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愛の形



ラブホテルの側に住んでいる知人は

「見かけるカップルについては、驚きもしないし

何も感じないので、ホテルから出てきた所を

目撃しても、腹も立たない。」と言う。

この知人は、様々な人間関係を目にしてきたと思う。

ホテルカップルが、ちょっとした旅行客の様な存在にも見える。

それは、第三者からみた感想である。



二人だけのSWEET TIME。生活感の無い個室で

時間を忘れられる。そんな非日常的な空間で

味わう恋の形は、恋愛の数だけ溢れている。

そんな日常の中で・・・まさか、私が
あんなカップルを目にするなんて・・


晴れた昼下がり。人工的に立ち並んだビルディングに囲まれ

三車線が見える助手席で、脳天気にサンドイッチを食べてる私がいる。

行き交う通行人が、忙しそうに歩いている。そうか世の中はお昼なのか・・

赤信号で止まって、窓に映る景色をボンヤリ見ていると

私は
ラブホテルから出てくる男性を目撃したのである。


北向きの駐車場から、1人で歩いてくるその男性は

背筋を伸ばしてスタスタと歩いている。

訳ありで1人で出てきたのであろうか?

年齢は私と同じ位で、一般ピープル風に見える。

女は別行動なのだろうか?

そんな愛の形もあるだろう。私はノンキにツナサンドを頬張っていた。

私の横を、男性は見向きもせず、歩いていく。

すると、「ちょっと待って〜」と後を追う人が!!

なんだ?ケンカでもして彼氏が先に行ってしまったのか?

私は、助手席の窓の向こうを追って行く人を目撃して

ビックリしてしまったのである!


追いかけて来たのは、女性ではなく男性だったのである!!

追いかけて息を切らしてる男性は、嬉しそうに走っている。

何処からみても普通の10代後半に見える。

私は、ツナサンドを手に思わず見入ってしまったのだ。

何故なら、追いかけている男性は
内股で走っていたからである。

・・・
掘られ役だったんかい・・あんたは・・・

心でそう呟いた。こう言う愛の形もあるのだろう・・・


そして私は「もう食欲がないわ」と言い、

しっかりツナサンドを食べたのであった。

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