the Fair。

欧州の名前には、title、または epithet と言って、後ろに何か呼称をつけることがある。呼称というか、別名というか、添え名。尊称になるときもあれば、別に尊称ではないときもある。

たとえば、


ハロルド1世
兎足王
(Harold Harefoot) 足が速かった・・・らしい。
エドワード1世
長脛王
(Edward Longshanks) 馳夫さん?!長脛彦!
背が高かったから、だそうで。
リチャード1世
獅子心王
(Richard the Lionheart) カッコいい!
東フランク カール3世
肥満王
(Karl der Dicke) めたぼ!
西フランク シャルル1世
禿頭王
(Charles le Chauve) まぶしい!
西フランク シャルル3世
単純王
(Charles le Simple) たんじゅーん!とは違い、
人が良かったからだそうで。
フリードリヒ3世
美王
(Friedrich der Schone) うつくしい・・・
ノルウェー ハーラル2世
灰衣王
(Harald grafell) ガンダルフ?!


・・・って感じ。結構言いたいこと言われてますねぇ。
まぁその、でぶってのは昔は太ってればそれは豊かな証だし、ハゲてるのは年長者の証で、尊称といえば尊称なんだろう。

サムはthe brave。映画でも、Samwise the Brave、とフロドに言われて、サムはうれしそうだった。勇者サムワイズ。すばらしい。

こういうのは、つまり、その人の性格、特質、外観、などの側面から、その人物を描写するものだ。

サムみたいに分かりやすいやつとか、上のみたいにハゲとかデブとかそのまんまなのならいいんだけど (よくない?)、the Fair とくると、これが困る。
どういう意味か? どう訳すか?
訳しようがなかったりする・・・んだよなぁ。

邦訳本では、Fairとくると、単純に機械的に、「金髪」になりやすい。

でも Fair というのは金髪以外のことも指す。美しいとかさ。晴れ晴れとした感じとかさ。曲がったとこがなくて真っ直ぐだとか。
しかし金髪のことも指す。
困る。

そして、その困った the Fair が後ろにくっついてる人って、結構多いのだ。人じゃなくてもつく。

金髪碧眼色白=美しい、というのがありなのはわかる。そりゃ綺麗だ。
しかし、金髪碧眼色白でもブーな人はブーだし。(失礼)
世の中、色素が薄きゃいいってもんではない。

羽がfair系ではなく dark系の鷲としては、そう思ったりする。いや別にひがんでるわけではなく・・・


要するに品格の問題だ。内からにじみ出るものが美しくなければ、the Fair とはならない。



じゃあ、その Fair さんたち、並べてみよう。


 ヴァンヤール Vanyar the Fair 

これは個人じゃなくてエルフの一派というか氏族の総称。エルフの中で最も気品高く美しい、というのがヴァンヤール。

いろいろ種類のあるエルフのうち、ヴァンヤールは金髪。ノルドールは黒で、その対比はなかなか美しい。全部がキンキラキンだとつまらない。
両方の血を引く者がどっちになるかは、生まれてからのお楽しみ♪ってわけ。どっちかな〜、どっちかな〜(^o^) ガラさまは金の方が出た。おー、キンキラキンだ!誕生のときはさぞ沸き返ったことだろう。
ヴァンヤールがthe Fairで、ノルドールはthe Wise で、テレリはthe Last-comers

Vanyar は複数で、単数はvanyaで、vanyaとはbeautifulのこと。(LR351) エルフはエルフなだけで美しいのに、中でも突出して美しいのがヴァンヤールの皆さま。

しかし、vanya には、go, depart という意味もある。(LR397) ヴァラールに呼ばれたとき、初めにアマンに渡ったからかな。他のエルフたちみたいに、行くの行かないのとぐずぐずしてなかった。打てば響くように、はい!ということでさっさと行ってしまったのだ。
そうかそういう意味もあるなと感心していたら、その続きを読むと、その離れて行くというのは、死につながる言葉らしい。そういう意味で離れるわけ。だから違うのかな。西の地というのは、そういう意味にもつながるんだろうけど、でも死んじゃったわけじゃないから、この意味のvanyaとは違うんだろう。綴り同じでもいろいろあるからね。

