昼間の出来事


それは何気ない、昼下がりに起きた出来事である。

私がタバコを買って、Mの座るベンチに向かうと

Mは見知らぬおじさんと話をしていた。
何かのキャッチにでもあったのか・・。

あの様子は
ナンパではないであろう。

Mはやたらと はしゃいでいるようにも見える。

人通りの多い商店街で、こんな所に座らせていたのが 良くなかった。

今の私なら、はっきりとそう言える。

何故なら そのおじさんとは怪しい男性だったからである。


「M。お待たせ〜。」私がそう言うと彼女は

「あ!みかりんさん。今 Mは恋愛運を見てもらっていたの」と言う。

・・・・占い師なのか?キャッチされて金取られるんじゃないの?私がそう思って

おじさんを見る。おじさんは

「なんで あんたら一緒に出歩いてんの!」と言う目で私を見る。

そう。私とMは趣味も思考回路も別な女。しかもMは24歳。

人当たりの良いMに声をかけたはいいが

一緒に居た女、私が「なんか やばそうな姉ちゃん」とでも見えたのでしょうか。

私を見るなり、おじさんは引いたのである。

「結婚も出産も出来るって言われたんです」と彼女は私に言う。

・・・あのさ。普通はそう言うんだよ。

おじさんは「右手で、親指と中指で Oリング(オーリング)を

作ってください。私が そのリングの輪に

指を絡めて力を入れると輪が開くよね。でも

左手でこの石を持ってもらいます。すると!

私が力を入れても 右のOリングの輪が開かないのです」と言う。


私は「失礼かもしれませんが、Oリングとは 

右手の親指と人差し指で作るそうですよ。

そして左手に モノを乗せ、右手の輪が開かないければ 

自分の体質に合うと判断をするものだ。と、本で読みましたが。」

私は、淡々と言った。

すると おじさんは「え?何々?もう一度言ってみて。

どうするの?」と聞いてくる。

彼の言うOリングと私の知っていたOリングは、別物なのだろうか?

しかし。おじさんの言うOリングには、

必ず石コロが必要だと言う。
←怪しくないか?

どうやら彼は (自称)霊媒師みたいな仕事をしていると言う。

今日は なんでこの様な男性と遭遇するのじゃ!

ここからも すでに歯車の合わない私に対して、この霊媒師は言う。


「貴方は結婚出来ない女!」←はい、ここ笑うところね!

ストレートだ。直球で来たぞ ちぇいす。

今まで誰もが遠慮して言わなかった言葉を、このオヤジが

平気で言ってるよ。しかも見知らぬ 私に。

私も やばそうに見えるかもしれないけど、

あんたも なかなか怪しげだよ。

私は、たった今から結婚願望 及び出産願望が強くなりました。

30も過ぎた女に、結婚できない!と断言する行為は

世の中の独身女性を敵に回す発言である。

「私は今日現在まで50人の人を見てきました。」霊媒師はそう言う。

あんたの目標達成人数を聞いてるんじゃね〜よ!

ましてや あんたの住んでいる町の、

人口人数を聞いているんじゃね〜よ!

霊媒師は首からぶら下げている

黒い人形のような首飾りをチラつける。

「貴方は、何の仕事をしているの?」


怪しい霊媒師は 自分の事を棚に上げ、私に質問をする。

この根性は見上げるものがある。敵ながら天晴れである。

しかし、感心していたら同レベルである。

何故 私が怪しい人に 聖なるOLである事を告げる必要があるのか。

別な意味で 私に興味を持たれても困る。←なんとでも言わせてください。

私は久々に 職務質問を受けている気分になる。



霊媒師は、私の冷たい視線を感じて さっさと後退して行った。

私の目には、単なる黒魔術の好きなオヤジにしか見えなかった。

Mよ、貴方も危ない世界に行くなよ!

今日は彼女を助けたと言う事にしよう。