チーク


テーブルに戻ってタバコを吸いながら、みんなで「楽しかったね〜」と言い合う。

なんだか一段落ついた気分だねえ。いい汗かいたわ。もっと薄着でも良かった。

そんな会話をしていると隣のお兄さんが私に

「ねえ!チーク踊らない?」と声をかけてくれた。

ええ!!私、チークなんて踊ったことないですよ!←こないだも言ってたよね。

もしかして、いや、もしかしなくても私を誘ってくれました?


・・・・・水商売のスカウトと、ナンパは いいとこ 24歳までだった。

オフィスで お客さんにディナーを誘われるのは、せいぜい
27歳までだった。

私についてくるのは、いつも犬か猫だった。
私は動物にモテる女なのである。

28歳を過ぎる頃、「私は 変っている女なのだろうか」と思い悩んだ。

29歳の時「玄人さんですか」と男性に言われた。

30歳過ぎて合コン。いつも接待役と化した、こんな私を

「チークを踊りませんか?」と声をかけてくれるのですか!!

私ね、チークって、夏以来 誘われなかったんですけど〜!!

あの、嬉しいんですけど!!
(←かわいそうだね)

「いいからいいから!ほら!」と手を引っ張られ、再びフロアに向かう私。


二組くらいロマンチックそうな雰囲気のカップルが居た。

向かい合って私はお兄さんと視線を合わせる。するとお兄さんは

私の背中に腕を回した。

そして、「どの辺に住んでいるの?」と聞かれる。

なんとなくヒントを与えると、このお兄さんは 
ご近所さんだった。

私は、チークに乗れず、現実的になってくる・・・。

「・・・・まさか ○▲□★※#ё辺りで働いていませんよねえ!?」と

リアルな事を言われ 
思わず私は

「あ〜はははははは!!」と笑うしかなかった。

「働いてない、働いてない、あはははは!」笑い崩れる私。

フロアには、人がいなくなっていた・・・。
チークらしいチークも踊らず

私のチークタイムは これにて終了である。

「じゃあ、今度どこかで会った時は、よろしく!」と言われ

「はい。ではまた。」と私も笑顔で言った。


余談だが

次の日、この話を会社でJ上司に言ったら 陽気に笑われた。