文句があるわけじゃなくて(ちょっとはあるけど)、字幕と吹き替えの違いが面白いなー、という部分。





ドワーフ隊を取り囲んだエルフたち。

王子さまが仰います。

英語 字幕 吹き替え
Do not think I won't kill you, Dwarf.
It would be my pleasure.
威嚇ではないぞ
遠慮なく射る
殺すわけがないなどと思うな
喜んで殺そう

おもしろい。

原語に沿ってるのは吹き替え。

たぶん字幕は、そのまま訳すと長くなるから、字数制限で他の表現にしたんだろう。
2行目はそのまんまでも字数はオーバーしないと思うけど、まぁ翻訳としてはこれでもいい。





ドル・グルドゥアで、ガンダルフはラダガストにガラさまに伝言しろと言って、自分ひとりで砦へ。
ラダガストは行きかけたけど、また戻ってくる。

そこでガン爺。

英語 字幕 吹き替え
Turn around and do not come back. 早く行け
そして二度と戻るな
回れ右して、さっさと消え失せろ


直訳すれば、両方合わせたものになる。回れ右して、戻ってくるな。

これは、どっちでもいいけれども、吹き替えは言い方がキツいから、印象がだいぶ違う。

ガンダルフはラダガストまで危険にさらしたくないし、ガラさまに伝える役もしてほしいし、何が何でもラダガストを追い返したい。
それがどういう表現で出るかは、字幕も吹き替えもアリなのだけど、本物のガン爺の言い方と吹き替えは雰囲気がまるで違う。
まぁね、キツい言い方しても、ガンダルフが優しいのはわかるからいいんだけど。
声優さんとしては、「回れ右して、さっさと消え失せろ」って原稿だったら、ああいう言い方になるよね。





エレボール、ドアが開きました。
ビルボは下に降りて行って、お宝の山を一応探してみる。
見渡す限り、金貨の海。う〜み〜は〜ひろい〜な〜おおき〜い〜なぁ〜〜♪

英語 字幕 吹き替え
Arkenstone. Arkenstone.
A large, white jewel.
Very helpful.
アーケン石、アーケン石
大きな白い宝石
いい説明だ
アーケン石、アーケン石
でかくて白い石
それだけじゃ

ここは、字幕だと、くすくす笑いが聞こえる。映画館で、笑い声が聞こえると、うれしくなる(^^)

「いい説明だ」は、very helpful とても助けになる、の訳にピッタリだ。面白い。
確かに、いい説明だ。

吹き替えでは笑う人はいなかったなぁ。もったいない。

もうひとつ文句を言うと、「でかくて」はビルボには合わない。ビルボの家は、シャイアでは名家なのだ。おうちは大邸宅。「でかい」は、上流の人は使わない。ひとりのときでも、口から出ないだろう。それが本物の上流だ。ビルボらしくない言い回し。

そして話を戻すと、「それだけじゃ」はvery helpful を逆の言い方にして訳していて、面白くない。
very helpful は、実際と逆のことを言っているから面白い。
「それだけじゃ」は、逆のことを言ってる原語を逆にしたことで、意味がUターンして、そのまんまの意味になってしまって、笑えなくなっちゃった。

訳すとき、工夫して、主語を別なところにしたり、意味を違う方向から捉えて表現を変えたり、いろんなことをする。
それでわかりやすくなればいいけれど、こんな風に原語のニュアンスの効果がなくなってしまうのなら、工夫して変えてしまわないで、そのまんまがいい。