にびしろ川、Hoarwell は、エルフ語でミスエイセル。
トールキンの説明によれば、
Mitheithel = mith (灰色 pale grey) + eithel (泉 spring, source) となる。
だからミスエイセルは、灰色泉。グレイな水源。
ミスはミスランディア、ミスリルのミス。ただのgreyではなくpale greyなのだ。なんと素敵なことよ。
ちなみに、学生の皆さん、普通はgrayと綴ります。
で、これが共通語になったのが、Hoarwell で、翻訳の際には訳しなさい、との指示がある。
hoar は、霜、白、灰色、灰白色
well は、泉、水源
well は、very well の well じゃないから気をつけましょう。
川なのになんで泉なのさ、って思うかもしれないけど、水源とは、水が湧いて、湧き出て、ほとばしるのだ。だから川になる。
この川は語の作りから言うと、白じゃなくて、hoar 灰色で、でも濃い色じゃなくて、灰白色で、湧き出てほとばしる、っていう意味になる。
なかなか詩的なのだ。
瀬田訳では、にびしろ川。 すばらしい。
にび、っていうのは、鈍と書き、濃い灰色のこと。喪服の色。薄い灰色は、薄鈍、うすにび、っていう。
この川の描写の色合いは、灰白ってことだけど、灰っていうより鈍を使った方が味わい深い。でも人によっては、にびっていう言い方は喪服を連想してしまうかもしれない。
鈍白って言い方は普通はしない。喪服は抜きにして、日本語の色を表す多彩な言い方のひとつとして考えると、かいはく川より、にびしろ川っていう方が詩的な感じがする。
ひらがなにしたのもよかったね。
うすねずみ川、とかってすると、意味は合ってるけどイメージがガラガラと崩れる。指輪の初邦訳が瀬田さんでよかった。
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