WJ 382-383に拠ると、ヴァンヤとは、pale で、light-coloured で、brown や dark じゃありませんよ、という意味だそうだ。
髪は金色で、肌は透き通るようで、どこまでも美しいのがヴァンヤール。


で、ヴァンヤールは金髪だから金髪でもいいのですが、Fairというのは、髪の話だけではないし、外も中身も美しい者たちということもあるだろうし、金髪!とだけするのはよくないかもしれない。
ヴァンヤールは、アマンに渡ってからもずっとミドルアースには戻ろうとはせず、ノルドールとかと違ってゴタゴタと揉め事もなかったし、エルフの中でも一番上位の一族で、Fair としか形容のしようがない。

「金髪〜!」だけの意味ではない。ということを日本語にせよと言われても、無理なわけで、困ったねぇ。
金の字も入った方が良きゃ・・・「金雅」とか。何て読むんだ・・・

まぁ、そういう方々です。



 インディス Indis the Fair 

フィンウェの奥さま。ヴァンヤ。だから金髪。

シルマリル邦訳では「金髪のインディス」

Indis the Fair のちょっと後に、golden haired の文字がある。

fair と gold で別の語だから、訳し方変えた方がいいかなぁ・・・とも思うけど、でもこの場合、fair には金髪の意味も絶対入ってるわけで・・・。


 フィンウェは、美しのインディスを二度目の妻とした。
 彼女は金髪で背が高くて、どーたらこーたら・・・

 フィンウェは、金髪のインディスを二度目の妻とした。
 彼女は金髪で背が高くて、どーたらこーたら・・・・


どっちがいいだろう。こう並べると、金髪金髪って続かない方が自然な感じ。でもやっぱ、この場合、fair には金髪の意味も絶対入ってるわけで・・・

ま、そのまま金髪でいいんだろう。



 ルシエン Luthien the Fair 

ルシエンこそ☆ the Fair ☆でしょう。それしか言いようがない美しさ。

ナズグルに追っかけられて、アスファロスの背中でフロドが叫ぶ。
By Elbereth and Luthien the Fair, you shall have neither the Ring nor me!
エルベレスとルシエン・ザ・フェアにかけて、指輪は渡さない、私もお前たちのものにはならない!
そしてナズグルさんたちは、ゴゴゴと波に飲まれてしまったのでした。あぁ、水泳教室に行っとけば良かった!と思ったに違いない。

で、ルシエンの髪は何色だったかというと、黒!
dark as the shadows of twilight です。
その髪で織ったマントは、dark cloak です。キンキラシャツではありません。

黒髪は綺麗なのです。この世に生まれた者の中で一番美しいというルシエンをトールキンは黒髪とした。キンキラキンだけがキレイなんじゃないんですよ〜

あのさぁ、キンキラキンに染めるとさぁ、しばらくすると根元が黒くなるじゃん。あれ、あんまりきれいじゃないよなぁ・・・とか思うな。それともわざと2色にするんだろうか。いろんなオシャレがあるからねぇ。よくわかんないな。


で、とにかくですね、ルシエンの髪は dark です。 そして、the Fair なのです。



 ディオル Dior the Fair 

ベレンとルシエンの息子。

評論社シルマリル、田中訳では、金髪のディオルになっている。(24章、p. 414)

しかし、ディオルは金髪だろうか。違うと思うな。

ママのルシエンは黒髪で、パパのベレンはベオル系列だから、やっぱり黒系だ。

ディオルは dark だったろう。
金髪の可能性はかなり低い。
トールキンは、ブロンドの意味でthe fairと書いたわけではないだろう。
ルシエンとベレンのイメージはしっかり出来ていたのだから、その息子の髪もdarkだ。違うのなら書いてあるはずだ。

