「アユミ〜、ちょっと来て〜」

リビングでテレビを見ていたミカが、本を読んでいるアユミを呼ぶ。

アユミは、本にしおりを挟んで、ミカのところに行く。

「なんですの?ミカちゃん、私、読書中だったんですけど・・・」

「あぁ〜、それは悪かったわね・・・・ところで、お願いがあるんだけど〜・・・聞いてくれる?」




シンとアユミのショッピング






「ダメって言っても意味無いんでしょう、なんですか?まったくもう」

「さっすが〜、堅実なアユミさん、わかってるじゃな〜い」

「社交辞令やお膳立てはいいです、さっさと用件言って下さいませんか?」

「もう・・・・・・・冷たいわね、まぁいいわ、買い物行ってきて、おねが〜い」

「え?今日の買い物当番はミカちゃんでしょ?何で私が?」

「ん〜、そうなんだけど〜、今良い所なの〜、おねが〜い、よろしく〜、ありがと〜、んじゃ」

と言ってミカは財布と買い物リストをアユミに渡してテレビを見始める。

「もうっ・・・・仕方ありませんね・・・・」

アユミは手渡されたメモと財布を持って家を出る。

「買い物・・・・ですか・・・?」

外でシンが壁にもたれかかって立っていた。

ミ「し、シン様・・・・は、はい、そうです、ミカちゃんったら私に押し付けて・・・・」

しどろもどろになりながらアユミは説明をする。

「友達思いなのですね、アユミさんは」

「そんな・・・・・・たいした事ありませんわ・・・」

「それにしても、そろそろ夕暮れですね・・・・・・貴方1人で生かせるには少々心配です、私も一緒に行かせて貰っても宜しいでしょうか?」

と、シンはアユミに申し出る。

「はっ、あのっ、は、はい、不束者ですが・・・・」

予想外のシンの申し出に動転し、アユミはわけのわからない事を口走る。

「では、行きましょう、何を買いにいくのですか?」

アユミは買い物のメモをシンに渡す。

シンはそのメモを広げて買い物リストをチェックする。

「ふむふむ、ジャガイモ、たまねぎ、にんじん・・・・・・カレーですか、わかりました、では行きましょう」

チェックした後、シンは綺麗に折りたたんでメモをアユミに返す。

「では、行きましょうか」

「は、はいっ」

『まさかシン様と一緒に出かけられるなんて・・・・ミカちゃんにちょっと感謝しないといけませんね・・・・』

そして、シンとアユミの二人は、町に材料を買いに行く。





「え〜と、まず最初は何を買いましょうか・・・・」

「そうですね〜、ちょっと遠いですが、はなまるスーパーに行きましょう、ちょうど夕市で、安売りをしていますから」

「そうですね、じゃぁ少し急ぎましょう」

そして二人はスーパーに辿り着く。

「では、二手に分かれて材料を取ってきましょうか」

「はいっ」

二手に分かれて材料を探しに行く、しかし、カレールー以外は売り切れていた。

アユミが意気消沈していると。

「しょうがありませんね、他の材料は商店街で買いましょう」

と、シンがアユミを慰める。

シンが慰めてもアユミの落ち込みようはさほど変わらない。

「・・・・・・はい・・・・・・そうですね」



しかし、商店街に行って一転。

アユミの落ち込みが一変することになる。



「はぁ〜、人がたくさんいますね、商店街はいつもこのような賑わいなのですか?」

「はい・・・そうですわ」

「・・・・・・アユミさん、そんなに落ち込まないでくださいよこっちまで気が滅入ってしまいますよ」

「わかっているんですが・・・・・・・はぁ・・・」

「しょうがありませんねぇ・・・・・・早くニンジンとジャガイモとタマネギ、それに牛肉を買って帰りましょう」

「そうですね・・・・・・・」

そして2人は商店街の八百屋の八百角に行く。

「あ〜らアユミちゃん、今日はアユミちゃんが当番なのかい?」

八百屋のおばさんがアユミにそう声をかける。

「はぁ・・・はい、ミカちゃんに頼まれまして・・・・」

ここで八百屋のおばさんがアユミにぼそぼそと耳打ちをする

『で、後ろにいるそのかっこ良いお兄ちゃんは彼氏なのかい?』

ボッ

「あっ、あのっ、と、とてもそんなのではなくて、あの、私とシン様はとてもつりあうような、あの、あの・・・・・」

「なんだい?様、って呼んじゃって、結構深い関係なんじゃないのかい?」

おばさんは新しいおもちゃを手に入れた子供のような笑みを浮かべ、さらにアユミを焦らす。

アユミがとうとう顔を真っ赤にして黙りこくってしまった。

その様子をじっと見ていたシンが寄ってくる。

「あの・・・どうかしましたか?」

「いや、なんでもないのさ、それで、何が入用なんだい?」

「あ、はい、今日の夕飯はカレーとの事で・・・・・・」

「そうかい、んじゃ、たまねぎとジャガイモとにんじんだね・・・・・・はい、しめて1500円、税込みだよ」

「ありがとうございます。アユミさん、お金を・・・・アユミさん?」

財布係のアユミが固まって動かない。

「アユミさんっ!」

「はっ、ひゃいっ何ですか?お茶ですか?」

「?何を言っているんですか?財布ですよ、1500円だそうです」

「えっ?はっ?はいっ、すみません」

我に返ったアユミはポケットから財布を取り出し、1500円ぴったりおばさんに手渡す。

「はい、ありがとう、またね」

「ありがとうございました〜」

「ま、また来ます・・・・・・では」

八百屋から離れた後でもアユミの顔は赤いままだった。

「若いね〜」

おばさんが一言。



「えっと、後は牛肉ですね、お肉屋に行きましょう」

と、シンは自然な動作でアユミの手を取って歩く。

「あ・・・・・・」

再びアユミの頬が紅潮する。

シンもすぐそれに気付く、が、すぐ放すのも不自然なのでそのままお肉屋に向かった。



お肉屋に行って、店主のおじさんが2人を見て一言目。

「おや?新婚ですか?」

『違いますっ』

顔を赤くして2人が声をそろえて言った。

「そうかい、それにしても息がぴったりだね〜、で、今日は何を買っていくんだい?」

おじさんの言葉そっちのけで二人は思いにふける。

(どうして今日はこんな目に・・・厄日でしょうか・・・・?)

(夫婦に思われるのは嬉しいんですがさすがに恥ずかしいですね)

