評論社 指輪物語 追補編 固有名詞便覧
指輪本の索引です。ただの索引じゃなくて、解説がついています。これはトールキンが書いたものではなく、評論社刊独自のもので、間違いや、誤解されるような書き方がいろいろあります。

まぁ別に大したことじゃないのは、いちいちここで取り上げて突っつかなくてもいいんだけど。
でも、大したことあるのもあるからなぁ。ちょっとそれはひどいんでないかい、ってのもある。
人の間違い探しはよくない。しかし、そのままにしておくと、尚よくない。だからやっぱり突ついてみることにした。

いいかげんな内容の関連書はたくさんあるから、これが追補編についてなくて独立した本で、関連書のひとつであればまぁ放っておいてもいいんですけど。
でも追補編にどどんとついてて、その結果、これは日本語での読者にとっては公式のもの、オフィシャルの索引、正式の解説になってしまっている。

指輪の訳本についていれば、普通はそれが絶対正しいと思う。
そして何の疑いもなく、ごっくんと鵜呑みにして、説明書きを写してデータベース化してWebサイトに載せてる人もいる。それを読んだ人はまた誤解する。どんどん悪循環になる。

今現在、日本語で読める指輪物語は、この評論社刊しかない。
今後、他の訳が出るまでは、これしかないんだから、もう少しちゃんと取り組んでほしいな。でないと、100年、200年後、一番初めの日本語版の本はこんなにひどかったんですねぇ、って言われることになる。それもかわいそうだ。

この索引を書いた人は、トールキンの世界をあまり理解していないらしい。
もし、ぐわが、こういう固有名詞便覧を作ってください、って言われたら、仕事は全部休みにして何ヶ月もかかりきりにならないと、とてもじゃないけど仕上がらない。何ヶ月じゃ済まないかもしれない。解説をつけるとなれば、いろいろ調べなきゃならないし、わかってるつもりのことでも確認をとらなければならない。

いろいろ指摘しているのはグワだけではない。でも直らない。
印刷物はWebサイトとは違う。本というのはまた別のものだ。物体として残るもので、しかもそれが指輪の本に付属させるものとなれば、ちょっと関連本を出すのとは話が違う。お気楽に引き受けてお気楽にてきとーになってはいけない。
読者はお金を払って買うんだからね。文庫だって全部揃えれば結構なお値段になる。買っていただく、っていう認識を持ってほしいな。

いろいろ並べてありますが、下に挙げた中には、別にどうってことではないものもあります。
このコーナーを作ったから一応目についたものは書いただけです。
だから、どう考えても変なのには をつけときました。がついてないのは読み飛ばしても結構です。
いくつも★★とついてるのは本格的に変なやつです。自分の本、直しておきましょう。

それから、ぐわは、あの索引をとことん読み込んでるわけじゃないし、指輪の世界をとことんわかってるわけじゃないので、まだ他にもあると思います。ん、って思っても調べてないのもまだあるし。絶対まだあるな。
何か見つけた人は、教えてね。


アイグロス
ギル=ガラドの槍。「つらら」の意味とある。それでもいいけれど、つららとはしない方がいいと思う。

このアイグロスは、指輪物語中ではAiglos、シルマリルの本ではAeglosと綴られる。で、植物にもアイグロスAeglosというのがあって、同じ名前と言われている。

シルマリル索引(これは原書にもある)には、Snow-point、訳書では「雪の切っ先」の意味となっている。

植物のアイグロスは、「雪の針」という意味。Snowthorn。カッコいい。
終わらざりし物語に出てくる。訳本では、グワの持ってる初版ではthornを穂としているけれど、重版の際に棘に直されたみたい。(終わらざりし本〜河出書房刊は間違いをどんどん直しています)
グワイヒアは針がいいと思う。棘だとそのまんまだから、針の方が詩的かな〜、とか思って。
このアイグロスはfurze、ハリエニシダに似ているということで、ほら、日本名も針だし。トゲエニシダじゃないし。
ハリエニシダって、トゲトゲたくさんある木で花は黄色。それと似ているアイグロスは白い花。だから、雪なんだね。

それで、ギル=ガラドの槍は、この雪の針と同じ名前で、つまりこの植物のトゲという意味を掛けているんだろうと言われている。槍一本の名前にしても、トールキンのネーミングは詩的なのだ。

