はい、こたえ。

トロルは3人。 名前は指輪本編だけ見てもわかんない。ホビットの冒険も読まなきゃね。

アラゴルンが叩いたのは3人いるうちの身をかがめたトロル。3人とも立ってるんだけど、その中の
stoopしてるやつ。

で、ホビットを読むと、トロルはウィリアム、トム、バートの3人で、朝になって石になっちゃったとき、ウィリアムはstoopしてて、あとの2人はウィリアムを見つめてた。

だからアラゴルンが叩いて棒きれを折っちゃった相手は、ウィリアム。キーワードは、stoop。

トムとバートは、どっちがどっちかわかんないんだよ。ウィリアムは得してるよね。屈んでるのがウィリアムだから、絶対わかる。 でも腰は痛くなる。(爆)

じゃ、絵を見てみようか。

まずはTed Nasmithの絵。

原作の通り、ウィリアムが屈んでて、あとの2人はそれを見ている。
みんな服着てるね。服ごと石になったらしい。

これはこちらにあって、絵をクリックすると左のより大きくなります。



一方、Alan Leeの絵のトロルは、すっぽんぽん。
石になったとき、服着てたはずだから、服は石にならなくて、そのうちボロボロになって飛んでっちゃったんでしょう。

でもね、本には、服も石になったような記述もある。トロルの岩屋のドアの鍵が、「ひじょ〜にラッキー♪なことに、石になる前に、ポケットから落ちた」ってところ。ってことは、落ちなかったら鍵もろとも石になっちゃったんだろうか。
だとすると、このすっぽんぽんの絵は、原作とは違うということになる。

ポーズは原作の通り。屈んでるウィリアムをあとの2人が見てる。

映画の石化トロルはアラン・リーのデザインを元にしたものらしい。でもポーズは違っちゃった。
あれは動いたんだよ。1人が立って下を指さしてて、あとの2人は低い姿勢。ちょっと本の記述とは違うように思える。
固まったふりして実は後から動いたんだ。

こちらにある絵をクリックするとだいぶ大きいのが見れます。

  じゃあ今度はトールキン先生の絵を見てみよう。
  The Three Trolls are turned to Stone. これもTTTだ!カッコいい!

あれぇ? 立ってるの、ひとりじゃん。
先生、違うじゃん! 
1人は座ってて、1人は膝ついてて、1人は立っている。
これは3人ともstandしているとはいえない。
朝日が射してるから、もうこの瞬間には固まってるはずだ。

なんか映画のトロルのポーズと似てるよね。この絵も参考になってたのかもしれない。

後ろにガンダルフがいるでしょ。よく見ると左の奥にビルボがいるよ。茂みに引っかかってんの。
岩波の瀬田訳では「林のこずえにとんでいきました」、「木の上で身動きもできず・・・」ってなってるから高い木の上みたいだけど、原文はbushだから、この絵みたいな感じなわけだ。
このビルボがふっとばされた先については原書房の山本訳の方が合っている。

さぁ、ウィリアムは右か左か、どっちかねぇ。右のトロルはstoopしてるかどうかは微妙かも。stoopって、前傾ってことでしょ。でもあとの2人が見つめてるから、右のがウィリアムなのかも。

ホビットの記述では、standしてるとは書いてないんだよ。ウィリアムは屈んだままで、あとの2人はウィリアムを見つめたまま固まっちゃいました、としか書いてない。だから、トムとバートはどんな姿勢でもいいわけだ。

この絵は、ホビット出版のときに挿し絵として描かれたものだから、その後の指輪物語のときにまたこれが登場するとは先生自身わかってなかった。
だから、ポーズが違ってもよしとしよう。 っていうか、やっぱ動いたんだよ・・・



さて、そのウィリアムの苗字は何ていうかっていうと、ちゃんと本に書いてある。

屈んでいるのはウィリアム。 ここまではすぐわかる。
で、そこら辺よりもう少し前で、バートとウィリアムがケンカをするところでバートがウィリアムを「ビル・ハギンズ」と呼んでいる。ビルって、ウィリアムの愛称というか呼称というか別称というか略称というか、まぁそういうもんです。英語の辞書見れば載ってるね。

ということでクイズの答え、ウィリアムくんのフルネームは、「ウィリアム・ハギンズ」でした。

なんでウィリアムがビルになるのか? 全然違うじゃないかっっっ!とお怒りの皆さま、全然違わないのです。
ウィリアムはウィルとかウィリーとかって呼ばれる。ウィルを唇近づけて何回も言ってみよう。ほーれ、ビルになったでしょ。
ってことで、ウィリアムは、ウィル、ウィリー、ビル、ビリー、などなどと呼ばれるのでした。

サウロンさんもびっくりのお金持ち、ビル・ゲイツ氏も、ほんとは、ウィリアム・ヘンリー・ゲイツさん。
才媛の奥さまヒラリーさんに頭が上がらない42代米大統領ビル・クリントンは、ほんとはウィリアム・ジェファーソン・クリントンさん。

こういうのって、たくさんあって、日本語で育つとどうしてそうなるのかわからないのも多い。
日本語だとさ、例えばフロド→ふーちゃん、ガンダルフ→ガン爺、アラゴルン→あっちゃん、ガラドリエル→ガラさま、エルロンド→おでこ・・・いや、ちがった。
ま、その、普通は一番初めの音を使うことが多い。それで、その音は普通は変化しない。

