ひじりこの浅瀬。
ひじりこ・・・・ みじんこ・・・・ ひじきの煮物・・・ ちがうちがう。 あ、ひじきは体にいいそうですので、皆さん食べましょう。
んで、ひじりことは何ぞや?
辞書を引くと、「泥」とある。 ふーん。
「ひじ」だけでも泥のこと。「水たまりの土。どろ」とある。 ふーん。
ひじりこは、どろんこなんだな。
泥んこの浅瀬。 ってことか。
ひじりこの浅瀬は、ボルジャー家の本拠地だそうで、ってことはボルジャーさんちの前を流れる川は、どろんこなわけだ。あそこは水たまりじゃないけどね。川だからさ。でもどろんこなのかな。
なんでそんなとこに住んでんだろ。どうせ住むなら、きれいな流れのそばがいいよねぇ。
昔読んだ旧訳では、「羊皮の浅瀬」だった。羊の皮をなめす加工でもしてる地区なのかと思ってた。ボルジャーさんちは皮屋さん? バッグ作ったりとか。ホビットは靴履かないからさ。
それとも羊皮紙を作るのかもしれない。川の水を使ってね。浅瀬のそばに羊皮紙工場があるのかも。赤表紙本って、羊皮紙だったのかなぁ・・・・
・・・とか思ったりしてた。
それが新訳で「ひじりこの浅瀬」になった。
原語では、Budge Ford だ。
地図では、Budge Ford で、本文中では Budgeford 。これについては下の方で。
旅の仲間、クリックハロウでご飯を食べて、メリーもピピンも一緒に行くってことになって、フレデガーは後に残ってどうのこうのってシーンで説明がある。ボルジャーの一族はBudgeford に住んでるんですよ、ってね。
budge っていう語は何種類かあって、辞書をいろいろ引っくり返すと、
1 ちょっと動かす。意見を変える。 2 子羊の毛皮。 3 お酒。
・・・とある。大抵普通はここまでしか載ってない。
羊皮という旧訳は、この2番から来てるわけだ。
泥っていうのはないな。英英を見ても出ていない。ないないない・・・
泥はどこだ?! どっから出てきた?! 泥やーい!!
探したら、リーダーズ・プラスにあった。
4 《廃俗》 泥棒
これだっっ!! 泥んこじゃないんじゃん。泥棒なんじゃん。そうか〜〜これか〜
泥を国語辞典で引くと、「水混じりの土」、「泥棒の略」、とある。
だから、budge→泥棒→泥、となったのは仕方ないのかもしれない。
しかし、「ひじりこ」というのはあくまで「土の泥」であって、「泥棒」の意味はない。連想ゲームじゃないんだから、どんどん変えないでほしいな。
新訳はいろいろ変えたのはいいんだけど、こんな風にちゃんと調べないで適当に造語してしまう傾向がある。
ってことで、じゃあボルジャー家は、実は代々泥棒とか?
ビルボはホビットの本じゃBurglarと呼ばれたし、瀬田訳じゃ忍びの者になってるけど、Burglar は強盗のことだし、ホビット族には泥棒の血が流れてるのだろうか。
で、結論はというと、バッジの浅瀬は、泥んこでもなきゃ、泥棒でもないし、羊の皮でもないのでした。
トールキン先生が仰るには、
Budgeっていうのは、当時はもう意味がはっきりしなくなってた言葉なんだけど、ボルジャー家が住んでいた土地だから、bolgeとかbulgeが訛った形なんじゃないかねぇ。
そして、それはfatness とか tubbiness、つまりデブ、ずんぐりころころ、ってことを言ってるのだよ。
・・・だそうです。
bulge を辞書で引くと、丸い出っ張り、膨らんだところ、お腹の脂肪、って意味だとある。
それが音がちょっと崩れて、budge になったのだよ、たぶんね、と先生は言っている。
たしかに、バルジの L の音をいちいち発音せずに飛ばすと、バッジになる。言いやすい。
ボルジャー家が住みついたから、それが地名になったのか、地名からボルジャー家の名字が出来たのか、どっちが先なんだろう。
地名からボルジャー家になったのなら、元々がデブって地名で、そこに住むことになったからデブの家系になった・・・わけではないわな。
デブちゃんって意味合いのあるボルジャー一族のいるとこだから、バルジって呼ばれるようになって、それがいつしかバッジになった、ってことをトールキンは言いたいんだろう。