20章では、the beautiful になっている。訳本では、美丈夫。

the beautiful だったり、the fair だったり、つまりディオルは素晴らしく美しかったのだ。ルシエンの子なんだからね。

Dior the Fair は、美しのディオル、ってしとくのがいいかと思います。



 エルウィング Elwing the Fair 

ディオルの娘。
エアレンディルの奥さん。
エルロンドのママ。

そりゃ、きれいですよ。きれいできれいで。
シルマリル絡みでいろいろあって、白い鳥になって飛んだりいたします。きれい。

で、シルマリルの物語、24章冒頭で、邦訳ではいきなり「金髪のエルウィング」とある。

文句ばっか言って悪いのですが、エルウィングは金髪じゃない・・・よ。うん。

パパのディオルが黒髪、ママのニムロスはシンダールだから、たぶん銀色。

それが結婚したら、子供はキンキラキンにはならんだろう。

Elwing the White というのも出てくる。馳夫さんが喋るところ。白きエルウィング。きれい〜〜

エルウィングは、白い鳥になる印象が強い。とにかく「白」っていうイメージだから、そういう感覚での Fair なんだと思うな。

翼は、white and silver-grey だった。 きれい〜

そういうイメージの彼女が「金髪の」であるとは考えにくい。

さて、fair を何て訳そうか。 White じゃないところで「白き」ってするとよくないしなぁ。

透き通るようなエルウィング。
清きエルウィング。
麗しのエルウィング
美しのエルウィング

うーん・・・・どんどん普通になるな。



 ケレゴルム Celegorm the Fair 

ケレゴルムはフアンの主人で、でもフアンはご主人よりベレンとルシエンの味方だったりする。このことからも人格が窺えますが・・・ 犬は人徳を見破りますからねぇ。フアンはそこら辺の犬と違うし、尚更だ。

ケレゴルムは、いろいろ困ったことをしてくれる。フェアノールの息子で、シルマリル奪還に燃え、ルシエンに横恋慕し、ドリアスを襲い・・・・ 

元はといえば、シルマリルが取られちゃったのが発端で、諸悪の根元はモルゴスであって、ケレゴルムはフェアノールの誓言に従って突き進んだだけ、とも言えるんだけど。まぁ、そういう意味では被害者でもある。だからって同族を襲っちゃいけませんが。

詳しくはシルマリルの物語をどうぞ。


ま、要するに、あんまり崇高なる人生ではない。でもthe Fair がつく。だからこれは金髪色白のことを指すと思っていいのかもしれない。最初はそうだったのさ。

ケレゴルムはノルドールで、ノルドールっていうのは黒髪なんだけど、ケレゴルムは草稿では思いっきり「金髪っっ!!」となっている。HoMEの5に出てくる。(LR299)

golden was his long hair だって。キンキラキン♪
gleaming hair なんだって。すごーい。

ケレゴルムとはどういう意味かというと、

celeg は、swift, agile 素早い(LR366)
gornは、 impetuous とか hasty (LR359) 性急、衝動的・・・(^^;;)

こうと思ったらガーーっ!と突き進むわけですな。性格そのまんまの名前。


ケレゴルムくんは、古英語でも名前をつけてもらっている。

古英語だと、Cynegrim Faegerfeax で、Faegerfeax とはFair-hair なんだそうだ。(LR299〜300)
古英語でもちゃんと添え名もついている。

辞書をひくと、
cyne〜ってのは、king とか ruler で、いろんな単語について、royal なんとか、king's なんとか、って言葉をつくる。
後ろのgrim は、今のgrimと同じで、厳しいとか荒々しいとか凄まじいとか・・・

Faegerfeaxの方は、faeger が fair で、lovelyでbeautiful 、feax がhair。

Celegorm the Fair にしても、Cynegrim Faegerfeax にしても、「ガガガガガ!!」に「きれい」って言葉がついてるのは同じなのだな。

きれいなのが「ガガガガガ!!」としてると、印象的かもしれない。中身が優雅な人がきれいなのは別に普通だし。

草稿では金髪ってことだったけど、その後設定が変わったらしい。ノルドールだからねぇ。でもこのthe Fair はそのままになった。

見た目、きれいで色白で、中身はガガガガガ!なケレゴルムくん。ってことかな。



 ティリオン Tirion the Fair 

これは都の名前。知らない人はシルマリルの物語をどうぞ。

アマンにあるエルフの都、美しきティリオンは、指輪にも出てくる。知ってる?

