有事法制批判のポイント

 今国会に出されている有事法制とは、@武力攻撃事態法案、A自衛隊法改正案、B安全保障会議設置法改正案の3法案のことです。個人情報保護法案、国民保護法制と合わせて日本の参戦体制をつくるものです。
 廃案にできるかどうかは5月にかかっています。そのためにもこの有事法制の批判のポイントをまとめてみました。

 

1) 武力攻撃事態法案−先制攻撃・首相独裁を明記!

2)自衛隊法改正案−「予測事態」から自衛隊が軍事行動、武器使用も!

3)安保会議設置法改正案−軍人が日本の戦争本部の中枢に入る!

4)国民保護法制−民衆の基本的人権をふみにじり、戦争最優先へ!

5)米韓合同軍の北朝鮮への戦争計画「5027」−朝鮮民衆100万人が殺される!

6)個人情報保護法案−民衆の個人情報は保護されず、言論を統制する!


1) 武力攻撃事態法案−先制攻撃・首相独裁を明記!

 

@「武力攻撃が予測される」と宣言して先制攻撃していく
 「武力攻撃が予測されるに至った事態」をもって日本が戦争していくとされています。「予測事態」についての政府見解(02年5月16日)は以下の通りです。
「(ある国が日本攻撃のため)予備役の招集や軍の要員の禁足<外出禁止の意>、非常呼集を行っているとみられることや、我が国を攻撃するためとみられる軍事施設の新たな構築を行っている」
 これによれば日本に対する武力攻撃発生のかなり以前の段階から「予測事態」となります。
A国会承認を待たずに閣議決定で動き出す
 武力攻撃事態の認定を含む「対処基本方針」の策定と実施は、国会承認を待たずに閣議決定でOKとされています。法案では「(対処基本方針の)閣議の決定があったときは、直ちに、国会の承認をもとめなければならない」とされています。つまり、国会承認は「対処基本方針」が実施された後に行われるということです。
B首相のもとに全権限が集中される
 「対処基本方針」が策定されると、内閣には「武力攻撃事態対策本部」が設置されて、首相は対策本部長として、全権を掌握することになります。法案では、国、地方公共団体、指定公共機関(独立行政法人、日本銀行、日本赤十字社、NHK、ガス、輸送、通信など)、国民の戦争協力が義務化され、首相が「総合調整」=命令することになっています。

 

 

2)自衛隊法改正案−「予測事態」から自衛隊が軍事行動、武器使用も!

 

 現行自衛隊法103条では自衛隊の防衛出動の際、@病院、診療所その他の施設の管理、A土地、家屋、もしくは物資の使用、B物資の生産、集荷、販売、配給、保管もしくは輸送を業とする者に対する物資の保管、収容命令を規定しています。また医療、土木、建築工事または輸送を業とする者に対する業務従事命令を規定しています。これらは具体的な手続きについて定められていないので使えない規定でした。この手続きを今回の改正案で規定しています。
 もう一つ重大なのが、自衛隊が「武力攻撃予測事態」の段階で、「展開予定地域」に「防御施設」構築の活動ができるようになったことです。「防御施設」とは、対空ミサイル基地、レーダー基地、対ゲリラ用の監視施設などです。その際、民間の土地を強制的に接収・使用できるし、自衛隊の活動に反対することに対して武器の使用もできることになっています。
 また、自衛隊が道路を封鎖したり、公園に陣地をつくったり、野戦病院をつくったり、どこでも火葬・埋葬したり等できるように各種の規制法令に適用除外を新設しています。

 

 

3)安保会議設置法改正案−軍人が日本の戦争本部の中枢に入る!

 

 今までの安全保障会議は一般的な「安保方針」や「防衛大綱」を定めるものでした。しかし今回の改正案によって、具体的な戦争に臨むための軍事作戦本部となります。また安保会議の下に設置される事態対処専門委員会には自衛隊の統幕会議議長や自衛隊情報本部、警察庁公安部などの専門家がメンバーになると予想されています。この法案は成立後ただちに実施に移されることになります。

 

 

4)国民保護法制−民衆の基本的人権をふみにじり、戦争最優先へ!

