ケータイの向こうから


それは深夜の出来事だった。私のケータイにメールの着信が残っていた。

「こんばんは。面白い画像があるので送ります。」

差出人は会社のボスである。面白い画像?そうそう、昨日言ってたよね。

「みかりんさんにメール送ってやっから!」と。

ボスの事だ。
受け狙い画像だろうか。

それとも
18歳禁止の画像だろうか。私はボタンを押した。

何が出てくるのだろう。ドキドキ。ワクワク。

上から画像が明るみになる。

ケータイを持った手が映っている。なんだ?これは。

下の方まで画像が出てきて、私は声にならない叫びをあげた。

・・・・ケータイから貞子が飛び出している・・。

貞子の背景は、勿論 馴染んだ井戸である。

なんじゃ~!これは~!

このまま見ていたら、画像が動くかもしれない。


あの、貞子の地べたを張る動きは

真似して「似てる!」と言われても 

(真似するなよ!)もう勘弁!

私はボタンを押した。いつもの待ち受け画面、にゃんにゃんになった。

私は高鳴る心臓を抑えながら、お風呂に向かう。

ボスのいじわる~!

目にしっかり焼きついて離れないじゃないか~!

私は髪を洗う。ふと、天井から視線を感じる。

貴方もそんな瞬間はないだろうか。

気のせいだとは思っても、「見られている」と感じる時、

実際に天井の上から見られているらしい。そんな事を思い出しながら

一人でお風呂に入る。



貞子が夢に出てきたら、

ボス、どうしてくれるのじゃ~!しかも

なんで今時「貞子」なのだ?どこから回ってきた画像なのだ??

私はお風呂から上がり、即 深い眠りについた。

・・・しかし、寝る前の画像とは良くも悪くも

潜在意識にまで浸透するものらしい。

私は貞子とご対面をすると言う

夢のような夢を見れたのである。


悪夢から目が醒めて、出勤する。

ボスが「おはよ~!みかりんさん。」と爽やかな笑顔で言う。

「ボス、私は深夜にあの画像を見たせいで、

夢の中で
貞子と初共演しましたよ。」

私が
うらめしそうに言うと「は~はははははは」とボスは

笑う。ボスよ
、私になにか恨みでも???


このまま午前は過ぎた。

お昼時間にバックルームに一人で私が居ると

ボスが入ってきた。

「みかりんさんに送った
貞子の画像、自分のケータイ開くたびに

待ち受け画面に出てくるんだけど~~!不気味。」と言う。

昨日、夢で貞子と共演して、ボスの画面に出るよう

私はお願いをしたのだろうか?

小心者の私に、そんなお願いができるはずがない。

そのようなビッグなお願いは、七夕に書けば良いのである。

そこにFさんが「失礼します」と言って入ってきた。

「Fさんにも、この画像送ってやっかな~。」と言いながら

ボスは画像を見せる。

「え~!!なんですか!これ。いや~!」


驚くFさん。ボスはさらに言う。「みかりんさん、Fさんに転送してけろ」

・・・・転送スレバ死ナナイ・・・・

私は先日 一人で観た「着信アリ」を思い出す。

「私は、性格が良いので、そのような事はしませんよ~」

自分で、自分の性格が良いつもりである事を主張。

しかし、この発言は見事に
スルーされる。


昼下がりのバックルーム。

「さっぱり消えね~っちゃ~!!」とボスが言う。

ボスの深夜の、お茶目な悪戯は、

今 そのまま返ってきたのである。

これは、地球が丸いからである。

「ボス~。ドコモに行って聞いてきたら いじゃないですか。」

私は もっともな意見を言った。するとボスは

「こんな画像、見られたら恥ずかしいっちゃ~~!!」と言った。

これは決してタテマエではなく、究極の本音であろう。

・・・・・今、私は気が付いた。



私の ゴスロリ ショットも 何かの勘違いでボスに

送ったら、
間違いなくボスの仲良しグループに

転送された事であろう。

キュートな女性が着ていて、可愛いならともかく、

私が着たのでは、「場違いアホ女」。

私は、ますます「アホ女」と言われる所であった。

そしてボスは 「みかりんさんの 画像、消えね~っちゃ~!」と

叫んだ事であろう。こうなる前でよかった。

私は 今、さりげなく貞子に感謝している。


さて。この貞子の画像だが、ボスの話によると

あの画像を、そのまま見ていても

貞子は動く事なないそうだ。

しかし、ボスよ、貴方の待ち受け画面は

いつも貞子が WELL COMEしているではないか。

ほらほら、「貴方に会いた~い」と手を差し出して

モーションをかけているではないか。画面の向こうから。

男なら、遠慮なくノッテみるが良い。


・・・・しかし。私のゴスロリ ショットとご対面の方が

彼は ちょっぴり幸せかも知れぬ。

私は、そう思いながら、サンドイッチを食べた。