ここはエドラスの厩舎。
ドタドタ、ヒヒーン! バタバタバタ・・・・
暴れている馬に近づくアラゴルン。
そばにいたおっちゃんが言う。
「あれは気がおかしくなってるからどうしようもないですよ。放っときなさい」
それでも近づくアラゴルン。
「どうどう・・・・ どうどう・・・ よしよし」
それを見ていたエオウィン。
「日本語を流暢に話されるなんて。あなたは一体?」
「おいら、江戸っ子でぃ」
「まぁ、エドダイン?」
「あたぼうよ。この馬、PTSDだぜぃ。放してやんな」

後日。 
日本語のどうどうを覚えたエオウィン、馬から落ちて騒いでいるギムリに駆け寄る。
「ギムリ、どうどう!」


すいません。
本題。
えっと、映画二つの塔のDVDのSEE、ブレゴに話しかけるアラゴルンのシーンが追加されました。
アラゴルンはエルフ語の他、古英語でも喋ってます。さっすが王さま。何でもペラペラ。
それがわかっちゃうブレゴもさっすが。そこら辺の人間より頭いい。


 faeste

ブレゴがバタバタヒヒーンってやってるのに気づいたアラゴルン、近寄って「ふぁ〜すてっ・・・」って何度か言う。

これは、faesteです。(←fの次のaとeはくっついた字の)
現代英語になるとfastと書く。

fastと言えばまず「速い」だけど、「しっかり留まる」ってことで「動かない」って意味もあるよね。がっちりしっかり縛ったり握ったりするのもfastっていう。

この逆方向の何だか違う意味、元々は「がしっと動かない」ってのが先で、「速い」って意味は時代的には後で出てきたもの。

なんで「揺るがず、しっかり、安定して、じっとしてる」っていうのが「速く」になっちゃったかってのはよくわかってないらしい。
この言葉の意味は、「強意」であり、「ぎゅっと、ゆるむことなく」っていうイメージがある。
stand fast。 強くぎゅ〜っとゆるみなくstandするってことは、しっかり立っとれ!動くんじゃねーよ!ってことになる。だからfastは固定、安定、って意味になる。
run fast。 強くぎゅ〜っとゆるみなくrunするってことで、はよ走らんかい!びゅーんと行け〜!ってことになる。だからfastは速い、って意味になる。
それで速くって使い方に変わっていった、って説もあるらしい。 う〜〜ん、わからん・・・

凝縮っていうようなイメージなのかな。固着っていうのもそういうことだし、速いのも、たらたら動くのと違って凝縮して集中している。

ゆるみなく、っていう日本語はfastとお友だちかもしれない。
「しっかり安定」「速い」っていう意味の両方で使えるから。 物がゆるむのと、気がゆるむのとの違い。

ま、とにかく、昔の、初期のfastは、「速く」より「じっとして」って意味の方が普通だったわけなんだ。っていうか、初めは「速く」って使い方はなかったんだね。



 stille nu

stilleは、現代英語のstill。 静か、穏やか、落ち着いた、ってこと。今でもそういう意味で普通に使う。
でも、「なお、まだ、やはり、それでも、ますます」とかっていう副詞のstillもよく出てくる。
歴史的には、「なお」とかっていうのはずっと後に出てきた用法で、16世紀くらいから。元々は「しずか〜で動かない、じっとしてる」っていう意味の方。

nu の u は、上に ' つき。 nowのこと。 ほれ、こら、まぁ、うりゃ、そら、さぁ、って掛け声のnow。


二つの塔のオフィシャル・ガイド The Lord of the Rings: The Two Towers visual companion では、
stille nu, faeste は、Quiet now, steady と訳されてます。
たしかに、今ではそのまんま still now, fast っていうよりも、Quiet now, steady の方が、よくわかる。

メインになるよく使われる意味や、その使われ方が時代によって変化していくのは、すごく面白いと思う。


ということで、アラゴルンは、ブレゴに「じっとして、落ち着いて」って言ってたわけだ。

チョロチョロしてたりジタバタしてる相手には「ふぁ〜すてっ」と言ってあげよう。DVDのアラゴルンのセリフをよく聞いて練習すること。
王さま、ぼそぼそ喋るから何言ってるのかよくわかんない。(^^;;) 
でも、ふぁ〜すてっ、の方は、割とはっきり聞こえるよ。






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