バッジの意味はよくわからんけど、たぶんそうなんだろ、と先生は仰る。わかってるくせに、わからんというところが古狸的でなかなかよろしい。
いつもは、これは訳せとか、これは訳すなとかうるさいのに、バッジフォードには訳せとも何とも書いていない。
よくわからんのだから、訳すときに「でぶ」って意味は特別入れなくていいのかな。それなら訳としては、「バッジの浅瀬」、かな。
でも、入れた方がいいかな。それなら「デブの浅瀬」。
でもこれは村の名だ。 っていうか、村の名としても使う。
Ford of なんとか、Fords of なんとか、っていう浅瀬の名は、いろいろ出てくる。
アイゼンの浅瀬、ポロスの浅瀬、アロスの浅瀬・・・ 一番有名なのは、何と言ってもブルイネンの浅瀬。
フォード・オブ・なんとかは、なんとか川にある浅瀬。
なんとかフォードってなると、浅瀬の近辺に出来た町の名になる。
なんとかフォードっていう町は21世紀にもたくさんある。
浅瀬の流れの中に家があるわけではない。
バッジの浅瀬とか、デブの浅瀬とやると、川に目が行ってしまい、村の名として感じられなくなる。
昔は、橋なんかそんなになくて、川というものは歩いて渡るものだった。だから、足が底に届く程度の浅瀬は物流に欠かせない渡岸点となり、そこへ向かって道が延び、人が集まり、売り買いをする場所にもなり、結果、人が住みつき、周辺は町へと発展する。
そして、主に何を渡した場所か、何が渡った場所かが、名前に残っているのが面白い。
トールキンの本拠地だったオックスフォードもこのford だ。あそこは牛津と訳される。ox の ford だからさ。牛の渡し場ってことで、牛津なの。
津っていうと船着き場だったり、海の港のイメージが湧く。川を歩いて渡るとこって感じにならないかもね。わかりやすく訳せば、牛渡し、って感じかな。
イギリスの地図を見ると、そこら中たくさん ford が散らばっている。
Heyford ってところもある。heyは干し草だから、干し草渡し。
Swinford のswinは、swineで、豚とかイノシシのこと。イノシシさんがぶーぶー言いながら渡ったんだろう。猪渡り。
そのそばにはStanford がある。stan はstoneで、つまり石の浅瀬。石瀬。この場合は石が渡ったんじゃなく(そりゃそうだ)、石だらけだったんだろう。あのアメリカの有名な大学じゃないよ。英国の話。あの学校はね、スタンフォードって人が創ったからあの名前なの。
そして、スタンフォードってところはミドルアースにもあるんだよ。ど〜〜こだ?
ヒント! バランドゥインの途中。(^_^)v
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わかった?
はい、バランドゥインの途中と言えば、あそこしかない。サルンの浅瀬。
Sarn Ford ね。 これは、なんとかフォードの順番だけど、町じゃない。
Sarnford じゃなく、Sarn Ford だから、浅瀬そのものを言っている。
Ford of Sarn になると、サルン川の浅瀬になっちゃうし。サルン川ってのはないし。
やっぱり書き方としては、Sarn Ford だ。
ここに町があるなら、Sarnford になるだろう。
だからつまり、バッジフォードの書き方も、本ので正しいのさ。誤植じゃないの。
地図では、Budge Ford で、本文中では Budgeford 。
地図にあるのは、Whitfurrows から Scary に向かう道の途中が川で、そこが Budge Ford になっている。橋はなくて、歩いて渡るんだな。パチャパチャと渡れる程度に浅いんだろう。
シャイアの地図は、村になってるところは、ここら辺は家がたくさんあるんですよ〜、って点々がついてるけど、ここにはついてない。集落じゃなくて、あくまで道と川の交点に向かって斜めに Budge Ford と書いてある。ここがそうですよー!ってわかるように。この道を通って行くときは Budge Ford で渡るんですよー!ってね。
