惑星中、ダントツで目立っているのはエアレンディルで、他はさっぱり出てこない。シルマリルの物語のカルニルとかルンバールとかは、火星ですよ!赤いんですよ!誰それがそれを見てどうこうしたんですよ!、って話に直接加わるわけではなく、ただ名前が並んでるだけだ。

で、トールキンのメモがなかったなら、惑星だとはわからなかった。
そして、トールキンのメモがあっても、惑星なのかどうかの議論となる。

惑星というのは、自分で光ってないから、そんなによく見えない。
でも金星はお隣だし、近いし、明るく輝く。
火星もお隣で、近くにいるときには感動的に大きく、夜空でもすごく目立って、肉眼でもハッキリ見える。ほんとに赤い。お隣は赤いんだなぁ、っていうのを実際目にすると、何かこう、心に響く。でも軌道の向こう側に行っちゃうと、ちっちゃくなってよくわからない。
そして海王星だの天王星だのは、まず見えないと言っていい。肉眼では無理。
それに水星だって見えないな。金星と同じ内惑星で朝と夕暮れしかチャンスがないのに加えて、金星より太陽のそばだから、ますます見えない。グワは水星は見たことない。

ヴァルダさまがキラキラしたのを空に配置して、本にはその各キラキラの名前が書いてあるのだから、見えないような星の名前が並んでるわけがないだろという考えもある。

MRの解説にも、このことが書いてある。肉眼じゃ見えないとか、エルフの視力がどうとか。
近眼だとねぇ、いくら明るい星でもメガネかコンタクトがないと見えない。近眼のエルフなんていないんだろうな。うっかりガラさまに老眼鏡なぞ差し出したら・・・・・あの映画の水鏡のシーンよりこわいことになろう。


で、まぁ、世の中いろいろ意見があるけれど、別にごちゃごちゃ言わずとも、そのメモ通りでいいんだと思うな。
きっと先生は、水星、火星、木星、土星、といった有名どころの惑星たちの名前をエルフ語で並べてみたかったんだろう。そりゃ並べてみたいさね。見える見えないは別として、実際目にしたことがなくても、誰でも知ってる星だから。
エルフ語で書いてみたかった、っていうこととは別に、惑星と恒星をちゃんと区別したかった、ってのもあるんだと思う。だからちゃんと名前つけて並べたんだよ。


大体、見えないのが入ってるのはおかしいという議論自体、おかしいのだ。

お話として考えると、ヴァルダさまがいろいろと星を作った頃は、地球は球体ではなく、世界は今とは違った。だから、水星の軌道が太陽のすぐそばで見づらいとか、天王星は遥か彼方で遠くてよくわからないとかいうのは関係なかったはずなんだねぇ。

その頃は、どれもよっく見えたのさ。エレンミーレもネーナールも、空で光り輝いていたはずだ。だって本に名前が並んでるのは、明るい星なんだから。

シルマリルの物語、第3章、星の名前が並ぶところは、まず惑星が並ぶ。カルニル、ルイニル、ネーナール、ルンバール、アルカリンクウェ、エレンミーレ。
これらはテルペリオンの銀の雫で出来ている。だからテルペリオンは惑星の光の中にも生きているのだな。
で、ヴァルダさまがテルペリオンの雫から創った惑星の皆さまは、新しい星なのだ。
new で brighter な星たち。

それまでも星はあった。innumerable な星々があった。
でもそれは、faint で far だった。

brighter なんだから、カルニル、ルイニル、ネーナール、ルンバール、アルカリンクウェ、エレンミーレは、それまでの星たちより明るかったんだよね。

わかります? それまでにあった星たちは、たーくさんあったんだけど、なんかハッキリしなかったのさ。
それでヴァルダさまは、ハッキリしたのを作ろうと思ったのさ。

そろそろエルフが目覚めるだろう。星がキラキラしてなきゃならない。
だからヴァルダさまはもっと輝かしい星を空に置こうと思って、テルペリオンの露を手に取る。

そして出来たのが惑星たちだ。

その後ろに並んでいる名前は星座。 ヴァルダさまは元々あった ancient な星たちを集めて、えーと、そうね、こんな感じだわね、ってことで素敵な並び方にして、星座として空にセットした。

つまり、シルマリルの物語、邦訳の新版なら98ページにある星の名前は、前半と後半は全く違う。
エレンミーレまでと、ウィルワリン以降は、かなり別物なのだ。

トールキンが、惑星と、その他の恒星から成る星座をはっきり区別していたことが、よっくわかる。

惑星として名付けられた星たちは、新しく出来たもので、それまでは存在しなかった。

新しい星たちは、輝かしく、若々しく、空を彩ったことだろう。カルニルは赤く、ルイニルは青く、アルカリンクウェはひたすら煌めく。

そして地球が球になり、太陽の周りの軌道に沿って動き始めたとき、その新しい星のグループは太陽系の惑星となって組み込まれた。
やっぱ、このグループは特別なのだ。他の星たちとは違う。
そして遠い軌道をとるものは見えにくくなり、内惑星もまた見えにくくなった。