ビルボも言うし、ガラさまも言うし、そしてガンダルフが飛蔭の背でピピンに言う。Tirion the Fair。美しい都!海の彼方の都を見たい! ガンダルフの想いがひしひしと伝わる。もうずーーーっと向こうへ帰ってないんだもんね。そりゃ見たいよねぇ。

シルマリルに出てくる一ヶ所では、Fair は小文字。 ガン爺が言うときは、大文字。

  

 ニムロス Nimloth the Fair 

美しいニムロス。
ヌメノールにあった木の名前。

ミナス・ティリスの白の木は、このニムロスの実から育った。
ヌメノールがゴタゴタして沈む前、サウロンの陰謀でニムロスは伐られ燃やされてしまう。ひどい。なんちゅうことするねん!!
イシルドゥアはその前に実を取って逃げ (でかした!)、蒔かれたその実は芽を出し、ヌメノール水没後は船旅をしてミドルアースへ。そしてイシルドゥアの城の庭に植えられる。よかったね。

この木の家系がどういう経路なのかは、

  ガラシリオン→ケレボルン→ニムロス→白の木

・・・となる。

ガラシリオンは、テルペリオンに似せてヤヴァンナさまが造ってくださった木。 その子孫がミナス・ティリスで生きている。すごいでしょ? それだけで泣いちゃうでしょ?



 エレンディル Elendil the Fair 

エレンディルも the Fair で、瀬田訳では「エレンディル金髪王」となっているけれど、どっこいエレンディルは金髪ではない。ヌメノールから来た系列、ドゥネダインは、dark のはずなのだ。

この「エレンディル金髪王」は、どこに出てくるかというと、どこでしょう?(^o^) 探そう!
あの「金髪王」は、「?」と思った人も多いだろうな。「え?」「へ?」「ん?」「ひょ?」って思った人、手ぇ上げて!

ここの the Fair はどういう意味合いか。
エレンディルは素敵だったのさ。そうさ。ゴンドールの初代だもん。ヌメノールから来たんだもん。映画のエレンディルは、サウロンにやられちゃうシーンだけだったし、なんか疲れた感じのおじさんだったけど。
あー、倒れちゃったっ!・・・おっちゃん、だいじょーぶですか??

でも本物のエレンディルは、もっと輝かしいオーラを放つ、気品に満ちた王なのだ。the Fair だ!
ゴンドールでは、エレンディルは、そういうイメージで語り継がれている。だからファラミアもフロドと話をしていて自然にthe Fair という title が出てくる。 あ、言っちゃった。(^^;;)

髪が黒かろうが何だろうが、the Fair な人は the Fair なのだ。



 アルウェン Arwen the Fair 

Arwen the Fair、邦訳では「美しきアルウェン」、とエルロンドさまが仰います。親バカ?いやいや、パパでもそう呼んじゃうほど、一族の星なのでありますから・・・

アルウェンは黒髪だからね。金髪の、とはならない。美しき、麗しき、って感じ。
Fair のニュアンスを全部出すのは難しい。っていうか無理だし。 ま、美しきが妥当でしょう。

あ、これが出てくるのは、追補のアラゴルンとアルウェンの物語、エルロンドさまが「娘はやらんぞ!!」と仰るところです。アラゴルンかわいそ〜〜

でもさ、やらんぞ!なーんて言うとさぁ、逆効果なんだよねぇ。エルロンドさま、長年生きててわかんないのかねぇ。エルフはそこら辺の勉強が足りないのかもしれない。
いや、エルロンドさまは、アラゴルンを奮起させようとして言ったのかも・・・ とか、裏の裏まで考えたり・・・