英語の場合はエルフ語みたいにどんどん音が変わっちゃう。
マーガレットはメグになる。Margaretを略してはじめだけ言うとMagで、母音がちょっとeにずれるとメグになる。
ロバートはボブ。 ぜっんぜんちがうっっっっっっ!!!!!! お怒りの皆さん、落ち着いてください。
RobertのはじめのRobを唇をくっつけて言うとボブになる。
これは、ウィリアムがビリーやビルになるのと同じことで、こういうのは、どうもバビブベボ系にいきやすいものらしい。

で、はじめの音だけじゃなくて、中間とか終わりの方を使ったりもする。
エリザベスなんかもうムチャクチャで、Elizabethのどこを取ってもおっけーみたいな感じ。
初めの方はエルザ、真ん中辺でリサ、リズ、終わりの方でベス、ベッシイ、ベティ、とかいろいろ。
こうなっちゃうと、要するに「けんいちろう」くんの呼び方が、けんちゃんになるのはいいとして、「んい」ちゃんとか、「ちろ」くんとかもありって感じ。ちょっと違うか。でもそんな感じ。

こういうのはたくさんある。本とか映画とかで、あぁこう言うんだな〜って気がつくときもある。

今回わかんなかった人、Billを辞書でひいてみれば「ウィリアムの愛称」って載ってたはず。何だかんだ言って、基本は辞書ですな。

あのトロルたち、結構立派な名前・・・ ウィリアムなんて、「意志、兜」とかって意味なんだよ。いいんだろうか。トロルなのに。 
兜って、ヘルメットのヘルムさ。ほら、ヘルム峡谷のヘルム。 ウィリアムはドイツ読みするとウィルヘルムだからね。
(よくわからん人はその他語講座のローハン語の人名のヘルムをどうぞ)

トールキンは、あのくだりを書いたとき、きっと「ビルボ・バギンズ」にひっかけて、「ビル・ハギンズ」にしたんだろうね。ほとんど同じだもん。「ビル・ハギンズ!」ってセリフを入れたかったから、ウィリアムでないとならなかったんだよ。

「ビルボ・バギンズです」、ってビルボが言ったのを聞いて、普通ならウィリアムは「へっ???」って思ったはず・・・ でも、にぶいから即「へっ???」とはならなかったのかもしれない。
で、バートが「ビル・ハギンズ」って言うのを聞いて、普通ならビルボは「ん??」って思ったはず・・・ でも、それどころじゃなかったから気がつかなかったかもしれない。

ウィリアムはビルボを食べないで逃がしてやるべぇ、って言う。だから、ウィリアムには慈悲の心があったのでは、っていう意見があって、トールキンは手紙の中で「トロルにそういうものはない」って答えてる。あの時、ウィリアムがビルボのことは放っておけと言ったのは、おなかがいっぱいだっただけなのさ。
トールキンはその手紙は出さなかった。いろんなことをすごーく長く書いたのに、っていうか一生懸命いろいろ書いたから、これは手元に置いといた方が自分の役に立つと先生は思ったんだって。コピー機ないしさ。もう一通書くのは大変だもんね。 出さないことにした!これはわたしのものだ!!って感じ。

トールキン先生は、その手紙に「ウィリアムという名前にしたのはまずかった」って書いてる。
この出さなかった手紙は1954年のもので、この年は指輪物語が出版されている。ホビットの冒険は、1937年の出版だから、この時よりだいぶ前のこと。
ウィリアムって書いた頃は、後年指輪本編の中にも石化トロルが登場して、トロルという種族を他にも描くことになって、ミドルアースがもっともっと鮮やかに姿を現して、しまいには映画化までされてニュージーランドの会社がトロルのフィギュアを作るなんていう凄い展開になるとは、先生はもし未来からやってきた人に教えてもらったにしても信じられなかったに違いない。

はじめに書いたときはウィリアム、バート、トムっていう普通の名前でOKだったのだ。
なんといっても、ホビットは児童文学のつもりで書いたんだから、品のないトロルっていう生き物が馴染みのある普通の名前で出てきて、楽しかったのだ。

サム・ギャムジーって人は実際にいて、指輪を読んでトールキンに手紙を出して、トールキンはすごく喜んでサイン本を送ってあげたというエピソードがある。
ウィリアム・ハギンズっていう人もいる。ウィリアムはよくある名前だから、同姓同名がいても不思議ではない。
実際にいたウィリアム・ハギンズさんは、英国の有名な天文学者で、サーの称号も持ってて、とてもトロルと同じ名前とは思えない方だった。生きてらしたのは、1824-1910年。後年、同じイギリスの学者の小説に自分と同じ名前のトロルが出てくるなんて、考えつきもしなかっただろう。
今生きてる人にも同姓同名は何人もいるんだろうね。

で、要するにトロルのウィリアムくんは、トロルなのに、トールキン先生があんまりよく考えないで名前をつけたので、そういう立派な名前になったのでした。 超ラッキー、なのでした。 でも名前負けしたのかもしれません。




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