フラワー 飲食店並みの大きな花の山が、売り場をキレイに色づけている。 あの花の山は黄色ベースでいいな。 こっちの、赤と緑の補色関係を 上手く使うのもセンスがいいな。 私は花を褒めて毎日見ていた。 6箇所に水をあげるのも私だった。 しかし、売り場の照明がきつかったのか、 三日でダメになってしまった花もあった。 下を向いてしまった花達の後片付けも私である。 朝の掃除時間から開店時間になった。 その日は花の片付けもあったので あっちこっちの花をかき集め、まだ生きているのは生かそう、 これはもうサヨウナラ、と分けていた。 バケツに水を張り、復帰しそうな花も候補としてあげていた。 こうしてセール終了後の 四日続けて花の面倒をみていると、 自分の本職を忘れるのだ。 覚えてきたフラワーアレンジが出来ると思い、 小さな器を用意し、バケツで生きている花は 茎を区切ってここで生かすのである。 そして、まだライトにも負けずに根気強く生きている薔薇、 メインになってくれそうな百合。 これらはまだ、本来の大きな花壇の中で輝ける。 三角形のトップを作るように花を置いてみる。 花の後ろには大きな葉っぱを立てて見る。 どの花の山もそうなっていたので 似たような感じになるよう 生きている花達を集めてやってみた。 オアシスは、表と裏をひっくり返して使う。 手が緑色になった。これはオアシスの緑である。 私の腕が黄色の花粉が付いて、服も汚れた。 この花粉は百合である。 腐りかけた花の異臭と、 プラスチック製の花壇に入っていた水。 この処分をするのにも売り場を離れる。 重いし、花屋さんって重労働だと初めて知った。 まだ元気な花には「お疲れ様。よく頑張ったね」と声をかける。 枯れてしまった花には「ごめんね。 まぶしかったでしょう。」と声をかける。 全部、自分の財産の様な錯覚に陥った。 「なんちゃって花屋さん」の私。 しかし、こうして売り場で花をアレンジしていると お客さんが「いいですね〜」 と声をかけてくる。 欲しいそうに私を見ている。 欲しいならどうぞ。と新聞紙に包んで渡す。 「この葉っぱ、大きくて珍しいですね。どこの国のものですか?」 さあ、知りません。 「この花って、どの位 持つんでしょうね?」 さあ?どうなんでしょう? 「その花の名前は、なんて言うんですか?」 私は花屋じゃないので分からないです〜。 プロからみたら、きっと空間の空け方や 甘い点は花の数だけあると思うけど とりあえず、メインコーナーに置いている花をアレンジした。 誰も何も言わない。お客さんも普通に「あ、花だ。」と思っている。 みかりんオリジナルアレンジ。とは身内しか知らない。 この時、私は花の気持ちが分かった。 せっかく咲き誇れているのに 世の人は以外と無関心なんだなと。 私は、この花が沢山 売り場を飾った事で 嬉しくて「MM、Fさん、こんなに豪華な花、嬉しいね!」と 花を見ていた。彼女達も「きれい、きれい。嬉しい」と言っていた。 やっぱり花に関心があるのは女性が圧倒的なのだろうか。 そんな次の日の朝、また私が花当番をしていると ご年配の男性(お客さん)が見えた。 小さな器に花をアレンジしている私に 「あんたねえ〜、この花はもっと 高さを作った方がいいぞ。」と言う。 え?そうですか?私はビックリした。 「花が多すぎる。もっと枝を加えた方がバランスいいぞ。」 ーだって、フラワーアレンジなんだもん。ー 話を聞けばこの男性は、盆栽の先生をしているらしい。 では方向性が違うのではないか?と思いながらも 「先生、どのようにしたら宜しいでしょうか?」と聞いてみた。 すると、ハサミを貸してくれ、と言う。 「このハサミは切りにくいな〜。もっと専用の使え」と言いながら 枝をブチブチと切って行く先生。 私が作った360度回転の花の輪の ど真ん中に、ズンと高く枝が二本刺さっている・・・。 しかも、この枝は葉っぱONLYである。 「ほら、みてみろ。この方が立体的だぞ」 はい。先生。 (私だったらもっと高さを低くして花を刺したい・・。) 「花が多すぎて やかましいから、 もっとサッパリさせた方がいいぞ」 色々ありがとうございます・・。 私は、この盆栽アレンジの花を 記念にケータイで画像を撮り 先日、一緒だったN子に送った。 「和風ティスト!?」と返事が来た。 その和風ティストだが、 悪いが先生が売り場を離れた後 その二つの枝は抜き取り、 ひまわりをトップに置かせてもらった。 この何日か、この様な朝を続けている。 掃除と片付けをしながら ブラウスを緑と黄色に染め、燃えるゴミ袋の数が 異臭と供に増えていく。 でも、花を好きなようにアレンジできて、 あっと言う間に時間が過ぎる。 幸い、売り場もセールが終わって混まない。 お金もかからないで花と戯れて なんだか幸せだと思った。 しかし、照明のキツイ売り場での花の寿命は短く とうとう器でしかアレンジ出来ない花の数になった。 かろうじて生きているだろう花を 水の張ったバケツで「ガンバレ」と言って置いておく。 今日でとうとう売り場に花がなくなった。 華やかさがなくなってしまったようで かなり寂しい。 でも、バケツで生きている花を 持ち帰る事が出来る事になった。 MMは花より、大きな葉っぱが欲しいと言い出し、 葉っぱだけ持っていった。 Fさんは今日は荷物が多いので、せっかくだけど いいです、と言ってきた。 男性陣は興味がなく 最後に全部、生きている花は私の元へやってきた。 赤と緑の珍しい葉っぱの束、 かろうじて生きている色とりどりの花。 私は花達に「もしかして、私に もらわれるつもりでいたの?」と聞いてみた。 売り場のオープンセールで 応援に来た男性陣に 「いつもならこういう花の山は 売り場でお客さんが「欲しい欲しい、ちょうだい」って言って 持っていかれる事が多いらしいのだけど 今回は誰一人、花をくださいって 言っていく人に会わなかったね」と 言われました。 え?普通、花、ちょうだいって言わないのでは? 「たまたまこの売り場では言われなかったよ」と。 ・・・もしかしたら、あの花達は みかりんの所に行くように 他の人にもらわれないよう気を引き締めていたのかな? なんてちょっとオカルトチックな事を 書いてみたくなりました。 その後、みかりん宅に来た花は 1週間も咲いていました。 最後まで残ったのは、 花粉一杯の百合と、葉っぱでした。 |