ルシアンとベレン

映画FotRのSEEで追加になったアラゴルンのシーン。
世話の焼けるホビットを4人も連れて、馳夫さんは大変。
おっきな鹿獲ってきたりして、あの鹿はあの後どうやって食べたんだろう。まさか全部平らげたわけはなかろうし、残った分は非常食用に干し肉?薫製?皮だってもったいないし、使わなきゃねぇ。でもナズグルに追われてる中、薫製作ったり皮を持って歩ってる場合じゃないか。皮とか骨とかは後で見つけられるように隠しておいたのかも。野伏仲間が見つけて使うのかも。ってことにしとこう。

で、アラゴルンは、ホビットたちを寝かせて、自分は夜番。そして何か、ふんふんと独り言。え?歌ってるのか。それは失礼しました。
だってー、ヴィゴは、じゃなかった、アラゴルンは、ぼそぼそもごもごで、何言ってるかわかんないし、メロディも不思議だし、まぁでもなかなか雰囲気はあって、もうちょっと聴きたいな、ってとこで不届き者のフロドが邪魔してくれて、あ゛〜〜!!どーしてそこで声かけるのさ!!黙って寝てろよっっ!!とか思ったり・・・

映画では、鹿を担いでいるとき、まだ下に降ろす前に、もう歌は始まっている。よーく聴いてみよう。でも初めのところはほとんどわからない。次のフレーズはよっく聴くと聞こえる。ヴィゴの顔が映ったところでまともな音量になり、で、バギンズのバカ息子が声かけたから、途中で終わっちゃう。結局、なんかよくわからない。あーあ。

ただでさえわからないのに加えて、不親切きわまりないことに、字幕も何も出ない。ますますさっぱりわからない。
あの歌は一体何がどうなってたのか、ずっと気になってて、気になって数年経ったところでサントラの完全版が出て、ようやく全貌が明らかとなりました。バンザイ!! めでたいですねぇ。

このシーン観たことない人は、映画一作目のSEEを観よう。全部ハッキリ聴きたい人は、これに入ってるよ。

あれは原詩はトールキンのもので、それを映画でアラゴルンが歌うにはやっぱエルフ語でしょう、ってことで、わざわざシンダリンに訳したらしい。

ルシアンとベレンの物語は、Lay of Leithianといって、HoMEの3、LBに載っている。どひゃ〜〜っ!と長大なる歌物語で、ページをめくってもめくっても延々と詩が続く。
シルマリルの物語にもルシアンとベレンの話はあるけどHoMEと比べれば短い。そして指輪の本編でもちょいと出てくる。
この、ちょいと出てくるのは、きっとトールキンは指輪の話にもこれを入れたかったんだよね。トールキンにとって大切な大切なものだったルシアンとベレンの物語、その一端を、どうしても入れたかったんだろう。

原作、旅の仲間の第11章、闇夜の短剣の終わりの方、ホビットたちにせがまれてアラゴルンは歌う。Lay of Leithianから見ればほんのちょっとだけど、それでもなかなか長い。トールキンは詩を書くのはお得意で、素晴らしくきれいに韻を踏んだ詩がすらすらと出てくる。

このルシアンとベレンの詩は、旅の仲間においては9連あって、ここで出てくるのは8連目の後半。
原詩 瀬田訳
Tinuviel the elven-fair,
Immortal maiden elven-wise,
About him cast her shadowy hair
And arms like silver glimmering.
エルフの美女なるティヌビエル、
命つきせぬエルフの乙女、
陰なす髪は、ベレンをつつみ、
双の腕は、銀のように輝いた。

Tinuviel の u の上には点ついてます。

きっとアラゴルンは1連目からずっと歌ってたのだ。ずーっと歌ってもうすぐ終わりってとこで、フロドに中断させられたのだ。なんということだろう・・・!

で、それをシンダリンに訳すと、こうなるらしい。ふーん。
Tinuviel elvanui
Elleth alfirin edhelhael
O hon ring finnil fuinui
A renc gelebrin thiliol

え、聞き取ったのかって? いや、そうじゃなくて、これは製造元で配布されている。
大体さ、いくらちゃんとサントラに入ってるからって、やっぱヴィゴだもの、いやアラゴルンだもの、もごもご言ってて聞き取れるわけがない。
こちら、ANNOTATED SCOREをダウンロードして、17ページを見てみよう。

そのPDFでは、原詩の elven-fair の間のハイフンがない。それからシンダリンの3行目、初めの「O」がない。ゼロじゃないよ。オーね。おー!!

映画でまともに聞こえてくるのは、このオーから始まる後半で、オーとは about のこと。英詩と対応している。だから絶対ここはオーが入る。


アラゴルンはフロドに「そのひと、どーなったの?」って訊かれ、ルシアンは死んじゃったんだと答える。女っ気のないフロドになんか説明したって、この切なさはわかりっこない。さっさと寝ろと言う。まったくだ。
大体、小学生でもあるまいし、なんで黙って聴いてられないのか?彼女が誰でどうなったか知りたきゃ、もっと先までおとなしく聴いてりゃいいではないか。

しかしフロドは、シンダリン聞いて、すらすらわかるんだなぁ。Who is she? って言えるんだもん。すごいなぁ。あんなボソボソ歌ってるの聞いて何言ってるのかわかるなんてすごい。

原作で、フロドはエルフ語は少しはわかる。ギルドールたちと出会った時もちゃんとエルフ語で挨拶出来たし。でもルシアンの、あの詩を理解出来るとは思えないけど。
裂け谷では、ドゥナダンの意味をビルボが講釈する。ドゥン・アダンもわからんのかね?とか言われる。ドゥナダンがわかんないのに、あの詩がわかるわけないではないか。

それとも映画ではフロドはシンダリンペラペラなのかな。でもモリアの扉で、友はエルフ語で何ていうの、ってガンダルフに訊いてた。メルロンを知らないレベルで、あの詩がわかるわけない。
どうも設定が一貫していない・・・ま、映画は、あちこちに見られるそういう「てきとー」なところがまたいいのかもしれない。


何にせよ、人間のベレンを愛したルシアン、永遠の命よりも愛を選んだルシアンは、アルウェンとダブって見え、アラゴルンはあの表情・・・・あー、王さま、しっかりしてくれよ!そりゃねぇ、ダブって見えるけどねぇ。トールキンはそのつもりで書いてるからね。
切ないね、アラゴルンよ。夜だし。寒いし。ますます切ない。あぁ。


さて、切ないなんぞと言って、しょぼしょぼしている場合ではない。アラゴルンの歌うシンダリン、何のことやらわからない。やれやれ。
しょーがない、分解してみよう。

読むのめんどくさい人は、飛ばして曲の方へどうぞ。
でも一応、この語はこういう意味、って何となくでもわかってた方が歌は楽しめる。



歌詞分解!