トールキンのクリスマスの本、「サンタクロースからの手紙」

楽しい! 子供たちのために毎年毎年書き続け、描き続けた、すてきな世界があります。それがトールキン家の子供たちだけでなく、全世界に公開されて誰でも読めるって素晴らしい。

以下、赤本とか緑本とか何のことかわからない人は、上のリンクを眺めてきてください。


で、1937年の手紙の中にテングワールがある。

これは長いことグワイヒアの疑問の種で、「え゛〜、どーしてこーなるのかなぁぁぁぁ」ってことで、しかし「どーしてそーなるのか」はわからず、見る度に、「むむむむむ」だった。

それが2006年、評論社から赤のサンタ本の訳が出て、原書にもない画像が載った。その「むむむむむ」の部分の、トールキンの手書きの画像!!

そして疑問は氷解したのであった。 謎が解け、グワイヒアの頭の中はスッキリとし、ハッピーなことこの上ない。

な〜んだ! そうだったんだ〜〜!!
あぁ、生きててよかった。生きてるって素晴らしい。


1937年、サンタさんは手を傷めたとかで、それでも何とか手紙を書いてはくれたんだけど、それに続けてエルフのイルベレスが代わりに長々と書いている。
ま、それは本を読んでもらうとして、最後の方に、



・・・というのがある。

さて・・・・ なんじゃらほい・・・ 

クリスマスなんだから、メリークリスマスか、ハッピークリスマスか、だよな。

真ん中のがクリスマスだな。  うん、クリスマスって読める。

その前のがメリーだろう。

となれば、初めのとこはメリーと似てて初めの字だけ違うから、ベリーかな。

後ろの方は何だい・・・・?

 ←これは何だ、これは・・・

最後の横線は何だろう。 伸ばすのかな。わー、とか、きゃー、とか、ひゃー、とかさ。でも日本語じゃないしなぁ。英文でそういう書き方しないよな。


で、緑本邦訳には、

  「意味はこうです。みなさんがとてもたのしいクリスマスをおむかえになりますように」

とある。

ふむ。そうか。 ってぇことはですよ、「とてもたのしい」だから、very merry でいいんだな。「みなさんが」ってことは、you が入るんだな。

が t だから、その横のが you だろう。to you だ。 は、う〜って音になるわけだ。

・・・で・・・・  ←これは何だ、これは・・・

結局、最後の線がわからない。

皆さんが、ってことだから、to you all になるのかな、と思ったけれど、緑本の原書は持ってないからわからなかった。

そのうち、青本を買い、赤本を買い、でもどっちも「意味はこうです」のところがない。青と赤は全文のはずなのに、ここはなぜかカットになっている。

おーい、なんて書いてあるんだよ〜〜



そして、2006年、めでたく赤本の邦訳が出た。

普通、原書と訳書は画像が同じはずなんだけど、これは違った。87ページ、原書は封筒で、訳書には手紙の画像がある。1937年の手紙の終わりの部分、イルベレスとクマが書いているところ。


そして、問題のテングワールがあった♪

普通のアルファベットに直したのもあった♪


すごいすごいすごい・・・!!

これだけでも買ってよかった。評論社さん、ありがとう!(^o^)


これこれ↓ 該当部分。



わからん?


↓緑のところがテングワール、それをABCに直したのがオレンジのところ。




A very merry Christmas to you all だ!

A がついてんじゃん。

そしてそして・・・ 

 だ!!!  じゃないんじゃん! 最後はなんじゃん!


