追補編では、執政の暦法に改定される前のヌメノール暦の説明のところに、haranyeというのが出てくる。
the last of century (haranye) とある。
このハランイエ、century を指すのか、the last of century を指すのか、どっちの意味にも取れるから、世界中のトールキンファンの間でも判断が分かれる。先生が生きてるうちに誰か訊いといてくれればよかったのにさ。
で、訳本では「一世紀(ハランイエ)の最後の年」となってるけど、エルフ語的には、「一世紀の最後の年(ハランイエ)」が正解みたい。
haran がhundredで、haranya がhundredth。 じゃあharanyeはhundredth の名詞かな?ってこと。
序数は語尾が ya になるの。 だからハランイエは、100年目の年、って解釈が合ってるんじゃないかということになる。
訳本持ってる人は、たぶんこうでしょう、っていうの、書いておいてね。
一世紀という言葉に対応するエルフ語を作るんならわかるけど、どーしてわざわざ一世紀の最後の年に名前をつけなきゃならないのか? と思う人も多いだろう。
100年毎の区切りの年っていうのは、暦の作成において、なかなか重要なのだ。
それがわかってると、わざわざその年にハランイエという名前をつけたトールキン先生は、ほんとにえらい。グレゴリオ暦ではそういう名前ついてないからね。つければいいのにな。
で、追補編に説明があるのは、
4年に1度は閏年でロエンデのところが2日になるけど、
ハランイエは閏年にしない、
ということ。
なぜかというと、一年が365.25日なら単純に4年に一度でいいんだけど、一年は365.2422日というハンパな数字で、単純なことをやっているとどんどん狂ってくる。
ほんとは0.2422×4=0.9688なのに、0.25にすると4年で1になるから、1−0.9688で、4年毎に0.0312日多くなってしまう。
0.0312×100=3.12、つまり400年で約3日オーバーするから、400年に100回あるはずの閏年を3回なくして、400年に97回とする。
97÷400=0.2425だから、一年は365.2425日となり、365.2422日との差は0.0003日で、単純計算すると約3333年に1日の誤差となる。
実際は地球さんがくるくるしてる周期がキッチリ一定ではないから、そう単純にはいかないらしい。自転周期はどんどん遅くなっている。だから時々閏秒というのが入って調整したりして、ニュースにもなる。
まぁ単純に暦的には、3000年以上かかって1日ずれるってことは、ほとんどピッタシ。はい、皆さん拍手!!パチパチパチ!!
ということで、現行のグレゴリオ暦では、
4で割り切れる年は閏年、
でも100で割り切れる年は閏年にしない、
でも400で割り切れる年は閏年、
というシステムになっている。これで400年に97回になる。
100で割り切れる年は閏年にしない、ってのは、つまりハランイエを閏年にしないということだ。ヌメノール暦と同じ。
この暦の閏年のシステムでは、100年目は閏年にしないっていうのがなかなか重要ポイントなのだ。
だから、100年目にわざわざ名前をつける価値があるわけさ。
ヌメノールの暦は、「4で割り切れる年は閏年」「でも100で割り切れる年は閏年にしない」「でも400で割り切れる年は閏年」っていう方式のうち最後の、「400で割り切れる年は閏年」っていうのがなかった。当然、ずれる。
追補編には、1000年で4時間46分40秒ずれた、とある。細かいなぁ。
400年に97回にすべきところを96回の閏年ということは、一年は365.24日で、太陽年の365.2422日と比べると、0.0022足りず、それが1000年分たまると、2.2日になるではないか。あれえ?
何か計算間違えてるか?
でもなぁ、400年に1度閏年をプラスするってルールがないんだから、1000年の間に2回とちょっとはそれがないわけで、やっぱり2日以上は足りなくなる。4時間46分40秒とはだいぶ違う。
わかんなーいわかんなーいと探したら、手紙に書いてあるところがあった。まったくもう、一ヶ所にまとめていただきたい。
書簡集の176番目の手紙の終わりのところ。
the Numenorean calendar was just a bit better than the Gregorian: the latter being on average 26 secs fast p.a., and the Numenorean 17.2 secs slow.
