黒の乗り手に追っかけられて、フロドは逃げ遅れ、馬に踏んづけられそうになりながら、渡し場に駆けこみます。
速く、速く・・・!! 飛べっ!!

あぁぁぁ〜、間一髪。やれやれ。 さんざんTVコマーシャルでも見たあのシーン。

そしてギリギリセーフで舟へと逃れたホビットたちのセリフ。

フロド How far to the nearest crossing?
メリー The Brandywine bridge. Twenty miles.

フロドを捕まえ損ねたナズグルの後ろを別の乗り手が次々と駆け抜けます。川を渡ろうとしてではありません。なんか、横の方へ・・・

さて、ここのセリフは一体何か。
ナズグルたちはどこへ行ったのか。

これは、映画だけ見た人にはちょっとわかりづらいかもしれません。
本、読んだ人は、地理感覚がついてるし、同じようなセリフを読んでるから、あまり意識しなくてもわかるかもしれないけど。


さて、字幕。
フロド 「どうする?」
メリー 「30キロ先にプランディワイン橋が」 (30キロ行くと、だったかもしれない)

ふーん。
フロドは、どうする? と訊いてます。
どうするってことはですよ、これからどうする? ってことでしょ。
これからどうするってことはですよ、どこへ行く? または何をする? ってことでしょ。
それで、答えが場所を示しているんだから、どこへ行く?の方ですよね。

そうか、プランディワイン橋へ行くのか。
と、知らない人は無意識にそう思います。

でも続くシーンに橋は出てこない。
さっさとブリーに着いちゃう。あぁ、お天気悪い。寒そう。

それで、橋はどうなったんかいな。
舟で向こう側に着いて、また橋を渡ったら、元の岸に戻っちゃうよねぇ。
それとも、また川があって、そこに橋があるのかな。でも映らなかったし。
あ、きっと目的のブリーってところは橋の近くにあるんだ。
いや、でも、フロドはブリーに行くつもりで、どうする?って訊いて、メリーが橋があるよって答えて、なんかよくわからんな・・・ 


そうです、わかりません。
で、わからないまま、というか、何がわかんなかったのか、わからないまま、考えるヒマもなく、ブリー突入。

はい、説明です。
ええと、要するに、川なわけで、川を渡るには、
1. 泳ぐ
2. 舟に乗る
3. 橋を渡る

普通はこれしかありません。あと考えられるのは、空を飛ぶ、川の下にトンネルを掘る、スタートレックみたいに転送してもらう、ドラえもんに頼んでどこでもドアを出してもらう、などなど。

でも普通は上の3つです。ナズグルたちは水に弱いのか、どっぷん!と川には入ろうとしません。馬も犬かき、じゃなくて馬かきして泳ぐ根性なさそうです。
舟は、他にないし。(あったらどうしたのかな。ロープほどいて乗ったのかな)

となれば、残るは橋だ。

crossingっていうのは、渡し場、渡河地点、渡船場、要するに「川を渡れるところ」です。
橋でも舟でも、この際どこでもドアでも、何でもいいから渡れるところ。

フロドは、ナズグルたちはそのcrosssingを探しに行ったのだろうと思って、一番近いcrossingはどこか、ここからどのくらいあるか、と訊いてるわけです。

メリーはプランディ館のおぼっちゃまで、川の対岸で育ってますから、ここら辺りには詳しい。
それで、プランディワイン橋が20マイル先にあるよ、と言ってるのです。
100メートル先に橋があったら、あっという間に渡られて、へたをすると舟が着く前に対岸で待ち伏せ・・・ということにもなりかねませんからね。20マイル離れていれば、まぁとりあえずは大丈夫でしょう。
20マイルは約32キロメートル。

で、舟で向こう岸へ着いて、それ、ブリー村へ! いそげ、いそげ、となるのです。

字幕はですね、なんか違いますよね。訳者さん、たぶん勘違いされていたのだと思います。
橋へ行こうとしていたのであれば、How far to the nearest crossing? を「どうする?」にするのは、なかなかいい意訳だとは思います。さすがはプロ。
でもここはそういう意味じゃなかったんだなー。マイルをキロに直したのは分かりやすいですけど。

ここは、原作でも川を渡ったあと(映画みたいに捕まりそうになったわけではない)、向こう岸に何か黒いものがいるのを見て、不安になったフロドが「馬は川を渡れるかな」と訊いて、メリーが「20マイル北に行けばプランディ橋があるけど、馬が泳いで渡ったってのは聞いたことがないな」と答えるシーンがあります。
だから読んでいれば間違える部分ではないんだけど。

吹き替えは、「一番近い橋は?」だったと思います。たしか。
正解☆

でも、それでも、本読んでないと、わかんないよね。

位置関係、橋の由来については理解度アップ講座に関連ページあります。→こちら

映画と原作の比較のとこにもあります。→こちら