「お二人さん!?」

「は、はいっ」

「な、なんでしょう」

「何が欲しいんだい?サービスしちゃうよ〜」

「え、え〜と、牛肉を、700グラムお願いします」

「あいよ、牛肉、夕飯の買い物かい?」

「はい、今日はカレーということで」

「そうかい、ビーフカレーか、じゃぁおまけで900グラムで・・そうだなぁ・・・・598円でいいよ」

200グラムプラスで値段は500円分

お買い得♪

「では、1000円からお願いします」

「あいよ、おつりに312円、また来てね」

おつりをシンに渡し、袋に包む。

「さて、これで買い物は終りましたね、どうします?まっすぐ帰りますか?」

「あの〜・・・・・ちょっとお散歩しませんか?」

「散歩ですか?う〜ん・・・・・大丈夫でしょう、では行きましょうか」

買い物袋を持って散歩。微妙で妙な光景だが、2人はそんなこと気にしない様子で街中に入る。

少し歩いた先に、公園があった、2人はその公園の中に入った。

公園のベンチに座って雑談を始める。

まず二人の話題は、アユミのご主人でも有り、聖者でも有る悟郎の事であった。

「まさか悟郎さんが聖者殿だったとは・・・・・まったく思いませんでしたよ」

「私もですわ、ご主人様にあんな力があるなんて・・・・」

「・・・良い、ご主人様だったそうですね」

「・・・はい、とても」

のどかな空間を2人は作り出す。

その空間に入れない人が多数いる中、その中にたやすく侵入するグループがいた。

それはいかにも私はヤンキーです、みたいな格好をしている男たちであった。

「ようよう、にーちゃん、買い物は済んだのかい?」

「はぁ・・・・・そうですけど」

男の言葉に、シンは普通に返す。

「今日の夕飯か?何作るんだ?女体盛りか?けひゃひゃひゃ」

「いえ、ただのビーフカレーですよ」

普通の人間なら、怒るか、笑うかしそうな所だが、シンは普通に言い返す。

そのため、男は沈黙する。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・何か?」

黙った男を見て、不思議そうに首をかしげてシンが訊く。

「何か?じゃねえぞコラ〜、クソ野郎、ふざけんな〜」

彼らはあっさりとシンに返されたので腹を立てたようだ。

「し、シン様・・・」

「大丈夫ですよ・・・・・・・何の用でしょうか?これから私たちは家に帰るんです、邪魔なので通してくれませんか?」

シンはアユミに安心させようと一言言った後、グループにそう言い放つ。

「へっ、ここを通りたかったら有り金全部と女を置いて行きな」

いかにも定番でひねりも何も無いセリフを言って威張る男たち。

「ダメ、ボツ、却下、です。あなたたちの意見を聞く気はさらさらありませんよ」

シンは飄々と答える、おとなしそうな顔をして言う事はなかなかきつい。

「んだとコラァ〜」

男の一人がかかってくる。

即座にシンはビニール袋を腕に通し、アユミを抱えて男の頭上を飛び越える

「きゃっ、し、シン様?」

「申し訳ありません、少しの間我慢しててください」

「そ、そうではなくて・・・・・」

「・・・・・・では、失礼します」

シンはアユミの声を無視しすたこらとその場を去り、家に向かう。

「あの野郎っ、逃がすなっ」

男達が大声を上げ、怒鳴りながらシンを追いかける。

が、四聖獣であるシンに追いつけるわけも無く、あっさりとシンを見失ってしまっていた。

「ちくしょう、あの野郎、今度見つけたら・・・ギタギタの・・メタメタに」

男の一人がそう言った次の瞬間。

「それは無理だぞ・・・・・・」

と、背後からの声が。

「あぁん?」

ドカッ、バギ、メゴッ、ドスッ、ベキッ、ドゴッ

なんとも壮絶な音がした。

数分後、地面に壮絶なくちづけをしながら倒れている男達が発見された。

「暗いよ怖いよたすけて〜」