雪という文字はやっぱり入れるべきと思います。glossとは雪のこと。
つららじゃあ、ただの氷だし、屋根から下がってるのが目に浮かんでしまう。すぐ折れるし。

シルマリル本の訳とも合わせた方がいいから。

映画でギル=ガラドが持ってたのは真っ直ぐな槍じゃなくて刃が反っていた。あの形状だと名前と合わないのかもしれません。


アンドゥリル
クウェンヤ語でナルシルという、って書いてある。そりゃそうですが、これだとアンドゥリルとナルシルは同じ意味みたいに見える。でも意味は違う。
鍛え直される前はクゥエンヤでナルシルという名だった、ってこと。

アンドゥリルはゴンドール復興の象徴で、元はナルシルって名だったけれど、鍛え直された後はナルシルのまんまじゃなく、アンドゥリルと改名された。新たな時代の王の力となるには、新たな名が必要なのだ。
ちなみに、アンドゥリル、西方の焔の西とは、地域的方位的西であって、落日の意味ではないとトールキンは手紙に書いています。


アンバローナ 
エント語で、と書いてある。でもこれは、クゥエンヤのはずだ。
ambaron, ambarone は、東、日の出、を指す。


イヴンディム湖
間違いじゃありませんが。
そのすぐ東にフォルノストがあった、となっている。
どういう基準なのかにもよるから何とも言えないけど、普通の感覚であれば、「すぐ」東じゃないと思うな。まぁそんなに無茶苦茶遠くはないけど。
でもすぐそばじゃないな。


ヴィルヤ
これを「風の指輪」とするのは意訳ということで別に構わない。それは訳者さんのセンスだから。「気の指輪」とか「空の指輪」とかより風の方が綺麗だし、元々の語幹の意味とも合う。

でも、vilとは風のことである、と定義してしまうと、windと誤解されそうだ。
ヴィルは、気とか空とかの意味。windは別の単語がある。ナルヤがFire、ネンヤはWater、ヴィルヤはAir。
語幹wilには、flyとかfloatの意味があるから風の指輪でいいけれど、このwilは、世界を層に分けて考えたとき、星のある層より下の我々の世界のある部分を表していて、だからairで、っていうちょっと訳しづらい言葉だけれども、うーん、でも、vilは風のことである、とはしない方がいいと思う。

waterもairも色はないのに、なぜネンヤは白でヴィルヤは青なのか。
airの層の下から上を眺めると空は青い。だからヴィルヤは青いんだな、と妙に納得したりもする。


エオル
Eorlは貴族、伯爵の意味である、となっている。え゛ー、そうかなぁ。あの民族のエオルの時代に貴族や伯爵はいない。
Eorlから変わっていったEarlは、伯爵という意味がある。duke公爵、marquess侯爵、earl伯爵、viscount子爵、baron男爵、っていう順番の丁度真ん中に当たる地位。公爵が上、男爵が下ね。dukeの上はprince、王子さまになる。
ローハンに公爵とか男爵とかいるのだろうか。エオルは王族の下にあたる貴族階級の真ん中辺なのだろうか。

古英語時代のeorlは、warrior, chief, nobleって意味がある。
だから、エオルは、武人で、長で、高貴なる者。エオルをそのまんま表している。
で、そういう意味から爵位の名に発展していく。earlは、貴族の爵位の中で古英語に由来する唯一の語(研究社 英語語源辞典より)、だそうです。

それでまたまた索引には、エオルが伯爵の意味で、Markは辺境国だから、辺境伯の意であろうか、となっている。
辺境伯の伯と、伯爵の伯とは日本語では字が同じだけれど、中身はちょっと違う。辺境伯とは、ドイツの方でよくある称号で、ドイツ語ではMarkgrafと書く。英語の綴りはmargrave。
graveとeorlは別の語で、辺境伯の役割とエオルの立場は違うと思う。辺境伯というのは、国境警備のために僻地に置いた地方長官のこと。
エオルはちゃんとした独立国の王さまです。エオルのパパのレオドは、息子を辺境の国境警備地方長官にするつもりで名づけたわけじゃありません。・・・よね。

この辺境伯云々は、マークを単に辺境としたこと、エオルを伯爵としたこと、辺境伯とは独自の言葉で伯爵の意味とはちょっと使い方が違うのに同じとしたこと、の3つの点が重なっておかしい。



エルロンド
別におかしなところはなさそうですが。
しかし、「兄」エルロス、とある。
ところが、シルマリルの物語では、「兄」はエルロンドで、エルロスは「弟」になっている。
あれ〜〜???

