2007 クリスマス仮装大会


一度此処に足を踏み入れたら、抜け出すには気力がいる。

一度ハマルと後は破滅に向かって急加速。表向きは「忘年会」だけど

知る人ぞ知る「誘惑の悪の花、コスプレ大会。」

(・・・オカルトチックな出だしである。)

会を重ねるごとにパワーアップし、2回目に会う人は完全類友。

初めて来た人だけがお客さんで居れるこの空間は

リピーターさんが客であり、身内であり、時には従業員になる。

それぞれの自分の役割を察し、各自が自分の持ちカラーで

事が発展して行く異次元ワールド。

ひとりひとりが演出者であり、複数集まる事で

清らかなキリストの祝いが、とてもDEEPな夜と化する。

そんなきよしこの夜。。。
私はSM女王になる。

(何も先入観なしに読むと、怪しい世界に足を踏み入れるようである)


この店に集まる人達は、平凡に生きているのを嫌っている人間である。

いつも生きている事を感じていたい、向上心の強い人間が多い。


そして、少なからず
目立ちたがりである。時にこれが時に負に働く事もある。

しかし、この様な場では負に受け取る人はまずいない。

全てがプラスに動き、盛り上がる。

みんな、人前に出るのが好きだ。でも、「我が我が!」と言ったノリではない。

ひとりひとりの違ったノリが、一丸になり、星はひかり、

すくいのみこは〜み〜ははのむ〜ねで〜

眠る夜が繰り広げられていくのだ。

何故、この様な人材ばかりが集まったのか?

それは簡単。
類同士だからである。

世間一般から
「変わり者の集まり」と言われようと

「何か
非日常的なモノを強く求めていない?」と

心の奥を読まれても

みんな一般常識が程よく通じる人間である。

私は、この店のマスターが大好きだ。


料理を作りながら、裏方だけに回らず

率先して毎年絵の具でメイクをし、ある時はスーパーマン、

ある時は謎の中国人、今回は異邦人をやっている。

司会をしながら、場に参加していく姿勢を崩さないオーナー。

そんなマスターを見ているから、参加者みんなはいつのまにか

その背中を引き継ぐ。


知らず知らずのうちに、私もいい影響を受けたように思う。



「はい、みかりん。うちらの演奏は終わったから、次、行ってね!」

「あれ?もうですか?まだ演奏していないバンド、ありません?」

「ベースが遅れてくるみたいだよ。次、行ってね」

「はい。じゃ、着替えてきます。」



私は歌を歌うわけでもなく、(人前で楽器を弾きこなせるワケもなく)

純粋なコスプレ衣装に着替える。

ここでの私のパートは、非日常の自分になり、好きな衣装で

人に見られる事なのか。なんて一石二鳥な役割なのだろう。

私が着替えを用意して階段を登って居ると

後ろから3名着いてくる。

1人は
バカボンメイクのEさん(33歳 オス)

自称体重100キロ。食べるのが趣味。今回はこのパーティーの為に

女装をする事を決意。特注でチャイナドレスをオーダーする程の

思い入れには「恐れいりました!」の一言である。

あとは
若いカップル一組。

カップルは、今回の応援に駆けつけてくれた従業員。マスター指示により

男性はメイド服。女性は妖精衣装を着た。

私は予定していた「にしおかすみこ モノマネ トーク」で

司会者に回る事にした。

丁度良かった。一人で話すよりバックダンサーのように

人が居てくれた方が心強い。

彼らはこれから先、どのように動いたらいいのか分からないようなので

私がまず、このテクノをかけてもらったら登場する。

私がしゃべりに徹底し、みんなを紹介するようにするので

「このブタ野郎!」と言ったらひとりずつ出てくるよう話し合いをした。

チャイナドレスに着替えているEさんが言う。

「ねえねえ、可愛い順番に出て行こうよ!」

・・・・そうだな。じゃあ、トップバッターは妖精のお姉ちゃん、

次がメイドの女装男性。
最後はお前だ、Eさん。

Eさんは言わば
「トリ」である。(バンドで言う 一番人気でメイン扱いの事)