と言ううめき声をあげながら。





「ふっ、ふっ、ふっ・・・・」

シンはアユミを抱きかかえたまま走っている。

リズム良く、息を吸ったり、吐いたりを繰り返しながら、常に同じスピードで走りつづける。

「し、シン様、もう大丈夫です、下ろしてください」

「あ、はい、申し訳ありません、仕方が無いとは言え、いきなり抱き上げてしまって・・・」

そこでアユミが人差し指でシンの口を止める。

「謝らないでください、結構楽しかったですから♪」

アユミは笑顔でシンにそう言う。

「そ、そうですか」

「そうです、それに、お姫様抱っこでしたし・・・(ぽっ)」

アユミが顔を赤らめて言う。

その様子を不思議がったシンが。

「何か?」

と言うが、アユミはあっさりとごまかす。

「何でもありませんわ、ミカちゃんがお腹をすかせているかもしれないので、早く戻りましょ」

「そうですね」

同刻、家でテレビを見ていたミカがくしゃみをした。





「ただいま帰りました〜」

「ただいま戻りました」

二人をエプロンを着たランが出迎える。

「おかえりなさい、全部そろいましたか?」

「シンさまのおかげでばっちりですわ♪」

アユミが笑顔でそう答える。

「では、早速料理にかかるので、待っててください」

「あの・・・私も手伝いましょうか?」

「いえ、アユミさんは買い物をしてきてくれたので休んでてください」

「そうですか?では、お言葉に甘えさせてもらいますわね」

「はい、どうぞ」

そう言ってアユミはテレビのある部屋に入る

「おかえり〜、ありがとね〜はいこれ」

ミカは労いの意も兼ねて、テーブルの上においてあったジュースをアユミに差し出す。

「いえ、こちらこそ」

アユミはジュースを飲みながらそう言う。

「?何の事?」

「こちらの話です」

「そう?ならいいけど・・・・・お風呂入ってきたら?」

「・・・・・そうですね、お風呂入ってきますわ」

「どうせならシンと一緒に入ったらどう?」

「ゴフッ」

アユミは思わず吹き出す。

「あっ、ばっちいわね」

「ミカちゃんっ、何か飲んでる時に変な事言わないでくださいっ」

「それ狙ってたんだもん」

「まったくもうっ、冗談もほどほどにしてください」

「あら、8:2で冗談よ?」

「・・・・どっちが冗談ですの?

「2が」

「ミ〜カ〜ちゃ〜ん」

「別に良いじゃな〜い、花嫁候補だったんだし〜」

「そ、それはそれです」

アユミは焦りながら反論する。

「はいはい、良いから入ってきなさい」

「もうっ」

アユミはお風呂に入り、汗を流した。

風呂から出ると、美味しそうなカレーの匂いが漂ってきた。

「あら、もうできたんですわね、早いですわね」

着替えて、食事どころに行く、すると全員集合していた。

「アユミおそ〜い、アユミを待っていたんだからね」

「早くたべるぉ〜」

「カレーは辛れぇ〜、なんちゃって」

「あ、あの、それつまんないです・・・・」

「ほら、早く座って」

「私・・・辛いのはちょっと」

「カレーは辛くないと」

「そうれすねぇ」

「おかわりいっぱいするの〜」

「クルミお姉ちゃん?ほどほどに、ですよ?ほどほどに!」

「まぁまぁ、たくさんありますから」

「早く食うぞ、カレーと言うものを一度食べてみたかったのだ」

「兄者、目覚めるの遅かったから食べたこと無いんだよ」

「なるほど・・・それで」

「アユミさん、ここが空いていますよ」

と言ってシンは自分の隣にアユミを誘導させる。

「さて、みんな行き渡ったかな?じゃぁ、全員で、いくよ〜、せーの」

『いただきま〜す』


次の日

四聖獣は、一通の置き手紙を残し

睦家を去った

手紙の最後には

『また会おう』

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