指輪のテングワール。
指輪物語における、基本中の基本。
これのおかげで世の中は大騒ぎになった。世の中とは、第2紀、第3紀のミドルアースのことでもあるし、20世紀から21世紀の現在の地球のことでもある。

大体、あれがただの、つるんとした、なぁんにも書いてない指輪だったらどうだっただろうか。
つまんないことこの上ない。本物かどうかもわからない。信用度がガタ落ちになる。
散々苦労して滅びの山まで持って行って、放り込んでも何も起きませんでした、あれぇ? とかってことになったら、指輪物語はまた初めから始めなくてはならない。
もう一度誰かに川に飛び込んでもらって、誰かに山にもぐり込んでもらって、誰かになぞなぞ合戦なぞしてもらって、何だかんだと何百年も待たねばならない。
文庫で9冊ではとても済まず、20巻くらいになるかもしれない。それもまた楽しそうでいいけど。

では、字がいつも読める指輪だったらどうだったろうか。
それもまたつまんないというか、だからどうしたというか、いつも見てると飽きるというか、芸がないというか、わびさびがないというか、情緒に欠けるように思える。

やっぱり火であぶると出てくるっていうのが風情があってよろしい。
サウロンさんはきっとミカンの汁であの字を書いたんでしょう。冬休みの宿題だったのかもしれません。


フロドよ、指輪は?
はい、ここです。
よこせ!
ちょ、ちょっと、どうしたんです、ガンダルフ? え゛〜、火の中に投げないでよぉぉぉ!
うるさいぞ、ほれ、よく見てみぃ。熱くはないわ。
あ、ほんとだ。
何か見えるか?
いや、何も・・・・
ほっ・・・・
あ、字が出てきた。
ぎくっ・・・・
エルフの字かな。読めないや。
読めずともよい。それはモルドールの言葉じゃ。口にしてはならん。
口にすると、どうかなるの?
どうかなるどころではないわ。ひとたび口にしたら最後、やめられない止まらない、かっぱえびせん♪じゃ。
僕は、それにつけてもおやつはカール♪派ですけどね。
おやつならレンバスじゃろう。一つで一日保つぞ。
グリコのキャラメルは一粒で300メートルですよ。
レンバスの勝ちじゃな。
そうですね。
グリコに負けたら、ガラドリエルどのが、さぞお怒りになるじゃろうて。
おっかないな。それはパスしたいです。
まこと、想像するだに恐ろしい。
勝ってよかったですねぇ。
全くじゃ。

2人は、ほーっと息をつきました。
めでたし、めでたし。

----------------------- 指輪物語、完。


あ、終わっちゃった。

話は逸れるけど、イシルドゥアが指輪を取って、エルロンドが山に連れて行って、「放り込め!」 「イヤだ!」となった時、もしイシルドゥアが素直に言うことをきいて、溶岩に投げ込んでいたらどうなっていただろうか。
あの日で終わるはずだったのに悪は命を長らえた、人間のせいだ、ってエルロンドさんは仰ってましたが、あそこで放り込まれちゃうと、山は噴火して、溶岩ドロドロで、いつでもピンチには鷲が飛んできてくれるという保証はないし、エルロンドさんは一巻の終わりで、ってことは、その後アルウェンちゃんも生まれることもなく、アラゴルンはエオウィンとくっついていたのかもしれず、となるとファラミアは誰とくっつくことになったのだろう・・・





マジメにいきましょう。

えーと、はい、指輪に書いてある字。



実際は、上のそれぞれの行の中は、くっついてます。
つまり、アッシュ  ナズグ  ドゥルバトゥルークが、アッシュナズグドゥルバトゥルークになってる。
皆さん、本を見よう。ね、くっついてるでしょ。
ここでは、見やすいように離してみました。

離れてても読めない〜〜ぃぃ!!という人のために、ふりがなを振ると、






1と3で 終わりのところの u がくるんくるんと2つ並んでるのは、u に ^ が載ってて、ウ〜って強調されるからです。ウ〜クっていうのは、all のことで、「すごーく」ってことで、だから、ドゥルバトゥルークとは、超ドゥルバトゥルということです。

つまり、

アッシュ ナズグ ドゥルバトゥルーク、
アッシュ ナズグ ギムバトゥル、
アッシュ ナズグ スラカトゥルーク、
アグ ブルズム イシ クリムパトゥル

とは、

アッシュ ナズグ 超ドゥルバトゥル、
アッシュ ナズグ ギムバトゥル、
アッシュ ナズグ 超スラカトゥル、
アグ ブルズム イシ クリムパトゥル

ってことです。
だからドゥルブくんとスラクくんのところの最後のくるんくるんが載ったを取って、「すごーく」とか、「超」とか、「めっちゃ」とか書いてもいいのです。皆さん、どうぞオリジナルの指輪を作ってみてください。火にあぶって「めっちゃ♪」とか出てきたら可愛いねぇ。

