血液検査


私の働く売り場の近くに「血液検査」と言うものがやっていた。

何気にポットを持って歩いていると
「無料診断」と言う看板が目に入ってくる。

「ちょっと〜。面白いからやってみない?」そう私に声をかける女性は

ご近所売り場の熟女である。私は一枚の写真を見せられる。

今の血液の状態をクローズアップしているものであった。

ポットを床に置き、いつのまにか私は椅子に座り、

この血液判断に参加していた。

ご近所さんの誘惑とは、警戒心をなくしてしまう魔力である。

「すぐに済みませよ!聞き指じゃない方の手を出してもらって、

このペンをおきます。

では、このボタンを押してください。」


「あ!痛い」それは一瞬の出来事だった。私の左の中指から一滴血を採られた。

顕微鏡で拡大された画像をみせられる。
緑色の楕円の束であった。

「私の血液、
赤じゃなくて緑なんですか〜!

私はミドレンジャーなんですか〜!」

私は心の奥で叫んだ。血って赤ではないか。何故緑色なのだ?

私は葉緑体なのか??

植物なのか・・と言うダメージはどうでもいいとして。


どうせなれるなら、
ピンクレンジャーが良い。

これもどうでもいい戯言として。


さて。この画像。どうやらこれは赤血球が、

芋虫みたいにゴロゴロ連なっている。

「サラサラ血液は、
赤血球が単品になっていて、

丸くなっているのです」


私より少し年上みたいなお姉さんが言う。

・・・この芋虫状態の私は、ドロドロですか!?

「普通の状態ですよ。貴方の赤血球は

一般的なやや楕円ですね」

あ。そうなんだ。とりあえず、果物を毎日摂っているからだろうか。

「でも、ばい菌をやっつけてくれる白血球が少ないんですね。」

白血球は、赤血球より3倍あるのが理想らしい。

ここでマイナスイオンの滝に打たれると、血液がきれいになって

赤血球も
まん丸になり、白血球も増えるとの事。

10分浴びて8時間効果がると言う。

私は「今、勤務中なので、休憩時間に改めて来ます」と言って

その場を離れようとしたら、「では、これを。」と何かを差し出す。

それは「私の血液の状態の写真」であった。



私は売り場に戻り、上記の内容を話すと、

休憩時間にMMとFさんも参加に行った。

MMは「最初ドロドロだと言われたんですけど、

ここまでキレイになりました」と言う。

「マイナスイオンを浴びた後の画像、これです」と見せられた。

本当に赤血球が丸くなっている。


また、Fさんは「元々サラサラなのですが、黒いものが写っていて、

これがニコチンらしいんです」と言う。

Fさんはタバコを吸わないのだが、周りが吸っている人が多いせいで

写っていたらしい。
(アイム ソーリー、Fさん。)


三人の血液写真をJ上司に見せた。

それぞれの最初のショット、

「バッド・ノーマル・グッド」の三枚である。

一応、
私が「ノーマル」の状態。するとJ上司は一言。

「みかりんさんって、

血液の状態ドロドロじゃないの?普通なの?」と言う。

なんでじゃ〜〜〜!!どうやら私の私生活から察した発言らしい。

MMは「この写真で、ストレスが出ている、腰痛と言われました」と言う。

J上司はここでも一言。

「MMさんって、ストレスあるの??」

私はゲラゲラ笑った。

そして、私は休憩時間になったのでマイナスイオンに

打たれに向かった。



「お疲れ様です〜。うちの会社の人達も来ましたよね?」

私がそう言いながら血液のお姉さんに会うと

「お待ちしてました、どうぞどうぞ」と奥に誘導される。

マイナスイオンを浴びる機械の前に座る。「なにか匂いってありますか?」と

聞かれたので「そうですね〜。
氷の匂いがします」と私が答えた。

すると。「これ、
森林の滝をイメージした匂いなんですよ」と言う。


私生活、睡眠時間、食べ物によって血液が汚れてくるけど

大昔は環境も良かったので、空気をわざわざ買わなくても済んだ。

でも現代はオゾン層が破壊され、人体に悪影響ばかり。

そんな中で癒しを求めるかのように「マイナスイオン」が急激に普及した。

また、若いから血液がきれいと言う事もなく、

ケータイ電話の電磁波も、血液に悪影響を及ぼしていると言う。

血液をキレイにすると美肌にも良いのは

分かっているが、
このまま通い続けると

きっとあの機械を買わせられてしまうのが、目に見えるので

言いたい事は十分に分かるが、世間話をしてその場を乗り越えた。