先生のお手紙 |
グワイヒアの口出し |
Elが「星」と「エルフ」どちらを指すのかは区別しがたいのです。星もエルフも、基本要素であるEL「星」という同じものが派生したのですから。 el-で始まる複合語のこのはじめの要素は、どちらの意味も持って(少なくとも象徴して)いると言えるでしょう。 |
語の要素(element)っていうのは、要するに単語を構成する部品。
エルロンドの場合はel+rondという複合語なわけ。そのはじめの「el」は、星という意味もエルフという意味も持っているんだよ〜、と先生は書いているのです。
|
そこから独立した「星」という語は初期のエルフ語では、elen で、複数はeleni
です。
エルフたちはeledaまたはelenaと呼ばれ、「an Elf」(上のエルフ語でElda)を意味しましたが、これはヴァラのオロメが星の光のもと、谷にいる彼らを見つけたからでもあり、彼らがずっと星を愛するものたちであり続けていたからでもあります。
でもこの名はオロメに導かれて結局は西へ渡った者たち(主として海を越えた者たち)を限定して指すようになりました。 |
eleda、elenaというのは、「of the stars、星々の」という形容詞です。それがエルフを意味するということで、エルフは「星の民」と訳されるわけ。
オロメというのは強き神、偉大なる狩人といわれるヴァラで、エルフがこの世に生まれたのを初めに見つけた人。 いや、人じゃないや、ヴァラだ。
ミドルアースで生まれたエルフは、西のヴァラール(ヴァラの複数)のいる地へ移りました。移る気がなくて留まったエルフたちもいましたし、出発したけど行き着けなくて結局ミドルアースにいることになったエルフもいます。
Elda エルダはエルダールの単数。エルダール(星の民)という呼び方は、オロメがエルフにつけた名で、はじめはエルフ=エルダールだったんだけど、後には海を越えて西へ渡る旅に出たエルフの3種族(ヴァンヤール、ノルドール、テレリ)だけを指すようになったのです。だから他の種族は普通エルダールとはいいません。
主として海を越えた者たち、とあるのは、テレリ族は多人数で、全部が西へ渡らなかったから、エルダールなんだけど、エルダールになりきれなかったというか・・・だからその、その3種族であって尚かつ海を渡ったエルフがカンペキなエルダールなわけ。
また、エルフが初めに見たものは星空で、それでそれ以来ずっとエルフは星々を愛し続けている、とシルマリルの物語には書いてあります。
左の欄、トールキン先生は、そういうことを言ってるの。
上のエルフ語とは、当たり前だけど、上のエルフの言葉です。クウェンヤ語のこと。
上のエルフっていうのは、西の地アマンへ渡ったエルフたちのことで、ずっとアマンにいるエルフも、かつてアマンにいてまた戻ってきたエルフも含みます。
かみのエルフだよ。うえのエルフではないよ。(山本訳のホビットでは、高地のエルフになってるけど、これはものすごい誤解。高地じゃないもんね〜) |
灰色エルフ語(シンダリン)の形はelで複数はelin、eledhの複数はelidhです。でもこの後者の言い方は、海を渡らなかった灰色エルフ(シンダール)の間では、使われなくなりました。Eledhwen
エレズウェン「エルフの輝き」のようないくつかの固有の名に残されはしましたが。
|
西への旅に出たけど、結局は海を越えず、二本の木(ヴァラールの地にあった光輝く木。太陽と月の光の源になった木)の光を見なかったエルフもいます。テレリ族の一部です。その中で一番勢力が強かったのが灰色エルフ、シンダール族です。
指輪物語に出てくるレゴラスはシンダール族。
灰色エルフ語、すなわちシンダール語(シンダリン)は、ミドルアースにおけるエルフの日常語となります。
エレズウェンとは、モルウェンのこと。ベレンの父であるバラヒアの甥のバラグンドの娘。フーリンの奥さんで、トゥーリンのママ。わかります? ベレンとバラグンドは従兄弟になるわけ。
|
ノルドール族(上のエルフの一部)が流浪のうちに帰還して後、灰色エルフは上のエルフ語を制し、eldaはeldからellとなります。
そしてeldaは上のエルフの流謫を示唆するようになります。
これがきっと、エルロンドやエルロス、エルラダン、エルロヒアなどの名にあるel、ellの起源でしょう。
|
ノルドール族は海を渡って西のアマンの地へ行ったんだけど、モルゴスに奪われたシルマリルを追ってミドルアースに向かいます。途中でいろいろあって大変だったけど、戻ってきました。いろいろあって、ってのは、書き出すとキリがないのでシルマリルの物語を読んで下さい。もうすごいです。ワイドショーの話題独占、今週の第1位!
