水が欲しい・・・



★水を買いに並ぶ私


私の職場にはスーパーがある。
ジュースのコーナーに
4種類の水が沢山置いてあった。
2リットル98円で売っていた。
お一人様一本限りと
しっかりと書いてある。

このペットボトルが午前中に
完売しないのは
水の出る地域が
沢山あるからである。
どこも断水してしまって
水がさっぱり来ない先月に比べたら
かなり有難い。
物資不足だった先月に比べたら
はるかにパラダイス。

断水している私としては
絶好のチャンスである。
私は一日売り場にいる立場を
有意義に使う事にした。

時間差攻撃で2時間置きに
スーパーへ行くのだ。
午前の部に1本水を買う。
ランチの休みにまた買う。
一度並んだレジには
並ばないのが原則である。

そして、ゲットした水を2本持って
従業員駐車場へ向かう。
両手に持つ2リットルの水。
結構重い。肩が凝る。
無事に持ってきて
トランクに積む。
ホッと胸を撫で下ろし
一仕事終えた気分になる。
しかし私の本職は違う。


午後の部、
また2回水を買う。
今日は
合計4本の水をゲットできた。
素晴らしい収穫である。
この水は
全て私が使うのではなく
おすそ分けをする水なのだ。

先月、私の家より水が
早く来た時
「水、持って行ってあげようか」
「お風呂、入りに来ない?」
「水、大丈夫?」と
言ってくれたR君、
彼氏、支店別のMさん。
彼らにこの水を1本ずつ
届けるのだ。

帰り道なので
1軒ずつ回って水を渡した。
彼氏も喜んでくれた。
R君は私が
欲しかったバービーボーイズのCDを
焼いてくれていた。
Mさんには水と引き換えに
果物をもらってしまった。
みんなにとても喜んでもらえた。
「水がないと不便だね」
誰もがそう言った。

次の日。
てっちゃんにも
「此処のスーパーだと水がゲットできる」
とメールを送る。
てっちゃんは仕事が休みだったらしく
私の働く売り場に顔を見せながら
「水を買ってきた」と言う。
また余震が続いて
生活が再び不便だと言い合う。
てっちゃんの職場も
夜勤時間が短いらしい。
どこもそうなのだ。
フルでやっている職場や店は
ほとんどない。
どこも電気が暗い。

節電で、本当に営業しているのか
分からない店もある。
帰り間際てっちゃんに
水は時間差でもう一本買う事を
薦めた。
この位やってもいいでしょう?
だって水、出る所は出るんだもん。

夜、てっちゃんから
「合計2本水がゲットできたよ。」と
メールが来た。
そして買う時、レジで
てっちゃんの後ろに
並んでいた人が
水の件で
店の人と揉めあっていた事を
教えられた。

「お客様、先ほど買ったでしょう?」
「こんな時なんだから仕方ないでしょう?」

こんなやり取りがすぐに
見えてくる。




★給水活動

さて。今日は休日。
相変わらず断水したまま。
また最寄の公園などに
行く事になった。
自衛隊が沢山いる。
1トンの水を持っていている車が
6台も並んでいる。
あまり待たずに入れられるね。
2時間半待ったあの思いをしたら
あまりにも簡単に手に入る給水活動だ。
中には4時間、6時間待った人も居たのだ。
水の他にもガソリンでも
プロパンでも。
みんな、ありとあらゆる行列に
並んだ。

先月から
自衛隊の人たちを
見ていると安心する。
居てくれるだけで
心強い。
思い敬意を払いたくなる。
ボランティアで活動している人たちも
いた。


水をもらおうとしたら
やたらと親切に
車の誘導をされたりした。
しかも汲んだ重い水を
持ってくれるなあと
思ったら

弟だった。
弟の友達もボランティアで
自衛隊と一緒になって
給水を手伝っていた。
マスクをしていて
誰だか分からなかった。

もっと早く声をかけてくれ!
よそ行き顔で挨拶してしまったわ。
弟は仕事が休みなので
活動していたと言う。
なんて素晴らしい弟なのだ。

自衛隊の人たちは
自分達のお昼時間も5分もなく
ひたすら私達の為に
動いてくれたらしい。

缶詰と、佐藤のご飯だけでは
体力が持たないだろうに
がんばってくれていたと聞いた。

私らの水をどうもありがとうございます。
本当に感謝した。
「阪神大震災の時、助けてもらったので
そのお礼です」と言ってくれた自衛隊だった。
その頃、私は募金小銭しか
入れなかったのに。



★MM、ありがとう!

MMはその日も私達の為に
4リットルの水の容器を2個
2リットルのペットボトルを6本に

水を入れて持ってきてくれた。

私と男性社員らの分の水である。
ありがたい。私は本当に
嬉しかった。

やかん1個分の
4リットルで、髪が洗える。
2リットルで、顔の洗顔が出来る。
2リットルで、体が拭ける。

MM。水が復旧したら
チーズケーキをホールごと作って渡すぞ!
お〜 いぇ〜い!

そして、次の日には
20リットルのタンクに
水を汲んで持ってきてくれた。

ビックリした。すごい!
なんて準備が良いのだ!
MMの車のトランクを空け
私とEさんは
ペットボトルを蛇口において
水を分け合った。

その光景は
ハタから見たら異様だ。

夕暮れ時、従業員駐車場で
三人がかりで給水活動。
しかし。こう言う時だと
なんの不自然さもない。

蛇口から出る水のスピードを
地味に調整するEさん。
ペットボトルを持つ私。
タンクを支えるMM。
素晴らしい助け合いだ。
赤信号で止まる車の
視線も気にせず
生きる為の水をもらう。
むしろ貴方も欲しいか?と
伺いたくなる。
もし、駐車している車の人が
「私も水が欲しいです」と言ったら
「どうぞどうぞ」と
私らは分け合うつもりだ。
もう暗くなるよ。
日が暮れるよ。
暗くなると、良く見えなくなる。
給水活動が困難になる。
しかも・・ペットボトルを支える手首も
疲れてきた。
飲み口から流れ落ちる水が
冷たい。
それでも水を入れる私達。
その位 水は大事なのだ。


MMよ、水が復旧したら
メロンパンも一緒に作って
渡すぞ〜!!
MM。本当にどうもありがとう〜。
この恩は一生忘れないぞ〜!
お〜 いぇ〜い!