電車でみた光景


世の中とは、自分が体験した事と、

小説などで読んだ、主人公の心理しか

分からないものなのかもしれない。

いや、きっと自分の知らない世界で

生きている人の人生を

垣間見る事は出来る。

だけど、その立場に立った人にしか

分からない心境があると思う。

外から見ている分には

その人の本音までは分からないものだと思う。

この様な心理に陥ったのは

半年位前の出来事があったからである。



その時の私は

夕方、電車に乗っていた。

仕事帰りのサラリーマンや

部活帰りの学生たちに埋もれながら

電車に揺られていたのである。

一人で乗る電車とは

自由な時間があるようで

結構暇である。

周りを見渡すと、一人でいる人は

80%電話を見ている。

若い人ほど、スマホでゲームを

楽しんでいる様子。


一方、小説を読みながら

吊り橋を握っている人もいる。

私も電話を見たり、本を読みたいが

グラグラ揺れて、酔いそうなので

座れない時は、人間観察をして

過ごしている。

電車が動き出した。



日常のどうでもいい会話が

あちらこちらから聞こえてくる。

興味深そうな会話は

寝たフリしながら聞いているが

どうでもいいうるさい話は

心の中で舌打ちをしている。

それは私だけではないはずである。



それにしても

夕方の電車とは、「お疲れモード」が

車内全体に漂っている。

それでも一生懸命電話に

向かっている人達は

酔わないのか?と思えてくる。

今日の私の目の前には

女子高生が二人いる。

黒の制服に、黒髪。

今時の高校生って黒髪なんだろうか。

普通にスッピンで、どこにでもいる

素直そうな二人であった。



それにしても・・高校生も、

時代によって

変わるなあと思って観ていた。


一時は、ギャルとコギャル(まだこの言葉は

あるのだろうか?)の区別がつかなかった。

「17歳と27歳が同じに見える」と

私が20代後半の時、言っているメンズも居た。

その時代だと(今から15〜6年前位?)

まだ茶髪が流行っていたのだと思う。

今は、黒髪なのだろうか。

それとも今時の高校生は

黒髪がステータスなのか?

そんな事を思いながら

目の前のリアル女子高生を

チラ見して、会話を聞いていた。

「次のテスト、私の苦手な所出るよ・・」

「私も全然分からない」

学生らしい会話である。


もっと、面白い話は聞けないのか!?

私がそう思っていると

電車の揺れがスローになった。

次の駅に着いた。



電車を降りようと

する人達が私の目の前を

通り過ぎる。

そして、サラリーマン達に紛れ、


一際目立った女子を発見する。

私は「ええ!?なにこの人」と思った。


その一際目立った女子は

髪が金髪で、紺色のカーデに

青と黒のチェックのミニスカート。


ルーソックスを履いている。

しかも足元は、サンダル。

やたら大きなバッグを持って

歩いている。

私と向かい合って座っている、おじさん達も


その異様ななんちゃって女子高生の姿を

追っている。


私の目の前にいる、リアル女子高生二人も

その女子が電車から降りる瞬間を

見ていた。

プシューとドアが閉まった。



私は、先ほどの「なんちゃって女子高生」の

(以下 N女子と書く)

風貌が目に焼き付いてしまった。

どうみても、今時の高校生ではない。

どうして、つけまつげバサバサで

目の下に白いラインを入れているのか。

あのN女子のスタイルは、

15〜6年前の、

私の部屋着ファッションではないか。

ジャスコで買ったプリーツスカートと

セーターで、過ごしていた頃を思い出す。

でも、私はその恰好で


電車に乗った事はない。

だけど、今、姿を消したN女子は

正々堂々と電車から降りて行った。



もしかすると・・あれが

「風俗嬢」っていうやつだろうか??

それこそ、女子高生ルックで

駅で待ち合わせして??

あの女子は、これから

仕事をするのだろうか。

私の勝手な妄想だけど。

それとも、そういうファッションが好きな彼と


お泊りデートか?

でも、デートに行くような雰囲気ではなかった。

まず、つっかけサンダル(←こうかくのがアラフォー)で

デートするだろうか?

とにかく!メイクもファッションも

異様である。

現役女子高生には明らかに

違いが出るけど

私ら以上の世代から見たら

「ルーズソックス=女子高生」の図式があるから

N女子高生でも、「高校生」と言うくくりで

見えてしまう。

多少の違和感があったとしても

きっと、若さでカバーされる。


だけど、私の目の前には

女子高生の鏡が二人立っている。

比較すると、「本物」か「偽物」か

分かる。

やっぱり、あれは異様だ。


でも、電車がまた走り出すと

先ほどのN女子高生の事も

ひとつ前の駅で、消えた出来事になる。

目の前のリアル女子高生二人は

また、試験の勉強の話をしていた。

そして私も、また電車に揺られ

自分の部屋着だった女子高生ルックを

思い出していた。

ルーズソックスは、便座カバーになりそうだった

・・・・・と。