 イムラヒル Imrahil the Fair 

ドル・アムロスの領主、イムラヒルも the Fair。

邦訳では、「金髪白皙のイムラヒル大公」になっている。ペレンノールの戦いの真っ只中、イムラヒルさまは金髪になってしまった。

しかし、イムラヒルの髪もまた dark だったはずだ。ヌメノール系列なんだから。

だけど、エルフの血も入ってる。ドル・アムロスの大公の初代のママはエルフ。
そのエルフは、ニムロデルの侍女だったミスレルラスちゃん。
ロリアンのエルフだから、シルヴァンエルフ。
ってことは、髪の色は・・・? わかんない。あの辺ってねぇ、はっきりしないのさ。でも金髪じゃないよな。金髪はヴァンヤールの専売特許みたいなとこがあって・・・

でもレゴラスのパパのスランドゥイルはシンダールなのに金髪。シンダールは銀髪が基本かと思いますが・・・金だってホビットに書いてある。golden hair ですよ、って。 なんでかな。どっかでヴァンヤが混ざってるのかな。そんなわけなかろうと思うけど。わからない。
王の配下のエルフたちは、gleaming hair とはあるけど、金とは書いてない。スランドゥイルが従えるのはシルヴァンエルフだから、銀系なのかもしれない。金髪ではないはずだ。


ま、それでですよ、ミスレルラスちゃんは、どう考えても金髪ではなかったはずだ。
そして、ドゥネダインは黒髪だ。
イムラヒルの血筋は、ドゥネダインが大方で、先祖に1人シルヴァンエルフが入っている。
やっぱ、金髪ではなかろう。

ミナス・ティリスに各地から兵士たちが到着したシーン、ドル・アムロス組の描写は、

  tall as lords で、grey-eyed で、dark-haired とある。

領主たちと同じく背が高く、灰色の目で、髪は黒い。

皆、髪はダークだ。 あの辺はみんなそうなのさ。

黒門前のところの描写に、
the men of Dol Amroth tall and fair というのがある。

背が高く、美しい、ドルアムロスの男たち。

dark であって、fair なのだ。
そして、そのトップであるイムラヒルもまた同じ。
他の者たちよりも、ずーっと、ダントツで、 fair だったのだろう。

この、イムラヒルが dark だったというのは、その子孫の話においても重要になる。



 ギルライン Gilraen the Fair 

アラゴルンのママも the Fair だ。きれい。
族長の奥さんだったんだから、きっと素敵だったんだろうな。

旧版では「金髪のギルラエン」、新版では「美しきギルライン」になっている。

ドゥネダインの一員なわけだから、黒髪だろう。だから新版の変更は正しい。



 ボロミア Boromir the Fair 

ボロミアも the Fair となっている。レゴラスが歌う。ボロミアをラウロスに流した時。

  Where now is Boromir the Fair?

瀬田訳では「美わしの人ボロミア」になっている。ここは金髪のボロミアではない。ボロミアの髪がdark だというのは、指輪のボロミア初登場シーンに書いてある。エルロンドの会議のところ。
黒っぽい髪でも the Fair な人は the Fair と呼ばれる。
瀬田さんは、ボロミアの髪は dark というのを覚えていて、金髪とはしなかったのだな。

映画のボロミアは、あれは dark ではないよねぇ。染めてたのかも。校則違反。弟も真似して染めてるし。執政の息子たちじゃあ、先生も何も言えないんだろうなぁ。



 ヒアルイン Hirluin the Fair 

緑丘陵から300人を引き連れて来たヒアルインは、ペレンノールの戦いで戦死。
緑丘陵 Green Hills ってのは、ピンナス・ゲリンPinnath Gelin のことで、ゴンドールの南西部。ドルアムロスより西のところ。わかんない人は地図を見よう。
ヒアルインは、そのピンナス・ゲリンの領主だった。