 

 武力攻撃事態法案の中に、国民の生命、身体及び財産の保護、または国民生活及び国民経済への影響を最小とするための措置という項目があります。いわゆる国民保護法制と呼ばれるものです。具体的には有事法制成立後2年以内に法律化するとされています。
 民主党やマスコミ報道では、国民保護法制ができる前に有事法制を作ることは危険だと言っていますが、戦争と民衆の生活・権利が両立することなどあり得ないことは歴史が証明しています。「国民保護」というならば、戦争をとめるしかありません。
 実際に「国民保護法制」でつくられようとしている中身そのものは、名前とは裏腹に「警報の発令、避難の指示」といって米軍や自衛隊が自由に移動・展開するために、民衆の外出禁止や交通規制、軍事輸送のための道路確保であったり、「社会秩序の維持」といって反戦集会やデモ、ストライキの禁止であったりというものです。金属の供出、愛国公債の割り当て、配給など、戦争を支える役割を担った「隣組」の復活も提案されています。

 

 

5)米韓合同軍の北朝鮮への戦争計画「5027」−朝鮮民衆100万人が殺される!

 

 アメリカは北朝鮮への戦争計画「5027」を92年に策定。以後2年ごとに改訂しています。
 計画によれば、北朝鮮の人民軍の反撃を大空爆と地上部隊で食い止めつつ、米韓軍が38度線を突破して、ピョンヤンに進撃し、金正日政権を打倒し、ピョンヤンから北の全域まで占領するという大戦争です。計画のシミュレーションでは、「核兵器を使用しなくても朝鮮の民衆が100万人は犠牲になる」とされています。98年版からは、北朝鮮に3日間の全面降伏の猶予を与えて、それでも北朝鮮の開戦の決意が固いと判断すれば、先制攻撃するというシナリオに変わっています。さらに今策定されているとされる03年版では、アメリカの精密誘導弾による大空爆作戦や、韓国軍を主体とする38度線北上作戦が検討されています。
 この戦争に米軍は兵員40万人、航空機1600機、5隻の空母を含む艦艇200隻を投入するとしています。そのためには、沖縄を始めとして日本全土の戦争基地化、軍事物資や労働者・民衆の動員が不可欠です。99年周辺事態法では北朝鮮への経済制裁をもって発動される「周辺事態」で日本・自衛隊が米軍の後方地域支援をすることを合法化しました。この日米の動きに北朝鮮が反撃しようとちょっとでも動くならば、「武力攻撃予測事態」として有事法制が発動されていきます。

 

 

6)個人情報保護法案−民衆の個人情報は保護されず、言論を統制する!

 

 有事法制と軌を一にして国会で審議され、5/6に衆院で成立させられた個人情報保護法案。これは「メディア規制法案」と批判されているように、戦争へ向けた言論・報道統制のための法案です。
 まず、「個人情報保護」という名前とは裏腹に、私たち民衆の個人情報は全く保護されず、逆に管理・支配に使われます。国家権力による個人情報の取り扱いについては「行政機関個人情報保護法案」で扱われていますが、ここには権力による乱用・悪用を抑制する事項、罰則規定がありません。4月22日に発覚しましたが、防衛庁が自衛官募集のために住民基本台帳に掲載されていない項目(家族・健康情報)を自治体から引き出して「徴兵名簿」を作成していました。こういったことは個人情報保護法案では処罰されません。
 他方で、民間の企業・団体・個人が保有する個人情報の取り扱いについては国家が介入し、管理し、法的規制(罰則つき)を加える体制を定めています。政治家・官僚・資本家など国家権力にかかわる個人情報は保護されます。
 この法案でいわれる「個人情報取扱事業者」とは、「5千件以上」のデータベース化した個人情報を保有する団体、個人の事とされています。報道機関や大学、宗教団体、政治団体だけでなく、労働組合や自治会、市民団体も大いに含まれます。その団体、個人が「適正な情報活動をしているのかどうか」を主務大臣(国)が常に介入・規制するのです。
 また、報道機関、学術研究機関、宗教団体、政治団体は「適用除外」とされるから大丈夫ということを政府はいっていますが、これもまやかしです。報道機関だったら報道の目的以外での個人情報の取り扱いは違法とされます。例をあげると、ある報道機関が、とある大物政治家の不祥事をスクープ報道して、政治や経済に影響が出たとします。この報道は政治活動の目的であると主務大臣(国)が判断すれば弾圧の対象(6月以下の懲役又は30万円以下の罰金)となるわけです。まさに個人情報保護法案は憲法21条でいう「言論、出版その他一切の表現の自由」「検閲の禁止」を覆す法案です。