・・・。

この痒みは29歳からの持ち越しである。

セーラー服も、30代に持ち込み可能である。

何故なら、それが私だからである。

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