愛車のクロ


私は愛車のクロを大切にしている。

普通車より小さいけど、人並みにナビが付いたし

お利口なのだ。

しかし、最近ケンカをした。

私に風当たりが悪いのである。

可愛がってたのに!どうしてそういう冷たい事をするの。

クロは暖かい場所から来たのか冷房専門だった。

寒いこの時期に暖房が効かないには困る。

本当はこういうコだったの?

それは例えるなら、可愛がっていた部下が

手の平を返したような感覚だ。

もしくは付き合っていた彼が
本性はこうか!?

疑いたくなるようなものだと言えば

ご理解いただけるだろう。


「クロはこういうコ」と思ってみてきた頃

また新たに発見した事があった。

それはクロは
嗅覚が優れているのだ。

私も昔は車に香水を置いていた。

でも香水ってキッパリ好みが


分かれるところだ。

自分が好んでも、一緒に乗る人が

具合悪くなるような匂いだと失礼もある。

私もあまりきつすぎるのも

頭が痛くなるので

車の香水を1本だけ使い終わると

不要になっていた。

クロも香水なしで過ごしていた。

だけどクロは残り香をキャッチしている。

彼を乗せた後の香水が残っている。

これがつけた当時のままなら

いいのだが

もう付けて4時間以上経って

香水の匂いが変化しているもの。



一般的に香水は

つけたてのホヤホヤの

香がKEEP出来るのはその場だけじゃないか。

時間が経つと自分の体と香水のハーモニーになる。

それがいいバランスのうちならいいのだが

香水によっては

酸化しているのかちょっと変な

においになったりするのもある。

また、雨の日などでちょっと湿った感じで

車に傘があると

これもまた雨の後みたいな

ジメッとした匂いも残る。

あああ〜〜〜。どうしようもないのか。

窓を開けると、寒い。

クロを洗濯機の中に入れて

洗いたい。



不思議な事が起こったのは

Sさんと遊ぶ約束をした日だった。

私は二日前に彼を車に乗せ

出かけた。

彼の香水の残り香が残っているなあとは

思ったものの、今日には消えていた。


そして、今日Sさんを迎えに

クロを走らせていると

どこからともなく
鼻の奥にツンとした

クールな匂いがする。

なんだ?これは。

助手席の後ろの方からその匂いがする。

その匂いの元は
サロンパスだった。

でもサロンパスも落ちていない。

そう言えば彼が腰が痛いと言っていた。

彼が貼っていたのだった。

だけど、その時も

次の日もサロンパスの匂いはしなかった。

何故に今頃?


クロはもう
ない物まで収集してしまう車なのか?

それとも私は昨日、彼の香水に紛れて

サロンパスの匂いが分からなかったのか?



12時ちょうど正午。

待ち合わせの場所に到着。

Sさんは素敵なトレンチコートを着ていた。

Sさんに暖かいお茶を渡し

愛車に乗ってもらった。

暖房が付かない事を話しながら

ついでに
クールミントのような匂いがするが

それはメンソールではなく

サロンパスである事を言った。


「別にそんな不快な匂いじゃないから大丈夫」と

言ってもらえたが

なんか落ち着かないので

消臭剤を買うことにした。

「でも二日前の匂いが取れないっていうの


変だよね」

「昨日は違う匂いだったんですよ」

そんな話をしながら店に入る。


ドンキは見ているだけでも楽しい。

私は車のコーナーに行った。

色んな香水がある。


葉っぱのデザインに

香水染み込ませているのも良いけど、

一週間しか持たないのだ。

色々物色して

水色の、シュワシュワとした飴みたいな

ガムみたいな匂いの消臭剤を買った。

なんだか美味しそう・・。

そして早速愛車に置いた。

確かに爽やかな空間だ。

クールミント(サロンパス)も消された。

だけど、今度はこのシュワシュワの匂いが

私のひざ掛けなどに付いたらイヤだなあと思った。



Sさんと楽しく時間を過ごし

その後、彼に愛車のクロの件を

話した。

すると彼は

「確かにサロンパスは貼っていたけど

あれって匂いしないやつだよ」と言う。

私もそうだったと思った。

だけど、二日後に出てきた匂いって

一体なんだったんだろうね?

私、彼を乗せた後に

自分以外の人乗ったのは

Sさんだけだし。

不思議だ。

すると彼は言う。

「あ〜・・もしかしてその時って

俺、
すごく腰が痛い時で

もうすぐギックリ腰になるような時
だったから

SOS出してクロに伝えてもらったんじゃない?」



クロは

素晴らしいテレパシーを持った車なのだ。

さすが私の所へ来た車である。

愛想付かずに(付かれずに)

乗って(ノッテ)行こう。