下の会場では私らが準備をしている間、

ギターとベースがリクエストに答えて演奏をしている。

なんでもあり!なこの店で私達は必死になって

舞台に向かって着替えている。

しかも、Eさんのチャイナ女装の為に

メイクを率先して担当してくれる女性Kさんも居る。

Kさんは演奏で太鼓を叩いていた女性である。

今度は裏方に回ってくれている。

なんて素晴らしいチームワークなのだろう。

私はSMルックに身を包み、準備OK。

「カッコいいですね〜!」とKさんに言ってもらえた。

背中にカイロを張り、これから声を張り上げるので

しっかり気合を入れる。なんの台本もないこの場で

どうしようかちょっと悩みながらも

時間もないのでなるようになる!と思い先へ進む。



「用意できました〜!!」私のこの一言で

CAN’T USED THIS!が店内にかかる。気分はハイテンション。

何故、あの曲を聴くと気分がワクワクしてくるのだろう。

私が登場すると、側にいた観客(さっきまで演奏だった複数のバンド)が

「お〜!!」と言って歓迎してくれた。

よし。行くぞ。叫び声
「あ〜!!!」

私はこの瞬間に「決まった」と思った。

そう、大衆を相手にする場合、
「始めの第一歩」が事の全てを決定している。

最初からコケると、振り向いてもらえない。食事に気をとらわれずに

いかにこちらに興味を示させるか。それはハッキリ言って

なんとかなる!と言う
ハッタリ根性で堂々と笑顔を作る事。

それだけである。


私はムチを
にしおか風に肩に構え、店内を見渡す。

幸いにも会場は、バンドの影響でテンション高め。

第一声、
「にしおか〜 すみこだよ」

このモノマネは、ずっと喉を潰すくらい叫んでいると言う

切ない宿命が待っている。

よし。こちらに気持ちが傾いているな。私をとにかく見ろ!!

1人残らず視線はこちら。
おお・・来てる・・来てる・・・。

大きな波と高鳴る胸の鼓動が、最高潮に来てるのだ。

私は
この手に取ったような歯ごたえ感が好きである。

今回初めて参加した
み○と、支店別のYさんの姿を発見。

あっけに取られるかと思ってYさんを見てみたが

彼女は私の予想を超え、「うわ〜!感動!」と言う目で見てくれている。

これは「面白いモノを見に来た」と言う感覚より

あまりお目にかかれないSM女王様を生で見れた。

と言う欲望のまなざしだ。

そんな格好している人、生で見れるなんて!しかも

それが会社の人〜〜!!Yさんのミーハー心が聞こえてくる。

おお・・Yさん、貴方が知らない職場以外の私の

芯の素顔をこれからたっぷり見せて あ・げ・る。

会場はいつのまにか私の話す叫ぶ声に調和してくれた。

「この衣装は、弟が今日の為に用意してくれたんだよ!!」

この一言を言うだけに、怒鳴り声を上げる。

観客が反応して目を大きくしてみてくれる。

よし、よし。この調子である。

マスター、もう、店は任せてください。

(↑是非、本職で聞いてみたい発言である。)


このノリをKEEPしながら、コスプレ仲間を紹介すれば

彼女達(?)も
見られる事の素晴らしさに気づくだろう。

これをきっかけに目覚めよ、コスプレ同士よ。


私は仲間達を紹介するため、打ち合わせ通りの

「このブタ野朗!」と声を上げ、ムチを鳴らす。

床に鳴り響く「バシッ」と言う音も快感である。

鳴り響くCAN’T USED THIS!をバックに

一番可愛い妖精さん登場。男ウケ間違いなし。

見ようによっては「ウェディングドレス」にも見れる。

「かわい〜!」「かわい〜!」女どもの声である。

・・・私には言われない歓声である。ここはCanCamトークショーか??