離れているうちに、西にいた上のエルフと西に行かなかった灰色エルフの言葉はだいぶ違ってしまったわけ。
上のエルフであるノルドールは戻ってきたのはいいんだけど、途中ゴタゴタしながら戻ってきたのがバレて、灰色エルフの側ではそんなゴタゴタ野郎たちの言葉を使うことはまかりならん、ということになっちゃう。
だから上のエルフ語は、結局普段使う言葉としては衰退して、上のエルフの間でもシンダリンが日常語となります。
エルロンドには、ノルドールの血も入っています。父方の婆ちゃんがノルドール族。ま、エルフは老けないから婆ちゃんとか言うと怒られそうだけど。 |
エルロンドとエルロスについて
rondoは、初期のエルフ語では「洞穴」を指します。ナルゴスロンド(ナログ川のそばの地下の砦)、アグラロンド等と比較してください。
rosseは露、(滝や泉の)しぶき、水煙を意味します。
|
ナルゴスロンドは、分解すると、Narog+ost+rond となります。Narogはナログ川、
ostは守る、防備する、
rondは洞窟。
ってことで、「ナログ川のとこにある地下要塞なのさ、どーだ凄いだろ」という意味になります。
ここはノルドール族の砦かつ都で、フィンロドが築き上げたんだけど、グラウルングっていう竜に滅ぼされます。グラウルングはお宝集めてヒヒヒのヒ♪だったのです。
フィンロドは、一言で言えば、エルフの王さまです。ノルドール族です。
アグラロンドは、燦光洞(さんこうどう)と言われ、ヘルム峡谷のところにあります。
分解すると、aglar+rondで、
aglarは光り輝くこと
rondは洞窟
となります。
後にドワーフのギムリがここを統治することになります。 |
エルロンドとエルロスは、エアレンディル(海を愛する者)とエルウィング(水しぶきのエルフ)の子らですが、なぜそう呼ばれるのかを次に述べましょう。
ノルドールの王子たちの流れである上のエルフの家系間にはシルマリルにまつわる確執があり、その末、2人はフェアノールの息子たちにさらわれました。
シルマリルはベレンとルシアンがモルゴスから取り戻し、ルシアンの父であるシンゴル王に渡され、ルシアンの息子ディオルの娘のエルウィングに伝わりました。
|
エルウィングの名前は、普通は「Star-spray 星の飛沫」という意味とされています。この手紙ではトールキンは「星」ではなく「エルフ」と書いています。エルフと星は密接なものだから、ま、どっちでも同じなのです。
シルマリルをめぐってのエルフ間のゴタゴタについては、シルマリルの物語を読んでね。なんかムチャクチャです。
2人を連れ去ったフェアノールの息子は、マエズロスとマグロールといいます。マグロールは2人を可愛がったそうです。エルロンドとエルロスはまだ小さかったんだよ。
左の欄の終わりの部分、わかりやすくご先祖さまから順番に並べると、
シンゴル→ルシアン→ディオル→エルウィング→エルロンド
となります。ここでトールキンが言ってるのは、母方の系列です。
シンゴルはエルフでシンダール族。マイアのメリアンと結婚します。
ルシアンは人間のベレンと結婚します。
だから、エルロンドにはエルフ(父方はノルドールで母方はシンダール)と人間とマイアの血が入ってるのです。
すごいっ! 国際派だ! 今風だ!
