10代時代の宝箱
遊び人に見られたい、大人っぽく、綺麗なお姉さんになりたいと思ったことはありませんか? 私が10代の頃 憧れたのはマハラジャで踊るお姉さんだった。茶髪に前髪はトサカ、 長い髪から覗き込む金色の大振りなピアス、ボディコンにチェーンベルト、ヒールの分だけ背伸びして、 真っ赤な口紅であどけなさを隠す。これが私のスタイルであった。 真っ赤なマニキュアは、日常の仮の姿、OLである私を夜の闇に隠す。 学生の頃から憧れていた、男性に振り向かれる 大人の女。真っ赤な唇には、タバコが似合う。 かきあげる長い髪がサラサラと流れ落ちる瞬間が大人の女と思ってた。 1993年、私が一番 今と言う時間を精一杯 生きていた。その頃のジュリ扇子、ショール、 何個も踊りに行く度ダメにして買った。ボディコンに下着に給料が化けた。 見られて綺麗になりたい、大人の遊び人お姉さんになりたい、テクノの曲に体がノル。音にノル。 ブラックライトに映える真っ白ボディコンで、お立ち台にノル。 人々の視線が、たまらなく好き。もっと見て。私を いい女にして・・・ ★ ★ ★ ★ ★ 「いくつなの?ええ?10代?」こう言われる日常が たまらなく好きだった。 ナンパで歳を聞かれる事と、水商売のスカウトは、大人のいい女の特権だと思ってた。 とんでもなく勘違いをして踊る私は馬鹿だった。でも、勘違いの世界に身を置いた分、 非日常的なDISCOが、より楽しめる。楽しんだ方が得じゃない。 精一杯の背伸びをして、お立ち台に青春を費やす。私が私らしく生きていると、私と同じ人が集まる。 いつの間にか仲間が増える。いつも一緒に踊っていた女友達たちは、良きライバルでもあり、 嫉妬もしたし、嫉妬もされた。人の視線を集めたい、みられたい、 自己顕示欲の集まりの集団かもしれないが、女としての魅力が どの程度なのか? お立ち台で確認したい。同じ仲間で楽しく踊る反面、切磋琢磨の出来る仲間。 ・・・時には嫉妬がらみで頭を悩ます難しい友情。 DISCO(死語?)の黒服(これも死語?)に憧れたのは、男の人も一緒。 私の仲間達は、黒服お兄さんに間違えられるのを意識していた。 スーツをビシッと着こなし、パラパラを踊る。ブラック派の友達も居れば、私みたいなテクノ派もいる。 ジャンルは様々だけど、このフロアの空間にいる私達は、いつでも音楽に馴染んでいる。 話かけられれば、前からの友達みたいに溶け込める。 幸いにも私は、お立ち台の奪い合いに巻き込まれた事は なかった。 この空間には、私を受け入れてくれる人が沢山いる。 私の居場所でもあり、音にノレる仲間に囲まれていた。 恋愛が上手く続かない私にとって、「冷たくしない人の集まり」である、 この空間は居心地がよかった。みんな目立ちたがりで、自分が一番だったけど、 自分の価値観はしっかり持ってた。 チヤホヤされれば気分はいいし、自分を認めてもらえた気になる。 でも、ナンパについて行ったりしない。馬鹿をみるのは自分だ。 ナンパしてくる複数の男より、黒服お兄さんに顔を覚えてもらって 話しかけてもらえた方が、なんとなく周りに対しての優越感に浸れて 自惚れて勘違いできて嬉しいじゃない?自分に自信がない事の裏返しなんだけどね。 黒服お兄さんの名刺の数が増える度、いい女へのパスポートを手に入れた気分でいた。 自分を表現する方法は沢山あると思う。言葉や文字、ボディーランケージ、etc... 私や私と似てる人達は、踊りで自分をアピールしていた。 それが自分らしさなのだと。 自分の居場所は ここなのだと。私は ここです、と。 仲間の貸切パーティに参加出来たことも、嬉しい事も、睨まれた事も、 大人ぶってた事も、みんな思い出す。テクノの曲を聴くとDISCOに詰まった青春を。 私にとって あの空間は思い出の宝箱。いつまでも。 BACK |