訳書では、
ミナス・ティリスに着いて初登場のところでは、白皙金髪のヒアルイン。
お亡くなりになったという記述では、金髪白皙のヒアルイン。
詩の中では、金髪のヒアルイン。

金髪だったのか、黒髪だったのかは、わからない。
しかし、普通に考えると、あの辺りは金髪じゃない気がするな。

ゴンドール各地を治めている方々のうち、突出して有名なのはイムラヒルで、他はいまいち知られていませんが、ヒアルインも the Fair と呼ばれる立派な方だったのだ。



 エラノール Elanor the Fair 

サムの長女、エラノールちゃんも the Fair だ。

訳本では、美しのエラノール。

1420年辺りに生まれた子は、その大部分が金髪だった、とある。
お花のエラノールも金色だし、エラノールちゃんは金髪なのだ。

でも、金髪の、ってするより、美しの、の方がきれいだね。

エラノールはアルウェンの侍女になって、それから結婚して、塔山丘陵のところに住み、サムが海の彼方に旅立つのを見送った。赤表紙本はエラノールが受け取って、代々伝わり、そしてトールキンが英語に訳した、ということになる。

エラノールの人生は、とてもきれいで、すてきなものだったんだね。正に、the Fair ですよ。

そんな風にきれいに生きられる世の中へと導いたのは、フロドとサムだった。



 エルフウィネ Elfwine the Fair 

エオメルの息子。

この the Fair は、邦訳では「金髪王」となっているけれど、基本的にロヒアリムは金髪なんだし(ガン爺やアラゴルンたちがエドラスに着いたところにも、兵士たちはgolden hair だと書いてある)、何もエルフウィネだけ「金髪なんですっ!」って呼称にすることがあったのだろうか・・・とずっと思っていた。そりゃ fair はブロンドのことも指すんだけど。

ロヒアリムが初めに登場するところ、草原でアラゴルンたちと会うところでは、flaxen-pale とあるから、キンキラキンではなくて、ちょっとくすんだgolden hair なのかもしれない。初代エオルの髪はyellowとある。みんなブロンド系なのだ。何にしてもdarkではない。

エルフウィネは特別キレイなブロンドだったのかな。でも似たような色が並んでるところで「金髪なんですっ!」ってわざわざ言わなくてもいいよな、とか思うのさ。

だから普通に、正しいとか、真っ直ぐとか、きれいとかいう意味のフェアでいいのではないのか・・・見た目のことでも、金髪だけが前面に出るんじゃなくて、「すてき♪」って感じというか、透き通った美しさというか、品のあるイメージ。


それに、エルフウィネは、黒髪だったかもしれないのさ。


HoMEを引っくり返すと、PM221の中のトールキンの書いた家系図の説明書きに、ドル・アムロスの領主の家系は、エルフの血を受けていたから、見た目も中身も fair だった、とある。顔も心も fair なのだ☆

  they were fair in face and mind.

これはUTにも載ってる。終わらざりし物語邦訳上巻347〜8ページ。自筆メモを見たかったらPMをどうぞ。
金髪だけじゃなく、中も外も全部フェアなのですよ。これが回り回って、子孫となるローハン王の呼称にもなる。

そして、ドル・アムロスの人々の髪はdark だ。

エルフウィネはイムラヒルにそっくりだったという。(UT邦訳下巻29ページ)
爺ちゃんのイムラヒルは dark だったはず・・・ママのロシリエルも dark だったはず・・・とするとエルフウィネもそうなのかもしれない。

エルフウィネは黒髪だった可能性もあるのだ。充分ある。


the Fair と呼ばれたら全部が金髪なのではない。髪の話じゃないんだし。the Fairという気質、醸し出される品格の話だろう。
エルフウィネの「金髪王」はやっぱ変だと思う。エルフウィネは金髪の可能性もあるのだけど、そうでなかったかもしれないし、金髪だとしても、「金髪王」にしてしまうと髪の色にしか目がいかない。

