黒い影


14歳で金縛りを体験した。

16歳までよくかかっていた。

大人になってからかかかると、

脳が寝てて、体が起きているから

金縛りになったのだろう。と

思うようになった。

そして、どういうワケか38歳にして

久々に金縛りに遭った。



私は今まで金縛りにあっても

目は開けないようにしていた。

学生の頃、金縛りにかかる友人らが

多くて、その中の一人が

「目を開けたら、死んだ時に頭に付ける

白い三角が見えてイヤだった」とか

「目を開けたら、鏡に知らないお婆さんが

自分の胸の上に乗っていた」と言うリアル体験談を

聞いていたのだ。

なので、私も目は開けないようにしていた。

見たくないものは

見なくて良いのだ。



しかし、38歳で金縛り再デビューをした私は

目を、しっかりと開けてみてしまったのだ。


事の始まりはケーキ5個食べて

不調な夕方だった。

ちょっと昼寝をしようと思った。

しかし、布団をかけて本格的な

昼寝をしてしまった。

その時 夕日はすでに落ちていた。

部屋の中は当然真っ暗なのだ。

その暗闇の中で、私は霊体験をした。



疲れているのか金縛りに遭った。

なんという久々の感覚。

「懐かしい」とも思いたくもない。

今までの私だったら絶対に

目を開ける事はなかったのに!

この時に限って目を開けてみてしまった。

どうしてか分からないけど

その金縛りをかけた霊が

私のすぐ側に居て

私をあの世へ連れて行こうとしているように

察したからだ。

私も片目で見れば良かったが

ガッチリ両目を開けてみた。


人(霊)に言いたい事がある時は

きちんと目を見て言うべきだ。

だって困るでしょう!?

私はまだこの世に生きている人間だもの。

いつになく私は

けんか腰になっていた。

目を開いて、目と目で通じ合うと思ったら

目はなかった。

目がない。

あるのは

私の頭の右上の黒い大きな影。

なんじゃこれは!?

私は一瞬目を疑った。

いくら暗闇でも、しっかりと

人の形になっている。

頭、肩までしっかり

シルエットになっている。

言っておくが、(生身の)誰かが私の横に

入ってきたワケではない。

目を合わせようと思った私だが

目がないので(鼻も口もない)

もう一度目を閉じた。


すると、私の頭の中に

この霊がやりたい願望が見えてくる。

どうやら私を裸にするのが目的らしい。

私をバンザイさせ、

服を脱がそうとしているのが

私の頭に写ってくる。

しかもその時の相手の男役は

このまま、真っ黒の影。

真っ黒クロスケである。

アホか!肉体がないのに

なんにも出来ないだろうが!


私をあの世へ引っ張って行こうと

したのではないのか?

体が目的か!?

冗談じゃない。

私は「ふざけるな!」と力を込めて言った。


金縛りに合って、声を上げたのは

生まれて初めてである。

声、出るもんなんだなあと思った。

・・と同時に!

「ふざけるな」をうまく発音出来なくて

「ふやけるな!」と言ってしまった。

私は、この よく分からない言葉で

現実に戻って来た。

先ほどの黒い影を確認した。

振り返ってみてみたが

真っ暗な部屋で、目を凝らしてみたが

何も居なかった。


あれは一体・・。

私の妄想だったのだろうか?


その夜

再び自分の部屋に寝るのが

イヤだったが

「あれはきっと幻覚」と決め付け

眠った。

時間が経つと、

夢だったのか、本当に金縛りだったのか

分からなくなる。

だけど、目を開けて

私の右上に居た黒い影は

今もしっかり脳裏に焼きついている。