訳本だと、それがわからない。どこが浅瀬なのかハッキリしない。ホビット村では川には橋があるから、そのイメージのままだと、ここでも川を横切る道には、橋があるように感じる。
評論社さん、ここは浅瀬なの!橋はないの!ってわかるようにするといいな。
で、本文で出てくるのは、フレデガーのおうちの話だから、浅瀬でなくて、集落のことになる。だからBudge Ford と書いてしまうと変なのさ。あくまで、Budgeford。
サルンの浅瀬に話を戻すと、
Sarnはエルフ語で、石のこと。 石だらけの渡し。 ね、スタンフォードと同じなの。
全部シンダリンで言うと、Sarn Athrad になる。athrad は、crossing, ford のこと。(LR383)
半分だけ訳すのは、地名によくあるんだそうだ。先生はそう書いている。
Stanford と Sarn Ford。 ちょっと似てるよね。Sで始まるし。トールキンはスタンフォードが頭の隅っこにあって、サルンフォードを書いてたんだろう。
で、英国に話を戻すと、
Foxford ってのもある。キツネが行き来するところだったのかもしれない。狐渡り。
そのそばにはLongfordというのがあり、これは浅瀬が長く続くってことかな。長瀬。
ブラッドフォード Bradford のbrad はbroadのことで、つまり広瀬。
広瀬さんとか、長瀬さんとか、日本にもいるね。どこの国でも名前って似た感じになるのだな。
・・・とかいろいろ見てみると、パターンとして、3種類あることがわかる。
1 何か、誰かを渡すところ。 訳せば、○○渡し。
2 何か、誰かが渡るところ。 訳せば、○○渡り。
3 その場所の景色、地形、特徴。 訳せば、○○瀬。
牛さんの場合は、1。
干し草さんも、1。
キツネさんの場合は、2だな。キツネ道の一部だ。
豚さんなら1だろうけど、猪さんなら2。
長いとか石だとかは、3。
じゃあ、でぶちゃんのフレデガーのおうちがあるところはどうか。
でぶ族が渡るところ。 2だな。
つまり、訳としては、でぶ渡り。(爆)
ってことを考えると、このバッジフォード、でぶが渡るところ、っていうのはすごく面白いのさ。なぜなら、その周辺は、Bridgefield という名前だから。
橋野と訳されている。そのまんま。
橋あるからね。ブランディワイン橋。 で、橋野。
21世紀の日本には、たくさんたくさん橋がある。人が住んでるところなら、一本橋があったら、見える範囲の距離にはまたあって、どこからでもそんなに迂回しないで対岸に渡れるように、そこら中に橋がある。町の中だと何百メートルも離れてなくてもいくつも架けてある。
でも昔のヨーロッパはそうじゃなかった。上の方でも言ったように、川というのは基本的に歩いて渡るものだった。橋はそんなにどこでもここでも架かっていない。架かってるとすれば、すぐ流されちゃうようなちょっとした橋があるか、それか思いっきり気合いを入れて造ったすごい立派なやつがあるかだ。
欧州の建造物は、1000年も2000年も前のがまだ使えたりする。ローマ時代の道路もまだ使ってる。石畳、そのまんま。日本の道路のなんとチャチなことよ。でもチャチにしといてしょっちゅう直さないと、土建屋さんが儲からない、って事情もあるらしいけど。
第三紀ミドルアースもそうだ。いや土建屋さんの話じゃなくて、橋がドガドカ架かってない、って話。
ブランディワイン橋は、気合いを入れて立派に作った部類。すごい古い。
ホビットが建てたんじゃなくて、アルノールの人たちが作った大きな橋で、ほんとの名前は石弓橋。(Bridge of Stonebows)
アルノール分裂後のアルセダイン第10代の王、アルゲレブ二世のとき、ホビットに移住が許可された。アラゴルンのご先祖さまですよ。すごいですね〜
橋が出来たのは、北方王国隆盛の頃、またはアルセダイン王国隆盛の頃、とある。
指輪の序章、決定稿では、
in the days of the power of the North Kingdom, 北方王国になってて、
PMにある草稿では、
in the days of the power of the realm of Arthedain、アルセダインとある。彼らは舟を持たなかったから橋を造ったんだそうだ。へぇ。