シルマリル本を訳本で読んでいると、エルロンドが兄ちゃんでエルロスが弟、って自然に刷り込まれる。何回もそういう書き方が出てくるから。でも原書では、brotherとしか出ていない。elderとかyoungerって文字はない。
この2人は双子だった。HoMEに出てくる。twinだって。
双子じゃねぇ、上も下も別に関係ないし。日本じゃ双子でも兄ちゃんとか弟とかって言うけどね。日本語って、上か下かをはっきりさせたい言葉で、兄とか弟とか姉とか妹とかって分けるけど、欧米文化は普段は単にbrotherかsisterかを述べるだけで、必要がない限りは上下を言わない。年の差があるときでさえそうだから、双子となるともう、兄とか弟とかなんて普通は言わない。

トールキンは書いてる途中で設定がいろいろ変わる。もしかして、どっちかが兄ちゃんとか弟とか書いてあるところがあるだろうか??
この際だから調べてみました。ありませんでした。たぶん見落としはないと思うな。

トールキンがこの2人を並べるときには、エルロンドとエルロス、って順番のときもあるし、エルロスとエルロンドって並んでるときもある。その時の気分かも。どっちかっていうと、エルロスが先に書いてあることの方が多いかな。
WJ234にある系図では、エルロスが左に書いてある。これは、他の名前は全部左から右へ年の順になっている。左の方が年上ね。で、エルロスとエルロンドは、エルロスが左側になってるから、双子でもエルロスとエルロンドっていう順番のつもりなのかもしれない。

何にしても、「兄」の文字は削って、「双子の兄弟」とするべきかと思います。
大体、シルマリル本と両方見ると混乱します。
シルマリルの物語の本文も、兄も弟も原書には書いてないのに、どっちかと決めるのはよくないと思います。


エント
シンダール語ではEnydで、クウェンヤではOnodrimだとなってる。これも違う。
EnydっていうのはOnodの複数。エルフ語って、複数になると母音が変わるの。
Onodはエントの単数。
で、rimがつくと、種族を表す。ロヒアリムのリムと同じね。ローハンとかロヒアリムってエルフ語だから。

つまり、木の鬚だけならオノド。
寄合で集まったら、エニド。
エントっていう種族をいうときはオノドリム。
全部シンダリンです。クウェンヤじゃありません。


オノドリム 
クウェンヤとなってる。シンダール語です。


ガラシリオン
間違いではない。でも混乱する。
何故かというと、これに関して、指輪物語中の記述と、シルマリルの記述は違うから。
シルマリルの場合、あれはいろいろ書いたはいいけど膨大すぎてまとまらず、トールキンの没後、割と仕上がっている原稿を話が通るようにつなげて出来た本だ。
だからいろいろバージョンがある中のひとつということで、指輪と話が多少違っていても、それはそれでいいの。何せ大昔の話で、よくわかんないんだから。

さて、ガラシリオンは、テルペリオンの実生なのか、そうでないのか?
シルマリル本では、テルペリオンに似た木をヤヴァンナが作った、とされている。the image of Telperion、テルペリオンそっくりに創造された木。
指輪本では、テルペリオンの実、a fruit of Telperion と書いてある。ってことは、バッチリしっかりテルペリオンのDNAを受け継いでいることになる。

どっちが本当かはわからない。大昔の話だからわからない。
大体、草稿でもこの件に関してはいろいろすぎて、ガラシリオンとテルペリオンがイコールだったり、seedling of Telperion、実生になってたり、またはテルペリオンに似た木だったりして、一定しない。
トールキンも、この話は大昔すぎてはっきりとは知らなかったんだろう。

で、索引では、ガラシリオンの項には、テルペリオンを模して作られた、とある。シルマリル本説。
一方、テルペリオンの項には、ガラシリオンはその子孫である、とある。指輪本説。

これだけ読むと混乱する。えー、どっち?

