原書
トールキンの原書です。だから記述の間違いじゃなくて誤植です。出版社はたーくさんあって、年代によって、つまり版によっても違うはずです。だから全部なんてわかりません。とりあえず、グワの知ってるものだけです。 

へりおー!

ここはヘルム峡谷。
大変です。ウルク=ハイの大群です。こりゃ勝てないかもしれません。えらい騒ぎです。
壁が吹っ飛ぶ。アラゴルンが倒れる。あぶない!ギムリが飛び込む。ギムリ!アラゴルンはエルフの軍団を従えて叫ぶ。

「へのぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

しーーーーーーーーん・・・・・

アラゴルン あれ、何か変なこと言ったっけ
ハルディア へのぉ、とは何だ、へのぉ、とは
アラゴルン え、突っ込め!ってことだろ
ハルディア それはヘリオー!
アラゴルン え、だって本に、へのって書いてあるし・・・
ウルク=ハイ 1 おーい、何やってんだよぉ! 何か気の抜ける叫びが聞こえたけど
ウルク=ハイ 2 へのぉ、だってよ! うひゃひゃひゃひゃ
ウルク=ハイ 3 へのへのもへじかよ、ぶははははは
ウルク=ハイ 4 やる気ないんだぜ、きっと
ウルク=ハイ 5 こっちの勝ちだな。おーい、さっさとしろよ〜
ギムリ 見ろ、笑われてるじゃねーか。
お前、裂け谷で育ったんじゃないのか? え?
アラゴルン だって本に・・・
ハルディア やり直し! 撮り直し! おい、アラゴルン、お前は追試!
アラゴルン だって本に・・・



映画ファンならおなじみ、へりおーー!! 突っ込め!行け〜〜!!!
アラゴルンがヘルム峡谷で仰ってました。はい。

これは、to begin suddenly and vigorously、つまり、突然、どっひゃあ!と、ど迫力で始まる、ってことです。だから命令形だと、突っ込め!になるわけです。

History of Middle-Earth の5巻、The Lost Road のthe Etymologies、HarperCollins刊の364ページ、KHORのところ、herioが、henoになってます。
これには、hoerioという形もあって、これも仲良くhoenoと誤植されてます。

他の出版社のもHarperCollinsのが大元でそのままのはずだから、同じになってるはずです。もしかすると最近のは直ってるかもしれませんが。
このHistory of Middle-Earthシリーズは、トールキンの原稿の山でお宝で、すごい資料集です。まー、でも間違いもあるわけさ。


なぜ間違えたかって、ri は、n に見えるから。(^o^)
トールキンの手書き原稿は、つなげて書いてるから、どっちだかわかりづらいの。

ほら↓
and と drive 、ブリスさんの本に載ってるトールキンの字。これは14ページのもの。
ね、n と ri が同じ形でしょ。
driveは、点がちゃんとついてなかったりすると、r i はn に見える。その時のペンやインクによってまた感じは違うんだけどね。もっとちゃんと書いてたり、もっと読めなかったりします。
こういう英語の単語なら、dnveなんてのはないから、点がなくても、あーこりゃdriveだなってわかるけど、よくわからないエルフ語となるとそうもいかない。
dnveなら子音ばっかでおかしいなと気づくでしょうが、ありそうな綴りだと間違えるね。

KHORのところの他の類語は r のうしろが i じゃないから間違えずにちゃんと r になってます。
ところが、hoerioとherio は i とくっついてたために n に読み違えられてしまいました。

本、持ってる人、直しておきましょう。

hoeno, heno は、hoerio, herio です。


映画は、さすがエルフ語マニアが、がっちり監修しているだけあって、ちゃんとherioでした。
「へのぉ〜〜!!!」 だったら、何か力が抜けちゃったかも。(爆)



A tiro nin!
ご存じ、サムのセリフ。 エルベレス、ギルソニエル!! ヴァルダさまに呼びかけたもの。
ninはme、私を、ってこと。Aは、あぁ!tiroは「見る」の命令形。

だからつまり、「あぁ、おらの方を見てくだせいまし!」ってこと。
って言っても、サムはエルフ語はわかってないから、そんなつもりで言ったんじゃないんだろうけど。すらすらと無意識に口をついて出てきたのですよ。すばらしい。