各フレーズの詳しい意味はこちら

で、その超は、ドゥルブくんとスラクくんにはついてるけど、ギムブくんにはついてない。だから、お隣のクリムプちゃんは、ギムブくんが好きなのです。クリムプちゃんもウ〜クがないからね。
女の子にモテるには、あんまり「むちゃむちゃ!」「超!」「マジでヤバイほど!」とかって出しゃばってはいけないのです。

2と4の、gim〜と、krim〜の m は、横棒の〜で書いてある。ん〜っていう閉塞音の m は、にしないで線で書く。
ほら、ここでもギムブくんとクリムプちゃんは、同じ「〜」を使ってて、相思相愛なのがわかります。ドゥルブくんやスラクくんがいくら頑張っても次男には勝てないわけですよ。大体、大抵どこの家でも次男っていうのは要領がよくて、おいしいとこを持ってくんですよねぇ。

ナズグの z は下向きで、ブルズムの z は上向き。 これは、ブルズムの z の上には点々がついてないから。

4のイシのところは、長い棒の両側にくるんくるんとなっている字のようにも見えるけど、これは右のは i の点を載せるための短い棒で、見やすくすれば、 のこと。





さて、123のアッシュや4のイシのは、sh で、4のアグのは gh で、この2つはちょっと特殊な字になる。

普通は縦の棒は、上下どちらにも出ていないか、上か下かどっちかだけに伸びている。例えば、
は上にも下にも伸びていないタイプ。
は上に伸びているタイプ。
は下に伸びているタイプ。

で、この上にも下にも伸びている字は、ほとんど見かけることはない。クウェンヤを書くときもシンダリンを書くときも出てこない。
追補編に説明が少しある。軸線を上下に伸ばして気息音 h を表してどうのこうの、って。 ふむふむ。

トールキンは、クリスマスのChristmas の ch にというのを使っている。c とか k の音、クを表すの上に棒が伸びて、ch、kh ということになる。

クリストファさんは brought の gh に、g のの上を伸ばしたを使っている。これはUTのタイトルページに出てくるよ。探してみよう。brought は気息音ってわけでもないけど、h が入ってるから使ってみたんだろう。

その特殊な種類の字が、指輪に入れたこの超重要な文字列に登場している。
黒の言葉のテングワールの綴りは、英文を書くときと似ている。サウロンさんは英語も使えたのかもしれない。

さて、は元々 sh の音で、h がついていて、わざわざ棒を長くしなくてもよさそうなものだけど、ただのシュじゃなくて、シュ!!という息の強さが違うのかもしれない。気息音だから。
でもただのでもいいのだ。それが証拠に表紙用のではになっている。

本文中に出てくるこれと、表紙用のものはちょっと違う。
表紙用っていうのは何かと言うと、トールキンはとにかく凝り性だから、全部自分で作らなきゃ気が済まなくて、出版のときに表紙のデザインもしている。今でもそのデザインの本は売っている。洋書買うときはいろんな表紙があるから、探してみよう。
このデザインはArtist and Illustratorにも載ってるよ。176と177番ね。旅の仲間用の表紙で、指輪の文字列が書いてある。
で、何が違うかというと、アッシュが本文中のはで、表紙用のはになっている。
それから、4のイシの終わりの棒が、本文のは短い棒で なのが、表紙のは長い棒で、 になっている。

sh がかというのはアバウトというか、気分的なものらしい。二つの塔用の表紙デザインに書いてあるshadowのshはになっている。シャドゥじゃなくて、 シャ!ドゥなんだろう。この二つの塔の表紙も、本になってるのも売ってるし、Artist and Illustrator にも載ってます。180番の絵ね。


英文の of とか of the も上下に伸びた字を使うけど、あれはまた特別なもので、ここで言ってるのとはちょっと意味合いが違う。





さて、本文中のテングワールを見て上に並べたのと比べてみると、というか原書と邦訳を比べてみると、
まず、評論社の文庫の旧版では、3のスラクくんのところで、thrakatulukの赤いところの上に点がついている。ほんとはついていません。

一方、新版の文庫では、4の一番終わりのの横線の右のところが千切れて、点がついているように見える。これは途中が切れて印刷されてるだけで、ほんとはつながってるんです。

評論社さんよ、この超重要な文字列をてきとーにプリントしてはいけません。よくチェックしていただきたい。

しかし、これは原書を手がけているHarperCollinsのでもそうなってるのがある。評論社の新版と同じことになっている。グワが持ってる原書は3種類あって、そのうち2つのの右のとこが千切れている。評論社は新版にするときに、これをそのまま持ってきたらしい。

ほんとはつながってますので、よろしく。





では、ここまでを踏まえて、指輪の字を単なる模様としてじゃなく、どれがどのフレーズだかわかって、すらすら読めるようになろう!

特訓、はじめ!







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