この固有名詞便覧は、シルマリルの解説から引っ張ってきたものも多い。あの本は後ろに語句の説明がいろいろ載ってて便利なのだ。
指輪の追補編についてる索引だから、指輪本説に統一するか、刊行版シルマリル本説ではこうですよ、っていう説明を入れるといいと思います。


シルヴァン・エルフ
シルヴァンエルフ。つまり、森のエルフ。
シルヴァンとシンダールは、字面も似てるし、初心者だとこんがらかってわからない。どっちも海の向こうには行かなかったし、どっちもテレリ族の一派であることに変わりはない。

でもこの2つはやっぱ違う。シルヴァンエルフは山脈の西へ行かなかった。シンダールは遠いベレリアンドにいた。居場所が違うと歴史もまるで違う。それが何千年もの歴史だと、もう全然違う一派になる。

で、シルヴァン・エルフの項に、レゴラスもその1人である、とある。

でも、レゴラスの爺ちゃんのオロフェアはシンダール。パパのスランドゥイルもシンダール。 シンダールだけど、森のシルヴァンエルフの王になっている。

シンダールの子はシンダールじゃないのかなぁ。
ママがシルヴァンならシルヴァンと言ってもいいけど、レゴラスのママは誰だかよくわかっていない。
いくら森育ちで森のエルフどっぷりの生活だったとはいえ、シルヴァンと言い切ってしまっていいのだろうか。

レゴラスは、指輪の旅の途中、エレギオンの辺りでこう言う。
「我らsilvan folk にはどうたらこうたら・・・」

森の民のわれらには、って言う。そりゃそうだ。だって森の王国の王子さまなんだから、我ら森の民って言うのが自然なことだ。

トールキンは、手紙にこう書いている。
「レゴラスは緑の葉ということで、森のエルフにピッタリの名前じゃのぉ。でも彼は王族の1人で、本来、シンダール族なのじゃ」(L297)

レゴラスは Sindarin lineである。トールキンがそう書いている。

やっぱ、シンダールの子はシンダールだ。元が同じテレリでも、分派したのを一緒くたにしてはいけない。
だから、シルヴァンエルフの項にレゴラスを入れてしまうのはよくないと思う。
森のエルフに溶け込んではいるけれど、レゴラスは Sindarin lineなんだから。


詳しくはこちら、理解度アップ講座へ。


高垣門 
バック郷の恐らくは垣出にあると思われる、とある。
推測で物を書いてはいけない。

高垣門は、南端の垣出とは逆の北門を指すとされている。南には門は要らないし、設置のしようがない。


タルメネル 
タルは「高い」。 うむ。
メネルは「天空」。 うむ。
クウェンヤである。 うむ。
そこまではいいけど。

「ヴァリノールのオイオロッセを指すのであろう」 これはいけない。
はっきりわからないんなら書かなきゃいいのにな。

タルメネルとオイオロッセはイコールではない。高いところというのは一緒だけど、全然イコールではない。
タニクウェティルと間違えたのかな。

オイオロッセは、ヴァラールの中で一番偉いカップルのマンウェとヴァルダがいるところで、世界で一番高い山で、その場所一ヶ所を指す。
タルメネルは世界の最上層の天空全体を指す。

この言葉はビルボの詩に登場し、草稿でもいろいろ書かれているビルボの詩にちらちらと出てくる。ビルボの詩には欠かせない単語なの。

トールキンはこのタルメネルをどう言ってるかというと、
menel は firmament で、
tarmenel は high heaven だそうです。
firmamen とは、天空、大空で、詩語。 カッコいいですね〜 これは会社とかを表すfirmと類語。なんで空と会社が同じ言葉かというと、空はドーム状のものを支えているという考え方があったわけで、firmは支え、強くしっかりする、って言葉で、それが巡り巡って会社になってしまった。空を支えるんじゃなくて、組織を支える、って感じに使い方が進化する。おもしろい。
ザ・ファームって小説あったでしょ。あれは面白かったな。映画にもなったね。トールキンとは関係ありませんが。

話を戻して、だからタルメネルは高いメネルで、ずーーーっと上の天のこと。共通語ではOver heavenとなる。

ってことで、ヴァルダさまのお住まいとは言ってる対象が違うのです。



ドゥリンの禍
バルログちゃんのことです。おっかないんです。ドゥリンはバルログに殺されちゃったんです。かわいそーに。
で、ドゥリンっていろいろいるの。1人じゃないのさ。ドゥリンI、ドゥリンII、ドゥリンIII、ドゥリンIV、ドゥリンV、ドゥリンVI、って、六世までいるわけ。

