電車で聞こえた会話


その日の私は電車に乗っていた。

ちょうど学生が多い夕方だった。

私が座った場所に

3人の男子高校生が立って居た。

彼らの中の一人は

手すりに捕まって

荷物を置く場所に上ろうとしていた。


私はこの男子高校生の

生の話を聞く事が出来た。

・・・と、言っても

一緒に話をしたワケではない。

電車に揺られている間、暇だったので

会話を盗み聞きしていただけである。


30代後半になると、

高校生の話を聞く事が出来るのは

あまりない。

店で高校生に会っても

学校で繰り広げられているストーリーは

あまり聞く事がない。

彼らのリアルな話は

私の中で、大変面白いものになった。


落ち着きがなく、両手で手すりに

ぶら下がっている男子が

「2回目でやった?」と言っている。

私は何の事だろうと思って

そのまま耳をダンボにした。

それは、もしかして

不純異性交流!?(←嬉しそう←おい)

どきどきワクワクの初体験!?(←瞳キラキラ)

そのまま聞いている私。

その続きをしっかり聞いている30代後半。

「いいなあ。俺まだやった事ないんだよなあ」

「俺も。」

三人の高校生は言っている。

え!?もしかして私の直感は

当たりですか?


しかし!電車の中でこのような会話って

高校生するのか?

「2回目のメールを送って

それでやった。」

手すり高校生はそう言っている。

メール2回送って成功?

性行為が?(←さっきからこればっか。)

2回目メールを送って、すぐそうなれた?

・・って、事は元々知っている女子?

モンモンと私が推理をしていると

彼らの会話は続く。

「2回目のメールで付き合う事に

なったのか。いいなあ。」

ガックリ!あ、そう、良かったね。

でも本当はもっと先に

進みたいでしょ〜〜〜!!?


さらに聞いていると

彼らはなかなかカワイイ。

「お前は好きな人いないの?」

「はい!居ません!」

「じゃ、彼女も?」

「はい!居ません!」

「じゃ、彼氏も?」

「はい!居ません!」

おいおい!男なのに

彼氏って事ないでしょ〜。

彼らの話題は「女子」の話題は

まだ収まらない。




「女の髪って、まっすぐで

サラサラがいいよねえ。」


あ、そうなんだ。

30後半の私はきっと

貴方たちの母親ぐらいでしょうねえ。

クルクルヘアーには

興味ないでしょうねえ。

「うん、そしてシャンプーの匂いがいい!」

「匂いフェチ!?」

「うん。俺も!」

・・・ほほう。

そんな彼らは私の側にいる

サラサラヘアーの女子高生を見ている。

あら本当かわいいこと。(←オバサンみたい)


手すり高校生が

両手を口にして「ヒューヒュー」と

やっているのだが

音になっていない。

この行動は、カワイイ女子高校生への

一種のアピールらしい。

それを無視するかのように

女子高校生は

彼らと違う景色を見ている。

「なんだ、あいつ俺と

中学一緒だったヤツだ。」

「じゃあ、声かけてきて!

メアド教えてもらってきて!」

・・・・これが今時のナンパ・・

じゃなかった、出会いなのか?

もう十分、彼らの会話も

聞こえているのに

相変わらず無視している女子高生。

なんか分かるなあ。

頭良さそうだもん。



諦めがついたのか

男子三人の会話に戻ってきた。

「今からバイトに行く。

母ちゃんに駅まで向かえに

来て貰う。」

5時からバイトらしい。

えらいねえ。

そして、私が降りようとした駅で

この手すり男子高校生も

下りた。

うそ〜〜!この人って

私の何十個か後輩になるのか〜!




・・・まあいいわ。