映画、ホビット村の描写は見事でした。あれだけでも映画化の価値アリだと思います。
なんて美しい! 暮らしの原点だね、あれは。

しかし、原作ファンの中には「ん・・・???」と思った人も結構いるんじゃないだろうか。
ガンダルフの馬車が橋を渡る。のんきなホビットたちがたくさんいて、そして馬車はある家へ。
「ん・・・・・????」

思いませんでした?

ちょっと、ガンダルフ、そこ、誰の家?

あ、ビルボが出て来た。

?????

ビルボんちなの? そうなの? ・・・そうみたい。
な、なんか変だな、何が変なんだ?

そうです、ここは原作と大幅に違います。トールキンが生きていたら、きっと文句を言ったことでしょう。今頃、天国でおイカリかもしれません。

どうでもいいと言えば、どうでもいいのかもしれないけど、ホビットの村、とりわけ袋小路屋敷周辺は重要な場所です。いい加減にしてはいけません。

何がおかしいのか、一言で言いますと、「方角」・・・かな。位置関係。
ざっと見ただけで、3点あります。

 その1 
映画では、ガンダルフは「左の方から」ビルボとフロドの家に到着します。

でもほんとは不可能です。
なぜって、だからその・・・・・そういうもんなのです。
下の絵をどうぞ↓
これはトールキンが描いた絵です。トールキンの頭の中は、こうなっていたわけです。ですから、ホビット村が出てくるシーンでは、第1部も第3部も、この配置が基本となって物語が進みます。一番奥に見えるのが、お山。ビルボの袋小路屋敷があります。そこまで行くには、青い矢印のところを通ります。トールキンの描写もそうなっています。緑ののところが玄関です。
ってことはですよ・・・・・右からじゃん! 向かって右から玄関前に着くのが正しいのでした。
袋小路屋敷の玄関  誕生祝いの木 袋枝路の角 生け垣の門 門 
ガンダルフの馬車の道筋 ビルボ出立の道筋 粉ひき場 穀物倉

この道は、ホビット村を通り抜けて来て、川を渡って、ずんずん来て、袋小路屋敷で袋小路なのです。矢印の先、オレンジ色のところ、左の方の窓の下は馬車が入れるようなところではないようです。家の前は庭になってるのです。
白い線のところは門です。門の先、玄関までの小道は馬車も入れるようです。ガンダルフが花火を積んで来たとき、玄関前まで乗りつけてますから。

 その2 
ビルボが指輪を置いて家を出て行きます。映画では、玄関を出て左、つまりこの絵では右側へ向かいます。
ところが原作では、パーティの明かりに背を向けて、庭へ回って、小道を下り、生け垣を跳び越えて夜の中に姿を消します。パーティをやってるのは、うすいピンク色のところです。庭は向かって左に広がっています。
また、フロドが出発する際にも同じルート辿ります。そう書いてあります。その時の描写には、お山の西側へ回って降りていく、とあります。この絵は南から北を眺めているので、西は向かって左です。
ということで、ビルボは紫の矢印の方向へ行ったことになります。大体、大っぴらに村の中心部を通っていくわけないのです。
だから、玄関を出て右、つまりこの絵では左側へ向かったのです。
映画とは逆です。


 その3 
映画ではフロドとサムが帰ってきて、「またね〜〜」ってことでフロドの家の前で別れます。あれも本当は、この、上に延びていく道の途中で言うべきなのです。袋枝路の角、のところで「んじゃ、またね〜〜」となるのが本当です。

でもまぁこれは、フロドの家の庭には、向かって左側の方にもサムの家の方へ降りていく小道がありますから、サムはそこを通って自分の家に帰った、ということにしておきましょう。左の方、降りてくると生け垣にアーチになった門が見えますね。(赤いのところ) あそこを通るつもりだった・・・ということにしておきましょう。
フロドは大事な若旦那だからね。サムは遠回りして送って行った、ということで。


もうひとつ、細かいことを言えば。ということで、 その4 
原作ではパーティのとき、原っぱの大きな木が中に入るほどの大きなテントが張られます。この木の下でビルボは演説をして、パッと消えるわけ。
映画では、テントはちっちゃくて、外での宴会でしたね。その方が映像はキレイだから、これはいいですけど、イマイチ木の印象がなかったなぁ。
原作ではあの木は結構重要ポイントなんだけどね。黄緑ののところだよ。

ちなみに、黄色いは、粉ひき場です。水車が回ってるでしょ。
水色のは、穀物倉です。


さて。 また その1 
ガンダルフ到着の道筋に話を戻します。

でも、この道じゃなかったかもしれないじゃないか! と仰る方がいらっしゃるかもしれません。
でもここしか通るとこ、ないんだよ。ないんだも〜んね〜〜
下の地図をどうぞ。ホビット村周辺です。本にもトールキンが描いたものがついてますよね。
本の描写によると、
「ブランディ橋の方から水の辺村を通ってきて、お山へ」
街道から水の辺村を通る。街道は川の南側ですから、北側へ渡らなくてはなりません。すると絶対、この地図にある道を通って、絵にある橋を渡って、うねうねと上へ向かう道を通って、向かって右側から到着。

上の地図にある道は、右と左に分かれて、お山をぐるっと迂回して、北にある山の上村へ抜けています。ビルボの玄関前に行くところの何十メートルか何百メートルかは、書かれていません。
無理矢理書けば、
オレンジの線がビルボの玄関前に行く小道

絵と地図を見比べると、左の方へ抜けている道は袋枝路 (ピンクの道) でしょう。また、袋枝路の先に、右へ行く道 (水色の道) がちゃんとあります。

村の西のはずれの方にも小さな橋があります。でも東から来たガンダルフがそっちを通るわけもありませんし、「ホビット村を通り抜け」と書いてありますから、絵にある橋を渡ったことは確実です。


わかりました?
映画は映画だから、いいんだけどさ。
でも、本、読むときは、頭の中の風景と配置と方向を直してから読みましょう。

上記の各場所は、王の帰還でもいろいろ出てきます。
映画では、ホビット村のシーンはカットなのかもしれませんし、本のような描写はしないのでしょう。(どこそこが、どう変わって、あそこは、こう変わって、というような)
だから、ロケ地の地形に合わせて変えてしまったのだと思います。

ガンダルフの来る方向とビルボの旅立つ方向から考えて、映画では、袋小路屋敷の西がホビット村の中心部になっているようです。

以上、あの辺りの位置設定が全然違っているよ、というお話でした。
また、お山周辺の詳しいお話はこちらへどうぞ。