さて、ハルロンド、南港の話。

あー、はいはい、わかったよ、北港の仲良しの南港ちゃんでしょ・・・ って思ったアナタ、違うのです。

このハルロンドはルーン湾のハルロンドちゃんじゃなくって、同姓同名の、アンドゥインのハルロンドちゃん。なぜ南港かというと、ミナス・ティリスの南(ちょっと南東)にあるから。たんじゅ〜ん! ほら、アラゴルンが指輪第3部で河を遡って着いたところだよ。

これは、Lonnath Ernin って名前だったこともあった。トールキンは初めはそう書いてたんだけど、わかりやすいハルロンドに落ち着いたらしい。たんじゅ〜ん!ではあるけれど、単純な方が理解しやすいから、簡単な名前にしといてくれたらしい。

ロンナス・エルニンって、lonnath は lond のセットの複数で、ernin は arnen の複数。

lond の複数は、lynd の他に、lonnath とも書ける。ちょっとニュアンス違う。
lyndみたいに音が変わるのは「ふつうの複数」で、athがつくのは、何かこう、一緒にまとめられるものを指すときの複数。
つまりですね、だから、何かこう、一緒にまとめられるもの・・・ (^_^;;)

じゃあ、例を。
アルゴナス Argonath もこれだ。、2つ、ペアになってる。一緒になってる。
レムミラス Remirrath もこれ。プレアデスの星々、こちゃこちゃと集まってるのをセットにした呼び名。
オスギリアス Osgiliath は、星々の砦。都の中心となる Dome of Starsからこの名がついた。あの星とこの星っていう複数じゃなくて、星の集合的複数。

つまり、2つしかなかろうが、たくさんあろうが、セットに出来るものをセットで呼ぶときはathがつく。

だから、同じlondの複数ではあっても、lyndとlonnathは違う。 リンドは、この湾とあの湾とその湾で複数。1つ1つが独立している。
セットの複数のロンナスは、まとめて全部でひっくるめての複数。集合体としての眺めになる。
ニュアンス違うのだ。

arnen は、aranが王という意味から、単純に「王の」ってことだろうという解釈も出来る。そうなると王港となって、erninで複数だから、王たちの港、となる。
ミナス・ティリスはthe city of kings だし、kingsと複数になるのは納得がいく。

もう1つの解釈は、ar + nen で、ar は、そばの、際の、とかってこと。besideの意味。
nenは、水のこと。ネンヤのネンね。
だから水際、ってことになって、川の話にはぴったりくる。このarとnenはちゃんとトールキンが書いていること。
だけど港が水際なのは当たり前の話で、何か変かもしれない。

もう1つの解釈は、arは王のってことで、nenは水。王の水。ミナス・ティリス近郊のアンドゥインは王の水・・・ってことかな。
erninって複数になると、王たちの水。英語ではwatersって複数になると流れとか波とかを示唆する。ここもそんな雰囲気かもしれない。船を取り巻く河の流れと波しぶきが見える。

これはトールキン協会では「王港なのかもしれないけど、違うかもしれない」と言っている。この名前は決定稿では使われなかったし、トールキンはどこにもちゃんとこの意味を書いてないからわからないんだよ。

このarnenが「水際の」なんじゃないか、という根拠は、向こう岸の山にある。エミン・アルネン、Emyn Arnen。イシリアンの丘さ。EmynはAmonの複数で、山、丘。アルネンが「水のそばの」ってことだとすると、正にその通りの位置関係になる。アンドゥインの岸辺にある山だから、そのまんまの意味、「水際の山」となる。

ちなみに、このエミンアルネンの元の名前はHaramonだった。トールキンが描いた地図にハッキリ書いてある。(WR434,435) 草稿にもハルアモンの名で出てくる。
ハルアモン。おやまぁ、ハルロンドみたいなもんじゃん。harは南で、amonは丘。南山。南丘。ちょっと面白くないな。Emyn Arnenの方がオシャレかな。
南山ってあちこちに実際にありそう・・・ 南山が近くにある人、ぜひハルアモンと呼んであげてください。

