悪女


さて。懐かしの小学校。

「理科室」と言うのは、異質の空間である。

一歩入り込んだら、夢にうなされそうである。


見渡す限り、不気味な物が沢山コレクションしてある。

水に浸けられて、鑑賞物になっている昆虫類のビンがある。

さらに。この部屋の不気味さを彩る、

人間の体の中身をハイカラな色で描いたマネキンもある。

これからお付き合い頂く話は、この怪しい理科室で起きた

サスペンス・ストーリーである。


あまり直視してみたくない物、「今、目の前にあるマネキン」。

この原色鮮やかで、なんとも
リアルな内臓の作り。

体の作りからいくと、これはどうやら男性のようである。

人の内臓は、身長の5mもある物が

体内で埋まっていると言うが、

取り出して見てみたいと思った事は

一度もない。私は病院では働けない女である。

しかし、この色とりどりの内臓マネキンを見て私は

「これはなかなかいい。ひらめいた!」と言った。

(今、私の頭には 豆電球がピカっと光ったように

思い描いて頂きたい)

私は、この素晴らしいハイカラな原色の

マネキンの画像をケータイに撮った。

友人Mが言う。「そんな気持ち悪いの撮ってどうすんの。」

ふふふふ。私が「ひらめいた」と言う時、それは大抵

良くないヒラメキである。


話が脱線するが、先日 私はボスから

貞子がケータイから飛び出してくると言う、

画像を頂戴した件を

貴方は覚えていらっしゃるだろうか?


私は「今こそ、ボスに
 ささやかなお返しが出来る」と

心がときめいたのである。

「うそ〜。趣味 悪〜。」Mは言う。

でも、さすが私の類友、

「どんな返事が来るか楽しみだね」と笑顔で言う。

私は、この画像を思いっきり楽しんでもらうよう

メールを打つ。ボスへのタイトルは

「・・・・裸になってしまいました・・・・・・。」である。

おお。なんてシンプルで、ストレートな表現なのだ。

最初と最後の「・・・・」が、言葉では言い尽くせない

いとしさと切なさと、心強さと〜♪を表わしているではないか。

我ながら、
興味を惹かれるキャッチフレーズだと感心する。

私は、男性がこの様な内容で、女性からメールが来たら

鼻血ブーになると勝手に想像をしてみる。

しかし、
開けてビックリ玉手箱!

画像の正体は、人間の内臓のトリプルカラー。

いい。なかなか良い。タイトルとは別の

手のひらを返したかのような

裏切り感が、いい味を出している。


ほ〜ほほほほ。私はワクワクしながらメールを送った。

通常のワクワクとは違う、このワクワク感は


どちらかと言うと、悪の魅力さえ感じさせてしまう。

悪さをしてドキドキ。そう、今、私は

悪女を演じているアホ女なのだ。

この悪いドキドキワクワク感は、小学生以来である。


「送信しました」

この文字を見て、私は微笑みを浮かべている。

私は「黒か白か?」と言われたら


「真っ黒」と言い切ってしまう気がしてくる。

今の私は、明菜ちゃんに負けないくらい

黒光りをしているのだと思っている。

もしかすると、私のこの行為は「十戒」に入るのだろうか?

余談だが、私は現役小学生の頃、

明菜ちゃんが好きだったのだ。

さらに!どうでもいい話だが、
この教室は

当時私らの掃除担当場所で

友人らと「明星」の切り抜きを交換した記憶がある。

何を隠そう この教室には、私の好きだった青春アイドルを

思い出させるROOMなのである。



ふと、友人が言う。

「あのさ〜、私はそのマネキンの画像要らないからね。」

今、私は現実に帰ってきた。(←アホ)

私も好き好んで、待ち受け画面にしておきたいと思うほどの

魅力は感じていないが、

意味のない悪戯画像にするなら、

WELL COMEではないか。


数分後、ボスから返送のメールが届く。

私はMに「来たよ、返事!」と教えた。

「なんて書いてあった?」Mもワクワクしている。

「やられた〜」「なんじゃ〜これは〜」「食後で最悪です」

そんな内容を思い浮かべ、くすすと笑っている私。

電話のメールの受信を確認する。

そこに書いてあった内容は

「きれいに成ってますね。感動しました。

病院にでも行ってきたんですか?」であった。