じゃあ、清雅というのはいかがだろう。
幸多きエオメルの息子は、清雅王エルフウィネ。

王をつけない方がきれいかもねぇ。
麗しのエルフウィネ。 うん、それもいいな。イケメンですよ、イケメン。 きゃ〜〜♪ですよ! エドラスの女性陣はポ〜〜〜・・・・っとしてしまって仕事にならない・・・


エルフウィネの意味は、エルフの友。
エルフの友という名は、エルフの血が入っているからでもあるだろう。

イムラヒルもロシリエルもエルフウィネも、それにボロミアもファラミアも、実はアラゴルンよりもエルフの血が濃い。ドル・アムロスの領主の家系はエルフが入ってるからね。初代が半エルフ。ママがエルフで、きっちり半分。
ボロミアはパパ似だったみたいだから、見た目ではあんまりわからなかっただろうけど、ファラミアは兄ちゃんとそっくりとはいえ、中身はエルフっぽいイメージもある。
ロシリエルも綺麗だったんだろう。エオメルが惚れるくらいだもん。

レゴラスはイムラヒルを一目見て「この人はエルフ」とわかった。そのイムラヒルにそっくりということは、エルフウィネは見た目、漂うオーラも、かなりエルフ的だったのだろう。隔世遺伝で表に出たのだな。

アラゴルンのご先祖さま、あのエレンディルもまたエルフの友という意味の名だ。
エオメルの代、ローハンはゴンドールとの結びつきが強くなる。それでゴンドール王家の祖の名を古英語にして息子の名前としたのかもしれない。アラゴルンはエオメルの子の名を聞いて、ほほうと思って微笑んだかもしれない。それともアラゴルンが名付け親だったとか・・・そう考えるのも面白い。

エレンディルとの関連としては、ドル・アムロスの領主に大公(Prince)の称号を与えたのはエレンディルだとの記述もある。(UT邦訳下巻59ページ)
そうだとすれば、その血を引く遠い子孫がエレンディルの名を貰ってもおかしくはない。そのまんまではなく、古英語に直してあるのがまたオシャレかも。

このひとつの名前だけで、人間とエルフの家系の関係や、ゴンドールとローハンの関係や、代々の歴史や、いろんなことが見える。
エルフウィネの名は奥深い。トールキンは全部計算の上で、エオメルの息子をこの名にしたのだろう。


ごつい、人間らしい、ローハンの騎馬隊。それを率いるのは、エルフの雰囲気をたたえた高雅な王。エオメルの次の代は、そんな光景だったのだ。

もうその頃にはエルフはほとんどミドルアースには残っていなかったにしても、ローハンの王にはそのエッセンスが漂っていた。不思議な光景だ。

もしエルフウィネが黒髪だったなら、金髪の軍を従える黒髪の王、というのも綺麗なコントラストになる。それが緑地に白馬の旗をなびかせ、緑の野を駆ける。きれいだなぁ・・・


そして、ミドルアースの人間たちには、そのエルフ的オーラが脈々と引き継がれているはず・・・ そうですよ、21世紀でもですよ。つながってんだからさ。

エルフは、全部行ってしまったわけではない。残していってくれたのだ。
エルフ的な何かは、人間の中にもあるということだ。







はい、順番いろいろで、頭が混乱したかと思いますが、つまりは、基本的に、通常ではない美しさ、品格、が備わっていると、the Fair がつく。 ってことだ。

トールキンは、髪の色に関係なく、the Fair を使っている。

the Fair の表現において、髪の色の描写は二の次だ。基本的に、髪のことを言ってるわけではない。
しかし髪の色の意味も入っていることもあるからまた困る。

単純じゃない言葉がついていると、訳すときには困るけど、でもなんとなくそういうことがわかっていれば、読むときには奥深くて楽しい。



the Fair がつくような空気をまとった、人や、エルフや、その他いろいろがたくさん出てくるミドルアースは、それこそが the Fair な世界なのだと思う。

Middle-earth the Fair!


お、うまくまとまった。 (^^)v




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