普通、惑星というのは、内側から順番に呼ぶ。すいきんちかもくどてんかいめい。あ、めいはないのか。あ、冥王星人さんたち、怒らないで!(←まだ言ってる)

で、本に並んでいる順番、カルニル、ルイニル、ネーナール、ルンバール、アルカリンクウェ、エレンミーレがその普通の順番じゃないのはなぜか。
それはヴァルダさまが作ったときは、軌道なんか関係なかったからだ。

彼らの名前は、赤、青、水、影、輝、宝、って感じ。いいねぇ。
テルペリオンの銀の雫はさまざまな表情を見せるのだな。テルペリオンの雫だからって全部銀にしないところが素晴らしい。

そして軌道をとるようになったとき、煌は内側、赤はお隣、青とか水は外側へ行った。誰がどこへ行くか、くじでも引いたのかもしれない。そして今は、宝、赤、輝、影、青、水、って順番で並んでいる。宝と赤の間に金星と地球がある。


トールキンの神話では、太陽と月は、カルニルさんたちより後に出来たことになっている。一番後はエアレンディルだ。金星が一番若い。
しかしまぁ、長い歴史の中で出来た時期としては似たようなものだとすれば、惑星も太陽も月も同じく新しい。
その他の星々はもっと昔からあったということになっている。

それは、実際の宇宙も同じ。
太陽系より古い星はたくさんある。夜空に見える星たちの多くは太陽より古い。・・・って、出来たところを見てたわけじゃないけどさ。何億年とか何十億年とか、そんなの科学者さんたちだって見てたわけじゃないけど、一応星の年齢はよく語られる。

ということで、トールキンワールドでは、我々の太陽系のファミリーは、よその星と比べると新しく、地球以外の源は全て二本の木という設定になっている。


トールキンの太陽系ファミリーは、成り立ちが他の星たちとは違う。わざわざヴァルダさまが追加で作った星たちだ。

先生はちゃんと考えて書いてたのだ。月の動き方がおかしいとか文句を言っても、やっぱり先生はすごい。


地球を囲む、太陽、月、惑星は全部、二本の木の光で出来ている。

二本の木、ラウレリンとテルペリオンは、命の喜びそのものだった。

命は喜びであり、喜びは光であり、光は命だった。

木が死んでしまったあとも、ラウレリンとテルペリオンの光は空にある。

地球を囲む、太陽、月、惑星は全部、二本の木の光なのだ。

これって、すごい。

ラウレリンとテルペリオンに囲まれて、地球は廻る。

太陽系ファミリーは、二本の木♪ 
地球はその光に囲まれ、らんらんらん♪って感じで公転しているように思える。

周りが全て二本の木というのは、我々の世界が大切な大切なものだからなんだろう。


評論社の新版シルマリルのカバーの絵はウルモさんになってるけど、二本の木の方がいいのにな。あれは担当者が話がわかってないのに違いない。
そりゃウルモさんもヴァラで偉いんだけどさ。でもヴァラを表紙にするんならやっぱ頂点のマンウェでしょうに。あれでは海上保安庁か水産庁の長官が日本国の代表になってるようなものじゃないか。なんかおかしくないか?

表紙の文句は置いといて、とにかく、ヌメノール沈没の大惨事のとき、世界は球となり、ヴァラールの地、ヴァリノールはこの世と切り離され、別なところに移されて、直接は行けなくなってしまった。行けるのはエルフの船だけさ。特別なんだもん。いいな。他の船はいくら航海しても地球を一周するだけ。

でもさ、地球を一周するだけのつもりで出かけて、気がついたらヴァリノールにいた、なんていうのもまた困るよね。ちょ、ちょっと待っておくんなせいよ、あたしゃそんな気はなかったんで・・・とかってマンウェさまに直談判しても戻してもらえないだろうし。
うーん、世界一周したいエルフはどうするんだろ。あ、エルフの船でなきゃいいのか。じゃあ人間の船に乗ればいいんだ。やってみたエルフはいるのかな。ヴァリノールへさよならする前に、世界周遊の旅はしといた方がいいもんね。そのくらいの茶目っ気がないと面白くありませんぜ、エルフの旦那方!

で、えーと・・・・そうそう、世界が変わっちゃったって話。
それほどまでに世界が変わってしまったあの時、宇宙の在り方もまた変わってしまったのだろう。
夜空で他の星よりも明るかった惑星たちは、各自の軌道を動き始める。

ってことでですね、よく見えない星に名前がついててもいーんです。はい。第三紀以降、よく見えなくなっただけなのです。


我々の生きている星系、太陽系。 みんなのホーム、太陽系。
トールキンの世界でも、うちの太陽系は、他の星系とは違って特別な存在で、ちゃんと形を成している。

それがとてもうれしい。


古い星の皆さん