DEEPな夜の出来事



「みかりんさん?ママの知り合いって

みかりんさんの事だったの?」

薄暗いアジアン風の店で、声をかけてきた彼女は

私の知り合いHさんだった。

私 「黒人の歌が上手いって、Hさんなの?」

H 「なにそれ。私は上手くないよ。

  それより みかりんさんが洋楽歌うの上手いって人?」

私 「違うよ!洋楽なんて歌えない!上手いのは

   一緒のMちゃんだよ」



今夜、この店に来たのは

私らは開店祝いだったのだが

ママが密かに

洋楽カラオケ大会(?)をしようとしていた。


それでHさんも呼ばれた。でも歌う気はなし。

Mちゃんも歌をアピールするつもりで来たワケでもなく

Hさんも「私は洋楽上手い人の歌を聴きに来た」と言う。

そんな私は二人の駆け舟役を行き来していた。


今夜のノルマは!

ママ夫婦も歌声を披露するから

「みかりん、MM、Mちゃんも歌って!」と言う事だ。

そう。私ら。。。店以外で知り合って

仲良くさせてもらってましたが

ママの歌声って聞いた事がないのだ。

だけど・・洋楽がプロ並みのMちゃんの後に

マイク持つのはちょっと・・。

私はカラオケは、上手いと言うより

面白楽しくってノリなので、モノマネするとか。

また違う歌い方なのだ。


だからMちゃんの前に歌うならOK!

でもMちゃんが回りに押され

1曲歌い終わってしまった。

今夜のノルマ、私はどう果たす!?


「ね〜!本当にすごいね。

今、店の前を通っているお客さんが

聴いたらビックリしてドア開きそう!」

そう言って笑顔で話かけてくれたのは

ナオミさん。この店の常連客らしく

「ナオミ タンバリン」と言う名前入りの

タンバリンが置いてあった。

ナオミさんはボトルをKEEPしていたのではなく

タンバリンをKEEPしていたのだろうか。

賞味期限がなくて良い。


「みかりんが作ってくれたケーキ

みんなにご馳走するからね」

ママがそう言って、みなさんで食べてもらった。

カウンターにいつも来る人たち四人は

20代〜40代それぞれのよう。

ここに来て飲み仲間になったらしい。。

私らの席の隣は、60代男性2名。

年齢層も広い。その後、50代後半の男性が

お一人様で店に来た。

もしかして、Mちゃんの歌声に惹かれて

ドアを開けたのかな?

「ほら〜!やっぱりお客さん来た〜!」

ナオミさんが言った。

・・すごい。すごいぞ。Mちゃんの歌声。



狭い店内はあっと言う間に一杯になり

お一人様の50代男性は

60代の人たちと同席しながら飲み始まった。

店内には、このオジサマ達の歌うカラオケが始まり

場が盛り上がってきた。

・・と言っても歌っている曲は

「山」とかサブちゃんの歌。

でもスゴイ。


さっきまでは私もカラオケのノルマを

どうしようか戸惑っていたのに

このおじさんらのパワーで

また店の雰囲気が変わった。



常連客達もみんな仲良く飲んでいる。

しかもHさんのテーブルに乱入している。

私らのテーブルには

マスター(ママの旦那さん)が来てくれた。

こういうお店で会うとまた違うね。

アジアン風の異国の空間に

すごく似合っている。

エスニック・・そんなファッションのマスター。

大きな赤のセルのメガネが映えている。

「夜の方が好きなの」と言って席に着いた。

私もそうだな〜。


後ろの席ではまた違う演歌が流れている。

振り返ると、私と目が合った。

うちの父親よりちょっと若い世代のオジサン。

なかなか渋い声で「新潟の駅」を歌っている。

私も微笑んで歌詞を観ていると

おじさんらとも仲良くなって話をしてみた。

ここでママを観てビックリ。

私らに見せる顔とは違う接待をしている。


プライベートで先に知り合うのと

お店のママとして出会って

知り合いになるのでは

また感覚って違うね。


だから私と久々に会ったHさん。

私が思うママに対しての感覚と

Hさんが思っているママ感覚って

また違うんだろうな。

「私、客だから歌いたくなかったら

歌う事ないでしょ〜!」とHさんに言われた。

そうだけどね。

私も客だから、そうなんだけどね。

でも・・Hさんの客扱いとは

ちょっと違うんだな。



そんな事を思っているうちにママに

みかりん!みかりんは聖子ちゃん歌って!」と

リモコンを手渡しされた。

・・・ちゃんと聖子ちゃんの歌と指名されたよ。

おじさんたちのカラオケも終わり

では世代交代で・・・次は私らが行きますか。

聖子ちゃんねえ・・

う〜ん・・色々みてみるが

ここでバラードって言うのもなあ。

周りは弾けている。


とりあえず、ノルマを果たそう。