面白いものを見た。


それは私の平和な休日の日に起こった。

晴れた平日のお昼に

それは起こるべき事として

しっかりと起こった。


私はお菓子の材料を買いに出掛けた。

そのショッピングセンターに入った途端

すごい音響が流れていた。

次いで男性陣のすごい掛け声も聞こえてきた。

なにかイベントでもやっているのだろうか?

私はやや「うるさい」と思うが

その外野の歌にも(掛け声にも)気持ちを

持って行かれる事はなく

淡々と自分の目的の物を

買う事だけを考えていた。


会計をしようとしたその時

知り合いに会う。

「今日休みなの?」と声を掛けられた。

「はい。休みです」と私が答えると

「今から、面白いのが見れるから

ちょっと一緒にあっちに行ってみない?」と

誘われた。

なになに?面白いものって?

もしかして、入った途端に

音楽が流れて誰か


歌ってたみたいだけど

それを見るって事?

「大正解!本当にウケるから!」と

言われた。

私も買い物だけを済ませて

知り合いの言う所に一緒に行ってみた。


向かった先は

ちょっぴりステージが用意できるような

広場であった。

このステージと言うのは

良くファッションモデルなどが

歩いたりするようなTの字になっている

あの光景。

「もしかして、アイドル!?」

「そう。なんかこれから

売れていくであろうアイドルよ」

10代半ばくらいの女子3名が

ステージに立っている。

このアイドル、センターの人が

緑色のカツラをかぶっている。

両サイドはピンクと黄色のカツラ。

なに?これ。

「なんとかレンジャー」の

女子バージョン?

「違う違う!アイドル」

あ、そうか。失礼。

そして私が次に

ビックリしたのは

このアイドル達をみる為に集まった

観客の人達!

一眼レフのカメラに、三脚を使って

本格的に写真を撮ろうとしている人が

10人くらいいた。


え?こんなショッピングセンターで?

あとは、アイドルの追っかけみたいな

特攻服(ピンク)の衣装の人達。

何故か黒のメガネをかけている人達が


多いように見える。

観客の8割が男性で

30〜50代メンズ。

ちょこちょこと女子も見かけるが

どちらかと言うと中学生くらいの

アイドルに憧れてるような人。

その観客のコーナーに

私とたまたま会った知り合い。

「これからね〜、あそこにいる

お兄さんたちの面白いものが見れるよ」

そう言う私の知り合いは


何回か、このイベントを見た事があるようだ。

「アイドルより、周りの人を

見ている方が面白いってみんな言うんだよ」

ほほう。それはもしかして

AKBのファンのようなもの?

AKBに限らず、今の時代って

アイドルがウケるのか?



さて。先ほどのアイドル。

グループ名はなんだか分からないが

センターの人が話をしているのを

追っかけファンが目を輝かせて

見ている。

いよいよ歌を歌いだした。

声は、高い感じで

(アイドル低音だったら引くね)

アイドルらしく、リズミカルに

揺れながら歌って踊っていた。

その曲に合わせて

AKBのファンみたいに

「ファイヤー」だのなんだのと言って

声をかけていた。

緑のズラのアイドルが(以下ミドレンジャー)

観客の方へ

T字のステージの

真っ直ぐに進む場所をスキップして

歩き出したら


ファンが「おおおお〜〜〜!!」と言って

近くまでよってガン見していた。


さらにそのアイドルが

元の位置に戻って

三人並ぶと

ファンも元の立ち位置に戻った。

今度は黄色のキレンジャーが

観客の所へスキップ!


ミドレンジャーより、追っかけが

少なかった。

最後はピンクレンジャー!

だんだん、追っかけが少なくなってくる。

やっぱりセンターは

人気者なのかと思う。

そして、この三人のアイドルの曲

良く分からないが

とにかく声援と、同じような

ファン特有の踊りのルールが

存在しているようだ。


そうだ、彼女らはアイドルなのだ。

怪獣と戦う戦士ではないのだ。


アイドルと、ファンの間柄には

絆とも言えるエネルギーで

結ばれているのだろう。

彼女らが戦うのは

このマニアックなファンたちの心に

どこまで自分が

入って行けるかではないか。

また、ファンも「自分だけは特別」と

思ってもらいたいのではないか。

こういうお互いの思いが合致して

一体感となっているコンサート。


それにしても、アイドルの歌・・

ファンが「動く所と動かない所」が

曲によってあるみたい。

素人の私には分からない。

ただ、分かったのは

本当に追っかけの人達が

本気になって血走って

声援しながら

ひたすら踊っている事。


その盛り上がり方は

ディスコ並み。

「おお〜〜!」

メンズ達の歓声だけは

遠い場所に居ても

聴こえてくる。

なんだかアイドルよりも

そのファンの行動を見ている方が

勇気をもらえる。


あまりにも面白くて

私も追っかけお兄さんらの

写真を撮ってしまった。

きっと、サラリーマンをやっている時には

決してこういうイキイキした表情は

していないのだろう。

サラリーマンかどうかは謎だけど。

自分を忘れて、没頭している時間とは

きっとエンドルフィンが沢山

出ていて、最高潮だろう。

あのファンの人達の


血走っている真顔の中の笑顔。

普通のメンズとして生きている時には

なかなか見えない顔の一つだ。

大の大人が、本気になって

追いかけている〜!

「まだ染まってない感じ」の生の女子に

本気になってる〜!

全くいい商売だ。


おっと、本来のメインのアイドルだけど

カラーのメイドみたいな衣装で

ミニスカートを履いていた。

ミニスカートは、バルーンと言う

スカートがフワッと盛り上がるように

なっていて、走り出したら中のパンツと

スカートの中の

2重にも3重にもなったレースが

モコモコ動き出すようになっていた。

スキップして観客の所に来た時


チラリみてるおパンツかも!?と言う

チラリズムに彼らは

燃えているのだろうか。

私は、このアイドルとファンの

一体化したパフォーマンスを楽しんでいた。



さて。私らが居た場所は

ステージの裏側の方だったらしく

「ピンク、緑、黄色」の信号のような

髪の毛のアイドル
の後に

ステージに上がるのであろう、

スタンバイしている6人グループがいた。

その女子達は

マネージャーの話を聞いて

輪になっていた。(母親っぽくも見える)

そして、部活の掛け声のように


右手をみんなで中央に集めて

「ファイト―!オー!」と言うような

気合を入れていた。

中学生くらいの、この6名のアイドルは

全員真っ白いメイドの服を着ていた。

そして、スカートはモコモコ。



アイドルと言うのは、

メイド服で踊るものなのか?

それともたまたま

こういう企画物なのか?

こちらも見ようかとも思ったが

先ほどのアイドルの


歓声と、ノリノリのファンを見たら

私のエネルギーも

消耗してしまった。

笑って楽しくなって

おなか一杯の状態になってしまった。


私は知り合いと別れ

また一人で本来の目的の

買い物をしに出かけた。

あのステージから

遠ざかっても

追っかけファンの歓声の

盛り上がりは相変わらず

響いていた。