エレギオンで指輪がたくさん出来て、あーだこーだしていた頃の王さまはドゥリン三世。ルパン三世じゃございません。ふ〜じこちゃぁぁぁん♪

索引には、「カザド=ドゥムに王国を築いたドワーフの王ドゥリンによって」と書いてある。まぁそりゃそうなんですけど。ドゥリンによってバルログちゃんは起こされちゃって、大暴れして、ドワーフの王国は壊滅。以来モリアはおっかないところとなる。そしてバルログはドゥリンの禍と呼ばれるようになった。

カザド=ドゥムに王国を築いた、ってフレーズがくせ者ですな。初めに王国を作ったのは初代のドゥリン。バルログちゃんを起こしちゃったのはドゥリン六世。うーん。
そりゃ、6代目もですね、王国を築いていたわけですよ。王さまだったんだからね。自身の王国として築いていたっていう意味だとすれば、まぁ正しい文だれど、王国は元々あってそれを受け継いだわけで、何もないところから作ったわけじゃない。
事情を何も知らずに普通に何となく読むと初代のドゥリンみたいに見える。カザド=ドゥムは初代ドゥリンが作って、それでバルログ起こして、ドゥリンは殺されて、王国は一代で崩壊で、あららのら、にも見える。

ドゥリンの禍の項、六世という文字を入れるべきかと思います。


ナイス  
シンダール語で「舌」の意、とある。

舌。べろろん。
ナイスは、シンダリンで、それは合ってますが、「槍の穂先、三角形の土地、楔、狭く突き出た岬」を指す。とUTに詳しく書いてある。邦訳本では下巻の19ページ。要するに、鋭く尖った形をしてるものを言う。べろろんじゃあないな。爬虫類の舌はとんがってるけどね。
他に、LR387にもUTとほぼ同じ訳語で明記されている。

きっとどこかにtongueって説明されてるところがあって、それで舌になっちゃったのかもしれない。tongueって、岬という意味もある。語句の説明のときにはいろいろ並べるからね。
日本語では舌と岬は違う言葉だ。


ナルシル
赤く輝く炎となっている。そりゃそうなんだけど、白も書いてほしい。ナルは炎でシルは白い光。赤と白で、これは太陽と月を表している。トールキンが手紙の中でそう書いている。
ナルシルは、「炎と、白く輝く光」


西の谷 ★★
白の山脈の北麓、ヘルム峡谷のある谷間、となっている。

ヘルム峡谷、ってのは、ヘルム峡谷じゃん。
あれは「ヘルム峡谷!」であって、西の谷って呼び名じゃない。
奥谷の奥の奥がヘルム峡谷。

ここは、「西の谷」という訳名も間違いで、「ヘルム峡谷のある谷間」という説明も間違い。

Westfold とは、ローハンの領地のうち、白の山脈の北側の、東西に長い領域の、西部を指す。谷という意味ではない。
そしてその地域は、ヘルム峡谷を含む。


ニンダルブ ★★
訳名は白鳥沢 Wetwang 。 Ninは「混ざった」、alfは「白鳥」の意。 とある。

混ざった白鳥・・・ 何だろう。みにくいあひるの子? じゃなくて、白鳥と黒鳥の混血とか・・・
それとも泥の中を転がって遊んで汚れたとか。わー、楽しそう。

これは一体どこから出てきたのかわからない。

nin は、濡れて湿ってる、ってこと。
talfは平らな地。
だから湿地のこと。
このNindalfは、トールキンが意味を書いているから、これで間違いはない。混ざった白鳥じゃない。

ん・・・・、と思って旧訳を見たらやっぱり違った。 これは瀬田さんの誤訳じゃないんだよ。
瀬田さんは滝沢と訳している。滝は平らなとこにはないけど、Nindalfの手前はラウロスの滝で、どどどどどど!!!ってすごいことになってるから、滝の字を入れたくなったのもわかる。
このニンダルブは、ラウロスの滝の先は平らなんですよ〜、湿ってるんですよ〜、っていうネーミングなのだ。

その滝沢を、わざわざ新訳で白鳥沢に変えたらしい。
どーして、絶対おかしい馬鍬砦がそのまんまなのに、直さなくていいとこを直すのかなぁ。

アルクァロンデとかね、白鳥の意味のalqa が入ってるのはあるけど、似てるからって全部白鳥じゃないのです。変更するのはちゃんと調べてからにしてほしい。

大体、共通語、つまり英語のWetwangを訳すべきところで、swanが入ってないのに、どーして白鳥が出てきたのかわからない。「混ざった」って説明があるのに、それがどこに消えたのかもわからない。

