愛車のシロに乗って


2019年10月、台風19号が来た。

今まで「宮城県は台風がそれるから

大丈夫!」と心のどこかで思っていた。

しかし。その考えは

180°ひっくり返された。

とんでもない被害にあっている人が沢山いた。

お客さん達の話を聞くと、

「水が来ない!電気がこない!」と言った話もある。

その位はまだいい方。

家が崩壊した、車がダメになった、

お亡くなりになったと言う話も聞いた。

私は、自宅も車も何も問題はなかったけど

被害にあっている仕事関係の話を聞いたら

その中の一人に、私が20代の頃

お世話になったI上司がいた。




この20年間、私はI上司と

売り場で一緒に働く事はなかったが

思い起こすと、I上司には

仕事の面以外にも大変お世話になっていた。

付き合っていた彼氏とのごたごたで

警察沙汰やら、嫌がらせ電話などで

I上司には何度、

お世話になった事でしょう!←

昔からこんな私のせいで、←

何度今の仕事を辞めようと思ったか←

だけど、上司たちや会社に守られ

私の図太い神経もあり

仕事を辞めることなく、居座っているのです。

それは、居心地がいいからなのです。

思い返してみると、働く人達はみんな

基本的にいい人が多かった。

助けてくれる人が多かった。

仕事に限らず、必要な人しか

私の周りに残らないお蔭で


毎日過ごしやしく、そして

私も仕事の取り組み方も

変わってきたのです。


私は「付き合う男性によって、

自分が変わる」と

思っていましたが!

それは服の好みやら、音楽とかなど

影響を受ける・・と思ったのは

20代前半までで、

根本的な所は変わらない。

30歳近くなってからは

ぶん投げれる度に、自分はまともな道に

辿り着きてくると言う考えに変わりました。

話は、それてしまいましたが

(反れてはいないの。ここを書かないと

先に繋がらないのだ。)


あんなにお世話になったI上司に

私は、仕事での成果もろくに出せず

喝を入れてもらっても、

抜け殻になった私には何も響かず

最後には、仕事を辞めて

知り合いの飲み屋で

ホステスでいいと思ってました。

それでも、I上司は私に

期待をして、仕事の面では

叱ってくれたのです。

そして、時間は流れ私も店が異動したり

気が付けば、今の職場に居座り

人生の半分が今の仕事・・・と言う感じです。

それなのに、あんなにお世話になったI上司に

何も恩返しが出来ていない。

そんな時、今回の台風の件で

I上司の自宅が床下浸水と聞き

私は個人的に「お見舞金」を渡そうと

思ったのです。

ここで、やっと仕事以外の面での

恩返しが出来ると。



私がI上司に、手渡しで

お見舞い金を渡すには

方法が二つありました。

一つは、I上司のいる店に行く事。

二つ目は、I上司の自宅に届ける事。

私は、上司の店に顔を出す事を

支店別のSさんに相談すると

「その日は休み」との事でした。

そうなると、私が休みの日に

I上司の自宅に直接向かう事のみ。

私は、愛車のシロのナビで

向かう事になりました。



初めて使う愛車の「ナビ」

前の車と同じで、とくに困った事もなく

行きたい所の自宅の電話番号を入れる。

住所でもいいんだろうけど

長いから面倒なのだ。

そして、電話番号を入れたら

名前を入れるとの事。

名字だけ入れたら、なんと!

I上司のフルネームが出た!

す・・素晴らしい!今時のナビって

こんなになっているの?

私は「初めてのお使い」の気分で

シロが話す道案内に従う。


快適な休日。私はI上司が

もしパチンコ屋に外出されては

困るので、
なるべく午前中に行こうと思った。

AM9:00に出発。

外は快適な晴れ空。

BGMはいつもダンスミュージック。

シロの案内に従って走る。

所が、思った以上に「一方通行」が

多くて迷う!


私がI上司に行く事は、もちろん内緒。

もし、迷子になったとしても

Iボスには電話出来ない。

「お見舞金なんていいから!いいから!

さあ、帰って帰って!」と言われるのが

目に見えている。

ナビが付いているのに

迷子になるワケないだろう!と

普通の人は思うのだが

私は、普通じゃないので。

「目的地周辺です」とナビが

終了した。

ここから私の試練は始まった。

大まかな道は案内されて分かったが

団地に入ったら

どこが6丁目で、どこが7丁目が

分からない。

しかも私が今居る所は3丁目。

目の前で話をしている主婦二人に

声を掛けて、聞こうかと思った。

しかし。彼女たちは私の

怪しいサングラス姿の私を見て

「目を合せてはいけない」と思ったのか

さっさと二人してお互いの家に入った。

私の愛車がセダンだったら

分かるが!←


コンパクトカーで、こんな

乙女チックな私が

何故警戒される!?←バカ

そうか。ここは地獄の3丁目かと勝手に思い

私は、目元の隠れるサングラスを止め

無色透明のメガネを掛け直した。



私は同じ所をグルグル回っている。

ちょっと離れてスーパーの駐車場で

緊張感を抑えるために、休憩。

いつもなら爆音のBGMも

良く分からない所を走る時は

音はすご〜〜〜く低くする。

そして、ルイボスティーを飲んで

深呼吸。

ナビの画面を見て見たが

団地の大まかなものは出ているが

個別できるほどの細かさはあるわけない。

これは・・スマホで検索して歩くか!と

思ったが、私は地図が分からない。

「自分がこっちだ!」と思った方へ行くと

反対方向が正解だったと言う女。

ううう・・どうしよう。

私は再びシロを走らせて

ウロウロする。


暫く走り、踏切を渡り終えると

私の後ろにパトカーがいる。

おお!なんというタイミング!