どっちにしても、何年に出来たのかはハッキリしない。
ま、決定稿に従うのが筋だから、北方王国、つまりアルノールの時代、分裂前とすると、第二紀の3320年から第三紀の861年の間となる。気が向いたら年表見てね。
バランドゥイン、つまりブランディワイン川はミドルアース西部の大河だから、どこかに一ヶ所はしっかり橋を架けとかないと軍の移動に困る。だからたぶん、サウロンとゴタゴタしてた頃には橋はあったのではないかな。第二紀の終わり頃にね。第三紀に入ってからだと、何もそんなに特別に大きな工事をしなきゃならないような理由がない。
・・・とか考えて、建造が仮にアバウトに第二紀の3400年とすると、クリックハロウでフロドやフレデガーがキノコを食べた時まで3059年。 わ〜〜・・・・ そんな昔かぁ・・・ さんぜんねんまえの橋ですよ!今なら世界遺産だよなぁ。観光客、いっぱい来ますよ!! 橋のたもとにはずらっとお土産屋さんが・・・
ホビットたちは第三紀1601年、アルセダインから橋を受け継ぎ、手入れしつつ、その世界遺産を守っていた。すごいな。まぁそんな意識はないんだろうけど。
で、そんな立派な由緒ある大橋があるから、周辺は橋野というのさ。
で、橋野だけど、ford で渡るの。
クリックハロウでボルジャーの家の説明が出る。
「彼はブリッジフィールドのバッジフォードの出である。」
橋と渡しって名前が並んでいる。川の渡り方が違う名前が続けて書いてあって、おもしろいな〜、ってわかる人はわかるんだけど、トールキンはそのことをまた続けて本文に入れている。わかるかね? ほれ、面白かろう? って先生が言ってるのが聞こえるようだ。
「しかし彼はブランディワイン橋を渡ったことはない。」
ford のところのフレデガーは、bridge を渡らない。
別の川だけどね。石弓橋はブランディワイン川に架かってて、バッジフォードのところは川だから。川って名前の川ね。シャイアを流れるWater。
でもなんか、面白いな、って思うのさ。
グワなら毎日でも渡りに行くけどな。すごいなぁ、すごいなぁ、って思うじゃん。これって、そんな昔の人が架けた橋なんだ!ってさ。
でもホビットたちはいちいちそんな風には思わないんだろうな。アルセダインなんて関係ない生活だもんね。トールキンは、そんなホビットたちの暮らしの中に、昔の王国の人たちが建てて、歴史上大きな役割を果たしたであろう橋をポンと置いている。メリーもフロドもその近くで育った。フレデガーもね。
バッジフォードに話を戻すと (話を戻すとが多い^^;;)、
スタンフォードもブラッドフォードもギルフォードも、そしてオックスフォードも、わざわざフォードだけ訳して、オックスの浅瀬、とかって訳名にはしない。
だからフレデガーのおうちのあるBudgeford も、そのまま「バッジフォード」でいいのかもしれない。
訳すとすれば、こんな感じ↓
太渡り そのまんま。 でぶ渡り ちょっとマジメさに欠けるか。 たぷたぷ渡り 水のタプタプとかぶって川の途中の名前には合うかな。 ぽっちゃり渡り これもポチャポチャって感じで水と脂肪の両方に使える。 メタボ渡り ちがうちがう 腹出渡り いいかも。 幅広渡り つまんないか。 幅太渡り うん、デブな字は入れた方がいいな。 腹太渡り 脂肪が見える・・・(爆) これにするか。
ということで、Budgeford は、羊皮の浅瀬でもなく、ひじりこの浅瀬でもなく、腹太渡り村。
Budge Ford は、腹太渡り。
この2つは、訳し分けねばならない。原語が違うんだし。
フレデガーは、そんな名前の集落で育ち、ちっちゃい頃は近くの同じ名前の浅瀬でパチャパチャして遊んでたんだろうな。
そして、名は体を表すで、太めなのだ。ぶよよん。
皆さん、リンパの流れをよくしましょう!! 余分な脂肪はさよーなら!ですよ〜
腹八分目に・・・ って言いつつ、十二分目になるんだよなぁ。 鷲の今日のごはんはハヤシライス♪
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