「お前、随分かわいいって言われているじゃないか!」

私はストレートにそのまま言った。

「おい、次だ。このブタ野朗!」

二人目現れたのは、妖精の彼氏である。

メイド服に身を包み、髪はロングの銀色のウィッグ。

おい、ジミー!(←勝手に即 名づけた)

お前、可愛いじゃないか!しっかり化粧してもらって良かったな。」

私は女装の彼の参加に心から感謝した。

くすくす笑われながらも、この場にしっかり立っていてくれた。

「さあ!みなさん!最後のトリです!最後はすごいぞ!

さあ出て来い!このブタ野朗!!」

「はあ〜い。」

最後に出てきたEさんは、真っ赤なチャイナドレスで登場である。

一同、大爆笑!「お〜!!いいぞ〜!」

うはははは!笑い声とテクノの流れるこのフロアで

Eさんは「似合う?」と表舞台に出てきたのだ。

しかも飛び切りの笑顔で。


「これで全員集合!!みんな、実はこのEさんは

今回のコスプレで大変気にしていた事があるのだ。

ちょっと聞いてくれるか?」


Eさんにマイクを回す。

「はい。俺、この服で現れる事によって

Lちゃんに
婚約解消されたらどうしようと悩んでいたんです。

「おい!L!EさんはLに振られる事を気にしていたぞ!

大丈夫だよな!?」



遠くで見守っているLに私は声をかけた。

するとLは両手で大きく輪を作ってみせた。

一同拍手!私はEさんと、今回初チャレンジのカップルに

お礼を言い、四人でフロアに一列になった。

「みなさん、最後に今回のコスプレのこの3名に

盛大な拍手をお願いします!!」


あちらからも、こちらからも拍手と

ケータイと、カメラが来る。私はこの視線とカメラが好きである。

何処に視線を合わせていいのか?

どこのカメラにキメのポーズを作ればいいのか?

迷うくらいである。

持ち時間5分の為に曲をかけてくれたMちゃん、

終了です。と私は合図した。

沢山のシャッターと拍手の中、私は今生きていると思う。

銀色の光の数が、まぶしい。



バックのコスプレ仲間達が去った後、私はフロアでマイクを握る。

「本日はご来店くださいまして、誠にありがとうございます」

観客のみなさんが大爆笑。

突然 叫び声から標準語アナウンス風になったからか?

「今回はこのような場を用意してくださいまして

本当に心から感謝しております。

さて。紹介が遅れました。ワタクシ、○○○○の××××店の

みかりんです。」軽く自己紹介をした。

一同
「え〜〜〜!!うそ〜〜〜!!」とビックリされる。

私は、企業OLである事を世間に知られ、

ドン引きされる事に
昔から非常に快感を覚えている。

本当にそんな格好でマジメに働いているのですか??

そう言われるのが、いつも好きだ。

「今回初めて参加した友人
み○と、

隣に居ますのは私と同じ職種で、支店別のYさんです。」

マイクは握った人に主導権があるのだ。

もう、言ってしまった方が勝ち。
み○よ、Yさんよ、

しっかり今後もこの活動に参加できるよう

みんなに名前を覚えてもらうが良い。


「Yさんはこんな私を見て、

この人が自分の先輩で、この人から仕事、

立ち振る舞いから雰囲気まで全てを

影響されなくて良かった
と心の底から思っていたら

どうしようと思いながらも、今回のコスプレ大会に呼びました」

私がそのままマイクで胸の内を話すと、Yさんは

「大丈夫です〜。そんな事ないです〜」と観客席から言う。

この場を借りて、本職の初売りの話をし、

私の出番が終わった。


マスターに「本当にどうもありがとう」と言われた。

私も、演奏をするバンドのみんなも

自分の好きな事をさせてもらえるこの店が好きだ。

此処に集まる人達は、みんな観客と演出の役割を担当する。

2回目以降に会う人達が、初めてのお客さんに

このようなノリですよ、と言う事を自然と伝えていく。

そして、いつのまにか心が一つになる。


自分の居場所は、自分を必要とされる場所にある。

そう感じた2007年のコスプレ大会だった