で、まぁとにかく、ここら辺の地名は、トールキン先生がいろいろ書いてあぁでもないこぅでもないってやってるうちに、名前が変わったわけですよ。港と山の改名は逆向きになっている。面白い。
つまり、
たんじゅん Harlond Haramon
オシャレ Lonnath Ernin Emyn Arnen

たんじゅんな方は、londとamonにharがついた同じ形。
オシャレな方は、erninは arnenの複数だから、これも同じ作り。

lonnathとはlondの複数だけれど、ここは「湾」と解釈するとおかしくなる。londの根本的意味は、「細い通り道」。 だから湾という対象にも当てはまって、湾という意味でも使うだけの話。
だからこれは水上だけじゃなくて陸上でも使う。othlondと言えば、街の舗装された道。ostは街のこと。これの複数はethlynd。
だからこのロンナスも水路かもしれないけど桟橋のことなのかもしれない。これも細い通り道には違いない。

そしてその道が幾筋も集まってて、それを引っくるめて言うと、lonnath。

フィヨルドみたいに湾が続いている場所をひっくるめて言うときにもlonnathは使えると思うけど、ここはアンドゥインの途中にある港の話をしてるんだから、そういう大規模な地形の話じゃない。


←こんな感じ? 左に行くと海。右に行くとラウロスの滝。
桟橋が並んで細い通り道がたくさんある。lonnath!
着岸するには、一番左のところに横付けになってるみたいな感じで泊まるよね。
倉庫があったり、荷車が転がってたり、たくさん人が行き来して、賑わっている・・・はずだ。ずいぶん昔からある港なんだから、それなりの大きさと設備があるはずだ。

港全体の道のうちの、この水路とその水路、またはこの桟橋とその桟橋っていう場合ならathは使わない。その集合体の全部をセットで表すときにathがつく。
港の通り道全部まとめてロンナス。桟橋間の船だまりはロンドの形になってるし。

映画のハルロンドは、川岸に横付けみたいな感じだった。それもちゃんと横付けしたのはアラゴルンたちが乗ってた船だけで、他の船は岸からずいぶん離れたところに泊めっぱなしで幽霊さんたちは水の上をどどどと渡ってオークの群れに突っ込んだ。あんなマネは幽霊さんにしか出来ない。ちゃんと錨は入れたのかなぁ。でないと流れてっちゃうよ。
ああいう形状の港ではロンナスとは言えないなぁ。まぁ急いでるときにいちいち狭いところに入ってられないってのもあるけど。 きっとカメラに映ってないところにロンナスがあったんだろう。うん。


草稿の段階では、名前も設定もころころ変わる。トールキンがどういうつもりでこの名前をしばらくの間使っていたのかは今となっては確かなことはわからない。
特にerninの方はお向かいさんの山の名前のarnenの複数だろうという推測はつくけれど、何通りにも解釈出来て確定出来ない。

何にしても、ロンナスはロンドの集合複数なんだから、通り道がたくさん、ってことを強調したかったのであろうことは間違いない。
結局、わかりやすいHarlondに落ち着いたこの港は、草稿の頃の名前Lonnath Erninから、桟橋がたくさんあって賑わいのある場所だったのが目に浮かぶ。

最終稿になる前の試行錯誤の記録から、トールキンの心の中にどういう光景があったのかが何となくわかる。

このミナス・ティリスのそばのハルロンドは、共通語の名前が書かれていない。単数のhavenだったのかもしれないし、複数のhavensだったかもしれない。

王国の首都は昔はオスギリアスだった。都がミナス・ティリスとなってから、このハルロンドの重要性はますます高まって、多くの人や物が行き来したに違いない。

王の帰還において、アラゴルンがこの港から上陸したことは、意味深い。
それによって、都だけでなく、港も息を吹き返し、人や物の流れも生き返り、王国は本来の命を取り戻したように感じる。トールキンがアラゴルンにあのルートを取らせたのは、何となくだったのではなく、水の流れという道筋を通ることでより力強い再生を感じさせる、という意図があったのではないかと思う。



そして遂には