何かが、いる・・


外は曇っていた。今にも雨が降り出しそうな暗い空。

ただいまの時刻はPM19:30。私は一人車を走らせている。

お気に入りのBGMを聴いても、気持ちにエンジンがかからずに

不安の思いを加速させていくばかりだ。


・・・一体・・いつからそれは私の横に居たのだろう?・・・


テールランプが並ぶ四角い窓に

ぽつりぽつりと、雨が落ちてきた。

なんとも不吉な前兆。


左にハンドルを切ると、それはムクムクと動き出す。

暗闇に隠れて、私を追い詰めるつもりなのか。

私の恐怖感は、黒い空に飲み込まれ

車と言う狭い空間の中で、一人おびえるだけ。

・・・誰かに連絡したい・・
何かが、いる。

助手席に、なにかがいる。
形も見える。

動いている。スローリーな動作をしている。

そして、私の方へ近寄って来る。


あああ〜!!もう私の人生終わったの〜!?

まだまだやりたい事があったのに〜!!

エッセイストになりたかったのに!

本が出せる様になったら、
有志参加の龍先生

「表紙を作成させてね」と言ってくれたのに〜!!

そして、何より

あのサインの練習は、私の人生には無意味だったの〜!?


すると、それは私の頭に軽く触れた。

・・・思い切って見ると、それは

私が昼間にもらった
風船だった。


そう、この風船は「お菓子コーナー」で

たけのこの里、きのこの山が5パックで100円の商品。

「買ってくれたら、クジがひけるよ」と言われ

3等賞が当たり、風船をもらったのだ。

ヒモが長くて、私の頭の上でウヨウヨと風船が揺れていた。

私は、その風船を持って売り場を歩いていたら

挨拶した従業員に笑われたのだ。今日はそういう日だったのだ。

本当は一等賞の銀紙で出来た、


空気の入った「カールおじさん」の顔の

クッションが欲しかったのだ。


そうだった。でも三等賞で紫色の風船をもらったのである。


すっかり、忘れていた。ああ、そうだ。

助手席に置いたバッグに、風船のヒモを絡めていたのを

すっかり忘れていたのだ。

ああ、オバケじゃなくて良かった。

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