温かい冬 その日の私は、Lと来年のカレンダーを見ていた。 まだ今年も終わっていないのに、半額セールをしていたのだ。 「ちょっと、みてみて〜!これ可愛いよ〜」 Lの興奮した声に釣られ、私の目に飛び込んで来たのは 子犬のカレンダーだった。私は「買うならムーミンがいいなあ」と思っていた。 Lが必死にカレンダーを見ている時、私は店内をブラついていた。 すると、そこには50代くらいの夫婦がいた。 「これ、あったかいよ」と言いながら、おじさんに笑顔を見せているおばさん。 ああ。みみかけ、あったかいよなあ。私もそう思いながら夫婦を見ていた。 きっと、おばさんは自転車で買い物に来るので、耳が寒いのだろう。 その瞬間におばさんと目が合ってしまった。 「おばさんが耳掛けしたら、可笑しいかな?」 おばさんが笑顔で私に声をかける。 「いいえ!お母さんなら、 こっちのクロとシロのミックスの方がオシャレですよ!」 私は見知らぬおばさんを勝手に「お母さん」と呼び、 しかも耳掛けをかけさせた。 「ああ!似合いますよ!」鏡を見ながら私が言うと、おばさんは 「髪の毛もクロとシロだから、同一化して目立たないよね〜」と笑う。 おじさんも笑うので、私もつられて笑った。 その後、何気なくその場を離れ、ムーミンのカレンダーを420円で買おうと レジにいた。すると、先程のおばさんが私の肩をたたいた。 「さっきの、クロとシロの耳掛け、買ったよ!」と言った。 報告してくれて、ありがとう〜!おばさんは、笑顔で私に手を振ってくれた。 なんだか私は胸が温かくなった。 おばさんは、これから温かい耳で買い物に出かけられるのだ。 自転車で買い物に行くおばさんを見ると、 思い出しそうな温かい冬の出来事でした。 BACK |