後ろのパトカーに道を聞こう!

これは素晴らし道案内人が配属された!

私は赤信号になったタイミングに

左に曲がり、コンビニに車を止めた。

そしてダッシュして

赤信号で止まっているパトカーに

笑顔で近寄った。


「あの〜・・私は決して怪しいモノでは

ありませんが」と言い←バカ

「〇〇〇の7丁目に行きたいのですが」と

相談をした。

すると、警察官2名は

大きな地図を広げて

「〇〇〇は、反対側だね。」と言う。

おお・・やっぱり私が思った方に

来ると間違うんだね。

「ここは一方通行だから

グルッと回って、

反対側に行ってね」と言われた。

ここも一方通行だったんだ。

良かった〜。

今、パトカーに会わなかったら

来た道を帰ろうとして

とんでもない事になる所だった。


信号も青になったので

「どうもありがとうございました」と頭を下げ

私はまたシロを走らせた。

なんか、今日何回

グルグル回っているんだろう。




〇〇〇らしい場所に付いたが

7丁目が分からん。

お!ウロウロしている私の前に

小さい子を連れた親子発見。

私は車の窓を開け

「すみませ〜ん。

ちょっとお尋ねしますが」と

恐る恐る声を掛けた。

マンション前にいたその親子連れ。

30代くらいの優しそうな男性。

「7丁目ですか。

ここは2丁目なんですよ。ここを

ぐるっと回って左側です」と言ってくれた。

しかもご自分のスマホを取り出すし

「今、いるのがここですよ。」と

現在地まで教えてくれた。

なんて親切な人!

助かる!


また私は反対方向に来たのか。

もう、ここまで間違うと

才能としか言いようがない!←バカ

この親子に良い事がありますように!と

祈り、再び愛車のシロを走らせた。


7丁目付近に来たら

どうやら先ほど私を見て

解散した主婦二人がいた所だった。

元の場所に戻ってしまった。

こういうのを「振出に戻る」って

言うんだね。

あらまあ。じゃあ思った方向と

反対に曲がってみるか!と

ウィンカーを上げ、またウロウロ走る。

もうそろそろI上司のお家が見えるはず・・

と、思ってバックミラーを見たら

後ろの車が急いでいる感じだった。

前を見ると、道も細くなっている。

此処から先、行き止まりって事ないよね?

私は、不安になり

そのまま止まってウインカーを上げた。

後ろの車は、私を追い越し

そのまま走って行った。

この先にもまだ道はあるのか・・・

この先を進まないとI上司の家は

見つからないのかなあ・・と

途方に暮れて、ため息をついた。

もう10:30になっている。

あ〜あ・・1時間半も

私は迷子になっていうのか

と、思い何気に左側に並んだ

家を見たら!!

目の前に「I上司」の家の表札が!

ええええええ!!なにこれ〜〜!

なにこのタイミング!

そして、奥に誰かいる!

しかも煙が見える!

I上司がタバコを吸いながら家の外に居た!!

わああああああ!!

スゴイ!分かりやすいサインが!

だって本人がいるんだもの。

私は、路駐して

「I上司〜〜〜!」と

大声で叫んだ。

一瞬、何事?と言う顔をしたI上司。

突然の私の登場に

I上司はビックリ。

「あの、あの、ご自宅が浸水されたと

聞きまして。少しだけですが

お見舞い金を渡したくて来ました」と言った。

や・・やっと着いたわ〜〜。


私は目的達成!

Iボスは「それはどうもありがとう」と

快く受け取ってくれた。

玄関側から、自宅の様子を見せてもらったが

畳みが8枚、廊下の上に上げられていた。

大人の膝くらいまで水が上がってきて

大変だったと言う。

水を掻きだすのだって大変だったでしょう。

私は、今回の台風のお見舞い金は

「20代の頃、付き合っていた男性の件で


お騒がせしてI上司に

お礼も出来なかったから

その恩返しも兼ねてです」と伝えた。

私は何度か、男性の件では

お世話になっている為

飽きられる顔をされるかと思っていたのに

落ち着いた口調で

「迷惑かかったなんて

一度も思った事ないぞ!」と

笑顔で言ってくれた。

私は、そう言ってもらえたのが

とても嬉しかった。

迷子になりながら、I上司の家に着き

さらにちゃんと本人に

お見舞い金を渡せた事で

一気に気が抜けた。

心の奥に引っかかっていたモノが

消えてくれた感じだった。

迷いながら来た私に

I上司は帰り道は

「来た道を行くと

大きな道路に出るから大丈夫」と

教えてもらった。



帰り道は、通常の爆音の

BGMで、ノリノリで帰る。

ああ。天気が良くて快適だなあ。

帰り道に、先ほどお世話になった

パトカーとすれ違った。

向こうは気づいていない。

あの時、本当に道案内してもらえて

助かりました。

様々な道案内の人達に感謝。