あーー、そうだったんだ、そうだったんだ〜〜・・・!
思わず叫んだもんね。
あぁ、長年の疑問が解けてよかったよかった。

どの本も、赤いとこが無視されてたのでした。


all の L が書いてあったのだ。 なんと単純な話。

この画像がある赤本邦訳でさえ、本文の方には、「〜」の線しかない。こう書いてあるんです、っていう説明もない。まぁ原書がそうなってるから仕方ないけど。


頭の A は、 これがそうなのかもしれない。
カッコじゃないよな。カッコだとしたら、閉じカッコがないし。
次のは very なんだから、A はこれしかなかろう。

ってことで、

こう↓なのではなく、


こう↓なのでした。


比べると、そのまんまではない・・・ 上のは誰かがトレースしたのだな。ちょっとずつ線の書き方が違う。

振り仮名を振ると、




・・・となる。

最後のとこ、じゃなくて、だろ!って思った人、いるでしょ。

でもねぇ、よく見ると、very のv も、merry の m も、クリスマスの m も、下の横線ないんだよね。普通は横線ありだし。


これだと、ア ベリー メリー クリスマス じゃなくて、
ア ゼリー ネリー クリスナス になっちゃう。 茄子の新種みたいじゃん。

も、右側と左側を分けて書いてて(書き順的にはそれでいいんだろうけど)、間が切れてるし、ちょっと普通じゃない書き方バージョンなのかもしれない。


初めのA は、このでいいはずだ。文頭の大文字だからちょっと違う書き方なのかもしれない。
この字は、アクセントがつかないアに使う。

一方、同じ a でも は何かというと、これは、伸ばす音だからとは違うのだ。


が e になってるね。これは普通は点々を載せる棒なんだけど、英文で点々があんまりつかない方式だと、y になったりするの。merry の最後の y とかね。いろんな使い方で母音になる。
ここでは e の音らしい。
点々があんまりつかない、ってのは、要するに英語の点なしモードのことなんだけど、ちょっとはつくから厳密には「点々があんまりつかない英語モード」。

very の v は、飾り文字としてカッコよく書いてある。

クリスマスの初めは、ch だけど、音は k だからこれでよし。


この「点々があんまりつかない英語モード」は、あちこちで使われていて、それぞれちょっとずつ違う。
トールキン先生はその日の気分でいろいろ変えて書いてたらしい。いや、そうではなく、書いた人も時代も場所も違うんだから、多少いろいろ違って当たり前なのだ。

エレスサール王が書いたという王の手紙は、英文でも書かれている。馳夫さんは英語も出来たのだ!!すごい。そんな未来の言葉でスラスラ書けるなんて、やっぱアラゴルンはタダ者ではない。

で、王の手紙は3種ある。
1は、SDの130ページ、
2は、Artist&Illustratorの202、その邦訳の図像世界283、
3は、SDの131
・・・に載ってるよ。

持ってる人は見て、all、探してね。
王の手紙では、Lがふたつ続くときは、を使い、all は3種ともで、の上の斜めの線はない。

しかし、このサンタ本の all はの上に線ありでで、ではなくがひとつだけになっている。

  
一方、トム・ボンバディルの詩では、L の字は、ひとつだけだろうが、ふたつ続こうが、構わずどちらもひとつになっている。
トムのは、Pictures by J. R. R. Tolkien に載ってる。むかーしの本でね、画集なの。絶版。
と思ったら、アマゾンにあった→Pictures by J. R. R. Tolkien 古本だけど買えるみたい。便利な世の中だねぇ。
でもISBNの数字はうちにあるのと違う。92年版らしい。うちのは79年のだから。 中身は同じだと思うけど。
ケースも立派で、布張りの表紙にトールキンのモノグラムが金で入ってて、大きな本だから絵も大きくて、グワの宝物なのさ。(^^) Artist&Illustratorみたいに文が多い本じゃなくて、画集です。


to は、
王の手紙とマザルブルの書ではで、
トムの詩と The Lay of Leithian (レイシアンの歌 LB299)ではになっている。

は、トムの詩とレイシアンの歌では単純に o の字に当てられている。オの発音のときね。toのときはウになるから使わない。

王の手紙では、ウと読もうがオと読もうが、o の字であればを使う。

このサンタ本では、ウと読んでも o は、ってことらしい。youも同じになってるから、ウ〜って読むときはなんだな。

いろいろなのだ。

それとも、というのは、ではなく、なのかもしれない? 分けて書いてあるとよくわからない。


で、とにかく、「点々があんまりつかない英語モード」では、アは、単数の a はだし、発音によっての上にいろんなのがつく。

だから、このサンタ本の1937年のテングワールは、「点々があんまりつかない英語モード」の一種と言っていいと思う


ということで、サンタ本1937年、イルベレスは一体、のたくった字で何を書いてるのかと思ってた人、真相は上の通りでした。


A very merry Christmas to you all !! 



クリスマスの書き方は、他にもあります。こちら。




戻る