共通語は訳しなさい、他はそのままにしなさい、っていう翻訳上の指示がわかっているはずなのに、わざわざエルフ語名を訳して共通語の訳語として当てていて、その上その訳が間違っていては、ますますどうしようもない。

wetはwet。 wangは古語で、平地ってことです。古英語の辞書を見ると、plain とか field とか書いてある。

だからこの場合、共通語とエルフ語は同じことを言っている。「水気が多くて平らなところ」、ってこと。


バックル村
バック郷に渡る渡しのある村、となっている。

バックル村は、バック郷のメインの集落で、当然バック郷にある。
川の西から東へ渡ったところにある村。

バック郷に渡る渡しのある村とすると、川を渡る前のところの村、という印象になる。
まぁいいんだけどさ。 でもこういう書き方するなら、「バック郷に渡って来る渡しのある村」なら大丈夫かな。日本語は難しいねぇ。
誤解されないようにするには、「バック郷の村。ブランディ館がある。渡しを渡ったところ」って感じにしておくのがいいかと思う。
これを見つけたのは、うさぎしちゅうさん。(^^)


東街道 
東から来る者には西街道になる、って書いてある。そうなの?
どっかに書いてあるのかな。だれか教えてください。
西街道っていうのは、別にある。ゴンドールの方に。
どっち向きに進むかで名前が変わっちゃうのかな。
このネーミングは、東街道は西にあって、西街道は東にある。西からミドルアースを東へ眺める東街道、東から西を眺める西街道、なのだ。


フェラロフ ★★★
名前の意味は「人間の禍」となってる。違う。すごく違う。
そう書いて何の疑問も持たなかったのかな。

フェラロフとは、とても強く生き生きと堂々として高貴なる者、ということ。
古英語でfelaはvery、rofはvigorous, strong, brave, noble。

詳しくはこちら


ホルドヴィネ 
別に、いいと言えばいいんだけど。

ローハンでメリアドクに与えられた仮の名、とある。
仮の名、っていうと、メリーは記憶喪失で名前がわからなくて、とりあえず呼び名としてつけられた、みたいな感じ。
これはメリーの功績を称えて、ロヒアリムの友としてのホビットに与えられた称号というか、尊称みたいなものだから、仮の名っていう言い方はあんまりよくない。イメージが違う。


ホブ 
家畜を逃がさぬための高垣の番人、とある。

「家畜を逃がさぬための」が、高垣にかかるのか、番人にかかるのかで意味は変わってくる。・・・いや、同じかな。
バックランドの高垣は、家畜を逃がさないためのものじゃない。
番人を修飾するとなると・・・それでも何かおかしい。「高垣の」は絶対番人にかかるから、「家畜を逃がさぬための」はやっぱり高垣も修飾することになってしまう。

ホブは何をしてるんだろう。ブタさんとか羊さんとか牛さんとかを飼ってるのか? ブヒブヒめぇめぇモゥ〜〜♪
それで、高垣の番も兼ねてるのか? 兼業農家か?
変だな変だなと思って、どうしてこういう形容が出てくるのか探してみたら、これは本文中の誤訳に引きずられたものだった。
瀬田さんがHayward を家畜番と訳していて、それをそのまま何も考えずに引っ張ってきてこの索引が出来たらしい。
ホブは、Hob Hayward で、つまり、ヘイワードのホブで、ヘイワードとは、ヘイのワードで、hayとは生け垣のことで、wardは守るとか保護するってことで、だからヘイワードは、生け垣や柵の管理人のことを指す。

だから、ヘイワードのホブっていうのは、垣根の番してるホブ、ってことだ。

それで、そういう生け垣は家畜を通せんぼするためにも使う場合があるから、辞書には「家畜の番」っていう文字もある。状況設定を考えず、空気を感じずに、そのまんま辞書にある字を写すとこういう間違いになる。

で、その間違いをそのまま持ってきて文を拡大するとますますおかしくなる。
バック郷の生け垣は、家畜通行禁止のために作ったものではない。指輪の本文を理解していればこういう文は出てこない。