ヌメノールのカレンダーは、グレゴリオ暦よりもほんのちょっと優れていた。グレゴリオ暦は、一年につき平均26秒速く、ヌメノール暦は17.2秒遅かった。
グレゴリオ暦は26秒も狂うのに、自分が作ったヌメノール暦は17.2秒しか狂っておらん。(^ー^)v ふふふ、ってことだ。
で、一年で17.2秒ってことは、1000年では17200秒で、60で2回割ると、見事に4時間46分40秒になる。
うーん・・・ トールキン先生は、あくまでもずれは1000年で4時間46分40秒であって、グレゴリオ暦よりマトモだぜ、と仰る。グレゴリオ暦だと1000年で7時間以上ずれる。
どこから4時間46分40秒が出てくるんだろう? 昔から読み流していた4時間46分40秒がわからない。困ってReader's Companionを見たら、それはおかしいと載っていた。2日になるはずだって。
なんだ。初めから見りゃ良かった。
それによれば、このカレンダーに関する部分は初版と第二版では変わっているところがいろいろあるという。追加されたのもあるし、初版にあったのに第二版では入ってなかったり。
そして、今ごちゃごちゃ言ってる部分は、初版では「2日」というのがあったのだそうだ。それが第二版に入りそこなった。おいおい。
先生が言いたかったのは、「1000年に2日足しても、4時間ちょっと、ずれますよ!」、ってことだったらしい。
書き直してるうちに「2日足す」っていうのをうっかり削っちゃって、それに気がつかなかったところがまたかわいい。でも4時間46分40秒は忘れなかった。細かい数字はカッコいいからね。これは絶対入れとかなきゃ。トールキン先生って、そういうとこが好きだな。
で、1000年で2.2日ずれるから、2日入れても0.2日ずれる。0.2日とは、4時間48分。・・・?
うーん・・・48分か。 じゃあ、46分40秒は、どっから出てきたんだろ。やっぱりわかんないな。わかんなーい!! まぁ1分ちょっと違うだけだからいいんだけど。でも気になる。
もう一度初めから考えてみよう。
グレゴリオ暦とヌメノール暦は、
「4で割り切れる年は閏年」
「でも100で割り切れる年は閏年にしない」
という点では同じ。
それプラス、
「400で割り切れる年は閏年」つまり「400年毎に1日加える」というのがグレゴリオ暦。
「1000年毎に2日加える」というのがヌメノール暦。
400年毎に閏年があるってことは、1200年で3日増えるってことだ。400年で1日って計算しても同じだけど、1000年と近い数字で見比べてみる。
1200年で3日増えるのと、1000年で2日増えるのは、結構違う。
。 この中で 4年毎の閏年で
増える日数100年毎に
閏年なしそれに加える調整 グレゴリオ暦 1200年 300日 12回 400年に1度の閏年が3回 ヌメノール暦 1000年 250日 10回 1000年に2日加える
グレゴリオ暦では、1200年間で、300−12+3=291日が加算される。
ということは、1年当たり、291÷1200=0.2425日増える、ってこと。
つまり1年は、365.2425日。上の方の説明で出てきた数字そのまんま。
ヌメノール暦では、1000年間で、250−10+2=242日が加算される。
ということは、1年当たり、242÷1000=0.242日増える、ってこと。
つまり1年は、365.242日。
ふむ。
太陽年は、365.2422日。
グレゴリオ暦では、0.0003日多い。
ヌメノール暦では、0.0002日少ない。
ってことはですよ、0.0001日分、ヌメノール暦の方が太陽年に近いではないですか。
0.0002ってことは、1日分ずれるのに5000年かかるってことです。グレゴリオ暦よりずっと精度が高い。
計算すると、
0.0003日とは、25.92秒。
0.0002日とは、17.28秒。
だからトールキン先生の言っている↓
the Numenorean calendar was just a bit better than the Gregorian: the latter being on average 26 secs fast p.a., and the Numenorean 17.2 secs slow.
ヌメノールのカレンダーは、グレゴリオ暦よりもほんのちょっと優れていた。グレゴリオ暦は、一年につき平均26秒速く、ヌメノール暦は17.2秒遅かった。
っていうのは、正しいのだ。すごーい♪
一年で17.2秒だと、上の方で計算した通り、1000年では17200秒で、追補編にある通り、4時間46分40秒になる。
17.28秒で計算すると、1000年では17280秒で、4時間48分になる。
せんせいっ!! 8を切り捨てて計算したな! だめですよ〜〜 80秒もずれるじゃないですか!
ほんとはやっぱり、4時間48分!
ということで、4時間46分40秒の謎は、すっきり解けたのでありました。めでたい!!ヽ(^o^)/
わかったときはうれしかったよ〜〜☆ あー、ほんと、すっきりした♪
追補編持ってる人は、1000年に2日加えても4時間48分ずれますよ、っていうの、書いておきましょう。
ヌメノール暦はすごい!ということがわかりました。21世紀よりも太古のミドルアースの方が進んでいたのです。
グレゴリオ暦の「400で割り切れる年は閏年」、っていうのとは同じにせず、そこだけ変えて独自の暦になっているのがにくいですねぇ。それを手紙で自慢してしまうとこがまた好きさ。
トールキン先生は、さすがだな☆
次は名前。