|
子供たちは殺されることなく、「babes in the wood」のように入り口に滝のかかっている洞窟に残されました。見つかったとき、エルロンドは洞窟の中に、エルロスは水の中で遊んでいたのです。これがその名の由来です。
|
その前は名前がなかったのだろうか?(爆) という心配もあるんだけど。 それは後述。
この洞窟の場面の詳しい記述はないのか探したんだけど見つからなくて、トールキン協会に問い合わせたら、やっぱりないそうです。書いといてくれればよかったのになぁ・・・トールキン先生!
「babes in the wood」というのは、イギリスのむかーしむかしのバラッドで、子供がさらわれて森に置いてきぼりにされて、どうのこうの・・・という歌です。いろんなバージョンがあるようです。
トールキン先生は、それを引き合いに出しているのです。
どんな歌か気になる方は、こちらへどうぞ。
|
エルロヒアとエルラダンについて
これらの名前は、父であるエルロンドがつけたものです。半エルフであることを指しています。エルフの血をひくと同時に、人間の血もひいているのです。父方のトゥオル、母方のベレンです。 |
この父方、母方というのは、エルロヒアたちから見た父母ではありません。エルロヒアとエルラダンのママであるケレブリアンは100%のエルフです。
どちらの先祖にも人間がいたのはエルロンドです。エルロンドの父方のお祖父ちゃんのトゥオルが人間です。そして母方の曾祖父ちゃんのベレンが人間です。 |
どちらの名もエルフ+人間であることを示しています。エルロヒアは「エルフ、そして騎士」と訳せるでしょう。rohirは、roch「馬」+hir「支配者」がrochir「馬の王」となり、それが後にrohirとなったものです。
これは初期のエルフ語では、rokkoとkherまたはkheru、そして上のエルフ語では、roccoとher(heru)です。
エルラダンは「エルフ、そしてヌメノーリアン」と訳されるでしょう。アダンAdan(複数ではエダインEdain)は、エルフの友の3氏族の者たち「人間の父祖たち」に授けられた名のシンダリンの形です。彼らの生き残りが後にヌメノーリアンすなわちドゥネダインになったのです。 |
「エルフ+騎士」が、どうして「エルフ+人間」になるんだろ。エルフにだって騎士がいるじゃん。ねぇ?みんな馬に乗ってるじゃん。
わかんなくてトールキン協会に問い合わせたら、わかんないとのこと。(爆)
ただ言えることは、エルフはrohirという言葉を自分に使うことはないんだって。エルフは馬と深い絆で結ばれていて、hir(支配する者)ではないから。
だからそういう言い方をするのは人間なわけだ。なるほどねぇ。納得しました。さすがはトールキン協会。
Adanアダン、Edainエダインは、要するに人間で、エルフの友と呼ばれる3氏族。ベオル、ハレス、ハドールの3家です。
第1紀に大きな戦いがあって、エダインは頑張って戦います。そのご褒美として生き残ったエダインにはヌメノールが与えられ、彼らは第2紀にはミドルアースを後にし、ヌメノールに移住します。
ドゥネダインとは、西のエダインということです。ヌメノールは西にあったから。だからヌメノール人、つまりヌメノーリアン=ドゥネダインとなります。単数ではドゥナダンです。
シンダリン(シンダール語)の形でエダイン、と先生は書いてます。元はアタニと言いました。アタニとは、2番目に生まれた者たち、第二の種族ということ。はじめに生まれたのはエルフだから、人間は2番目。それをシンダール語でいうと、エダインとなるわけ。人間=エダインなんだけど、普通はその3氏族だけを指して、他の人間をエダインとは言いません。
|