詳しくは、二つの塔の下の9章、サムがシーロブをやっつけたところをご覧下さい。
ガラドリエルの玻璃瓶大活躍のところです。映画じゃあ、「シーロブちゃんエアレンディル蹴飛ばし事件」がありましたが、原作ではあれはあり得ないことでした。

それで、この有名な、「ア ティロ ニン」ですが、書簡集で「ア ティロ ニゥ」になってます。あれま。
ヴァルダさまは「ニゥを見てくだせいまし!」と言われて、ニゥって何かしら?って、どこ見ていいのかわからなくなって、お困りになるところでした。

nin と niu ね。 手書きだと、n と u はどっちだかわからない。
グワも手で(羽で?足で?) n と u を書くと、後で自分で見てもどっちだかわからなくなる。(^^;;)
手書きでも、人によるけどね。いつもちゃんと書く人もいるし。でもトールキン先生のは、字がのたくってるからどっちかよくわからない。

The Letters of J.R.R.Tolkien の279ページの下のところ。 HarperCollinsHoughton Mifflin も同じはずです。持ってる人は直しておきましょう。



両親
The Lost Road のthe Etymologies、HarperCollins刊の379ページ、ONOのところ。
ontaro の複数は ontani である、となっている。
これも r と n の見間違いじゃないかと思われます。 つまり複数は、ontari が正解かと。
単数で r なのが複数で突然 n にはならない。

クゥエンヤの複数って、最後が i になるのさ。Silmaril シルマリルの複数は Silmarilli シルマリルリ。

ontaro が「親」で、 ontari は「両親」 
それで、ontaro は男親のことで、女親は ontare 。

このontari は、SDに出てくる。Sauron Defeatedの64と73ページ。 だから、上で言った ontani はやっぱ ontari なんだよ。はい、決定。(^-^)v


これは、「王の帰還」の下の第6章に出てくる。はい、皆さん、原書でも訳書でもいいから本見ましょう。アイゼンガルドでみんながさよならするところ。
木の鬚がガラドリエルとケレボルンに言うセリフです。

A vanimar, vanimalion nostari.  (vanimalionのmaのaの上には ' がついてる)
ア ヴァニマール ヴァニマリオン ノスタリ!

あれ、ノスタリ? オンタリじゃないじゃん。 そう、これはトールキンは初めは ontari って書いてたけれど、結局 nostari に変えられた。ってことがSDに書いてある。

はじめの原稿では、O vanimar vanimalion ontari だったのだ。

この木の鬚のセリフの意味は、手紙に書いてあるところがある。Lettersの230番、308ページ。
それによると意味は、O beautiful ones, parents of beautiful children.

それからSDにも意味が書いてある。 fair ones begetters of fair ones.

どっちも意味的には同じ。
おぉ、美しき方々よ、美しき子らの両親よ

parents of beautiful childrenって、これは詩的表現で、美しきものを生み出した者、ってことかな。
子供たちって複数になってるけど、ガラさまケレさまの子はケレブリアンしか知られていない。ケレブリアンってアルウェンのママね。
あと、アムロスもこの2人の息子だっていう設定もあったことがある。結局アムロスのパパはアムディーアということになったのだけれど。
これは終わらざりし物語のガラドリエルとケレボルンの歴史のところでいろいろ語られている。知らない人は読んでみよう。

で、書いた時期によって設定が違うわけだけれども、このnostariのセリフは、アムロスも息子って設定のつもりで木の鬚が言ってたとはあんまり思えない。だから実際の子供ってことを超えて、多くの美しいもののノスタリって意味かと思う。違うかな。違うぜよ!ってわかる人がいたら、グワに教えてね。

vanimar は vanima 美しい人の複数。 え、複数って、最後が i になるって言ったって? r で終わるのもあるの。ほら、ヴァラの複数はヴァラールでしょ。

vanimalionは、属格複数。 〜onってなったら属格複数。ほら、シルマリルリオンの語尾と一緒。だからあれは、シルマリルリのオンなのさ。複数のシルマリルの属格。

で、ontari は nostari に変わったけど、どっちも parents ということで、LR持ってる人は、379ページのontani、r に直しておきましょう。