じゃあ、こんどは曲。 あぁ、やっと曲になったぞ!

この歌は不思議な雰囲気で、要するに旋法が普通のと違う。普通の長調とか短調とかじゃないやつ。
教会旋法かな。違う時代とか違う文明文化っぽい味を出したいときには、こういうのを使うのが手っ取り早い。
ミクソリディアっぽくもある。しかし終わり方を考えると・・・わかんない。
うーん・・・・と唸ってて、気がつきました。書いてあるじゃん。

アン=センナス、という旋法の歌、a song in the mode that is called ann-thennath、と馳夫さんが仰ってます。

共通語で歌うには難しいという、アン=センナス、映画のおかげで本来のエルフ語で聞かせていだたきました。
なんと幸せなことよ。皆さん、幸せを噛みしめましょう。

原作では、何かお話して!ってせがむホビットたちに、荒野で野伏の首領が聞かせてくれる。それもホビットにわかるように共通語に直して、それを本来のエルフの旋法っぽくして、歌ってくれるのだ。それは大昔の、6千年も7千年も前の、恋の物語。そしてその歌の主人公たちの血を彼は遠く遠く受け継いでいる。こんなカッコいいことは、この世にそうそうあるもんじゃない。すごい設定じゃないか!カッコ良すぎて眩暈がしそう・・・
それでまた、その首領の彼女も、その歌の主人公たちの子孫なのだ。ドゥネダインの族長は、ずっと年下のホビットたちが少しでも気が紛れるようにと、歌って聞かせる。アラゴルンとアルウェンの事情なんてホビットたちは知らないけれど。

原作には、he began not to speak but to chant softly、って書いてある。話すのではなく、穏やかに歌い始めた。sing じゃなくて chant なのもポイントだ。
トールキンアンサンブルのこの歌はすごく勇壮な感じがして派手。
原作の記述からいけば、ここの歌は、映画での描き方の方が合ってるんだと思う。


さて、そのann-thennath とは、どーゆー意味か。
ann は、long、長い。(LR348)
thent は、short、短い。(LR388)
athは、複数。アルゴナスとかについてるやつ。

長いよ、短いよ、またまた長いぜ、短いぜ、あらまた長いわ、短いわ、っていう感じ。

ってことは、これは音階的音程的なことより、リズム、拍子の話らしい。

そして、映画のこの歌は、ちゃんと ann-thennath になっている・・・・・!!
これってすごいと思う。
PJの映画って、パッと見もすごいけど、細かいことに気づき出すと、ほんっとに凄かったのだ、というのがますますよくわかる。

グワは五線に書いてからこれに気づいて、ひぇっ?!と叫び、おぉぉ!!と感動した。スタッフ一同あらゆる分野で凝り性が集まってるのは知ってたけど、これもそのひとつだったのだ。
これはちゃんとアン=センナスの意味がわかっていて、こうなっているのに違いない。

おかげでアン=センナスを体感出来た。これもすごいことだ。トールキンがこの歌を聞いたら、何て言っただろう。ほめてくれたかな。きっとね。
アン=センナスという形式の1つの可能性を示してくれたのが、この曲だ。

で、はい、楽譜↓ プリントしたい人はこちら。自分で意味など書き込むとよろしいかと。



ほら、アン=センナスになってる。

これは変拍子で、こういうのに慣れてない人には一見メチャクチャに見えるだろうけど、こういう曲はよくあるから、そんなに珍しくはない。採譜する人、鷲によって、多少は書き方数え方は違うと思いますが、ま、こんな感じ。
元の楽譜がどういう小節分けになってるかはわからない。一段目の4分の3、4分の2はまとめて4分の5かもしれないし。でも三段目の頭の4分の1のところは、前のところとくっついて4分の5にはならない。これは絶対一拍目になるはずだ。なーんて全然違ったりして。でも変拍子なのは間違いない。
これはシンフォニーには入ってたのかな。劇場版ではカットだったからシンフォニーでもカットかな。もし入ってたのなら、東京公演でステージに載った人は楽譜持ってるんだよね。いいなぁ。

まぁその、エルフの楽譜は、ずっと昔の話だからこういう五線でト音記号とかじゃなかったわけで、ここは長く、ここは短め、っていう記号がついて、音程の上下がなんとなく書かれただけのものだったかもしれない。トールキンが音楽にうるさい人だったなら、エルフの楽譜の書き方まで凝って作っただろうな。凝って作っといてくれればよかったのに。奥さんはピアノ弾く人だったんだから。

で、ヴィゴの歌ってるこれは、流れとしては、前半と、O hon〜からの後半とは、ほぼ動き方同じ。なんとなく書かれているものではないのが、よくわかる。全て計算済みなのだ。

で、拍子というのは、体で感じたときに、揺れたくなる周期を表す。ノリってやつね。手を叩きたくなったりする周期。
それがこの歌は、8分の3がちょいちょいと挟まって、前後とノリ方が変わり、短い周期と長い周期があって、ノリが長く、短く、長く、短く、また長く、まさにアン=センナスなのだ。なんと素晴らしい。

こういう変則的な拍子の揺れは、慣れるととても心地よい。
みんなも練習して、アン=センナスのノリ具合を楽しもう。

で、上の楽譜、最後のthiliol のところ、ヴィゴは、なんか微妙な音程になって♭が並ぶ。えー、そうなるのか?おかしくないか?王さまはオンチか?と思ったんだけど、でもこうなっている。これでいいんだろう。大昔の歌い方だから。21世紀の感覚とは違うのだ。

4段目のthiliol、これ↓もきれいだと思うんだけど。
っていうか、まともな普通の調ならもっと低くなる。2段目と同じ終わり方。

サントラ、この後に続くオケの和音を聞くと、ヴィゴの音程でいいんだと思う。その方が後ろに普通につながるから。角笛の音の高さも前後の音楽と合わせてるんだから、この歌の高さも無意味なものじゃないだろう。

一方、映画では、その問題の thiliol に入る前にフロドに止められて会話になって音楽はないから、その後の和音とのつながりは関係ない。歌が聞こえてくるあたりでは、ちゃんとBGMと和音が合っている。音楽の中からヴィゴの声が浮かび上がってくる。


ちなみに吹き替えでは、歌も吹き替えてて、発音も何かちょっと違うし、リズムもメロディも違う。吹き替えのアラゴルンはリズム感がイマイチ。他のシーンでもそうだけど、シンダリンは苦手らしい。
吹き替え作業のときは、ちゃんと元の曲がどうなってるのか問い合わせて練習するか、それかヴィゴの声のまんまにすればいいのに。
ヴィゴはねー、俳優さんってだけじゃなくてミュージシャンでもあるから、こういうところでも音楽が自然に流れる。


楽譜読めない人は、ぶーたれてないで、これで練習↓吹き替えのようにならないようにおけいこ、おけいこ。



△ これもありかもバージョン


▽ これもありだなバージョン



エルフ語ってねぇ、流れがとっても綺麗だよね。歌的な言葉だ。トールキンの感覚は、花や小鳥や星のような美しさで満ちている。


口が回るようになったら、鷲の弾いた伴奏でどうぞ↓

王さまの歌ってるバージョン。最後の転調はかなり無理矢理。


△の方、これもありかもバージョン



ま、王さまも割とてきとーだろうから、みんなもある程度流れを覚えたら、音程リズム拍子など、お好みでてきとーにどうぞ。

星空の下、これを歌って太古の恋に想いを馳せてはいかがでしょう。うーん、ロマンチック☆


セキュリティ関係?で音ファイルが表示されない人はこちら。
メロディのMidi その1  

グワの伴奏mp3 その1