ホブは家畜番ではないのでした。


マーク
マークは、辺境は辺境なのですが、辺境だけでは表せないニュアンスがある。

辺境って日本語を使うと、字的には境の辺りってことだけど、僻地、ど田舎、端っこ、って雰囲気になる。
旧版では物語本文中もマークは辺境国となっていた。これは新版でマークに直してもらってよかった。
この辺境国という言い方は、どこを中心として辺境国と呼ぶのかわからなかった。マークの民にとってはマークが世界の中心のはずだけど、何だか話の成り行きでゴンドールが世界の中心のようにも思えた。昔、訳本を読んで、都会のミナス・ティリスからみて田舎の国なんだと思ってた。(^^;)

Unfinished Talesには、マークとは王国の中心部の防備をする地域のこと、とある。つまり国境地帯をメインにして国土を表す国名なのだ。だから辺境国とは、よそから見たときの田舎なんじゃなくて、国境地帯が大事な国、って感じ。
ウェールズとの境が国の存続の重要地帯だったというイングランド七王国時代のマーシアと同じ。マークはマーシアとつながる名前と言われている。詳しくはこちら、その他語講座へ。

騎士の国、マークっていう言葉は、辺境でもいいけれど、それだけだと誤解される。もっと広い何かがある。
国を守るための国境防備、境界で囲まれた地域、っていう書き方もプラスされるといいと思う。
ロヒアリムにとって、「国!」っていう言い方なんだから。


マルローン 
メルリルンとも呼ばれる、となっている。これだと呼び名が2つあるみたいだけど、メルリルンはマルローンの複数。


ランドローヴァル ★★
英語だから名前を訳すべきだったかも、って記述があります。英語だと共通語ということで翻訳するときは各言語に訳しなさいってトールキンの指示があるからね。

でも、ランドローヴァルは広い翼というエルフ語名です。鷲なんだから、英語のlandがついてるわけがない。もしかして、Landroverのことを言ってるのかな。自動車? まさか・・・

lhand  広い、大きい
rhofal  翼、羽
トールキンの初期の草稿のつづりはLhandroval で、後のシンダリンの形でLandroval になった。

Wide-wing の意味。ぐわの弟はひろくんなのだ。


ロリアン  
ロリアンはシンダール語ではなく、もともとは森のエルフのことばであったと思われる、とある。

ではなく、ロリアンはクゥエンヤです。
ロスロリアンのロスはシンダリンです。



このページを作るずいぶん前にも文句言ってたことがりましたが、その時は評論社のサイトには信じられないことにメールアドレスもなくて、連絡のしようがなくて、お手紙書くしかなかった。見事に無視されましたが。あれはちょっと驚いた。
今は、サイトに愛読者カードっていうページがあって、送信出来るようになってます。
時間があって僕もわたしも言ってあげよう、って人は、評論社のサイトに行って、愛読者カードっていうところで、「この本のご感想」の欄にでも、変なところ直してください、って書いてみて。自分の住所とかは書かなくてもいいから、気軽に出来るしね。
でも名前とメールアドレスは一応書いておくと、送信してるのが同一人じゃないのがわかるからいいと思います。
みんなで騒げば直るかも。
昔から、単語の不統一を言っても直らないらしいから、騒いでも直らないかもしれませんが。

その書き方でもいいけど、っていうところはともかく、フェラロフは直してほしいなぁ。ねぇ?


・・・・と書いてからずいぶん経ちましたが、改善する気配はないようです。
前に無視された経緯があったから、Webのフォーム送信もあまり期待はしてませんでしたが、送信してからずいぶん後に忘れたころになって、一応メールが来ました。が、当たり障りのないことしか書いてなかった。見直しを進めているところです、とは一応書いてあったけど、何年かかることやら。
河出から出ているUTの訳本は重版の度にしょっちゅう直している。素晴らしい。尊敬。評論社も見習っていただきたい。

トールキンの著作権が切れれば、いろんな人の訳が読めるようになるだろうし、その時にはこの評論社版がどれだけ変なことになってたのかがわかるでしょう。でもこれを参考に訳す人が出てきたら、どこまでも間違いは続く。
グワイヒアはトールキンが好きだから、あんまり変な本が増えてほしくない。

評論社にはいちいち言っても反応がないので、個人的には(個鷲的には)、Web上で誤りを挙げるのみとし、日本語での読者が誤解する率を少しでも下げたいと思います。少しは役に立つだろう。

このページでは、基本的に解説がおかしいものを書いてます。訳語自体が違うものは、サイト内のあちこちに書いてますので、あちこち見て歩ってください。



トップページへ