そこから見上げる空はとても狭かった。丸く切り取られた自分の真上にしか損ざし無い小さな空。外界はその小さな水色(蒼と称するには、少々雲が薄く張っていた)だけで、他は昼にしてはとても暗い色が取り囲んでいる。そう、取り囲んで。世界は広がってなどいなかった。世界は狭く閉ざされ、簡単に言えば閉塞していた。底から抜け出す事が出来る唯一の外界への接触口があるとしたら、真上に小さく見える丸く切り取られた空だけで、だからこそ外へ望むにはそこに手を伸ばさなければならなかった。
 嘆息する。じめじめとしているそこは、既に本来の役割を果たしていなかったけれど、暗くて草がぼうぼうに生えていて、それから数日前に振った雨の湿りが底にしっかりと残っていた。両手を真横に広げたら、積み上げられている意図的な形をした石に両手がぶつかる。けれども、突っ張る事が出来るほどではない。円筒形の穴に落ちている気分になるけれど、そこは間違っても、人を入れるような目的で掘られた穴ではなかった。勿論、このような状況になるにいたった原因の、子供達が掘ったものでもない。あんな子供にここまで綺麗な穴は掘れないし、第一掘ることができたとしても、草が此処まで生えているのは不自然だ。まあそんな事はともかくとして。
 ずっと真上を見ていても、首が痛くなるだけで適当な打開策は浮かんでこない。ルルーシュは流石に空を見上げているのをやめると、こきりと首を回した。泥だらけの手で首をおさえる。どうせ妹が褒めてくれたさらさらの黒髪も、友人が褒めてくれた綺麗な顔も同じように泥だらけなのだ、今更ちょっとくらい、泥が付いたところが増えたところで構いはしない。足元に落ちているナイロンの買い物袋を拾い上げる。中に入っているのは、幸いにも生ものではなくただの調味料とパンだった。きっとこの中に、妹が好物にしている梨や、桃などといった柔らかい果物を入れてしまっていたら、きっと潰れて食べる事ができなくなってしまっていただろう。だけど今回買っていたのは、塩や胡椒の詰め替えとロールパンだ。真空パックで入れられている調味料は、落とされても踏まれても、よほどの事がないと駄目になったりしない。それにパンだって、潰れた分は自分が食べたらいい。ビニールに守られているから、潰れてしまっても食べる事は出来る。一応、無駄にはなっていない。その事に多少の安堵を覚える。いくら支障が無い程度に金銭を与えられているからと言って、食べ物を無駄にして良いという理由にはならないのだ。
 それから元々手提げが目的の買い物袋を、強引に肩にかけた。手に持っていたのでは両手が使えない。ルルーシュはもう一度、今度は真上ではなく斜め上を見上げた。ある程度風化しているお陰で、積み上げられた石のかみ合わせのところは、いくつか子供の手は引っ掛ける事ができそうだ。
 見上げた空から与えられる情報は時間の程度くらいだ。あまり時間を浪費したら妹に申し訳が無い。友人がいるからといっても、妹の本当の味方といえば、この界隈ではルルーシュしかいないのだ。もしかしたら、世界では、という注釈の方があっているかもしれないけれど。でも、ルルーシュしかいないのだ。
 だから早く帰ってあげなくては不安になるだろうし、心配だってされるだろう。そんな感情を抱かせたくは無い。現在自分の状況が打開に困難になっている事は分かっていたけれども、それでもルルーシュはその策の一つとして、恐らく自分の事を監視しているだろう、友人の父親がつけたSPに助けを呼ぶことはしなかった。自分達がどう思われているのかなんていうことくらい、分かっている。迂闊に他者に不快な思いをさせることも無いだろうし、自分が不快な思いをすることも無い。
 端的に言えば。
 ルルーシュは、近所の子供に、もう使用されていない寺の井戸の底に突き落とされたのだった。多分、落とされた衝撃でしばらく気絶していたかもしれない。一応、気が付いた後に頭をぺたぺたと触って確かめたけれど、米神の所をどうやら石の角か草で切っただけのようで、大した怪我は無かった。この近所の子供達は、子供達に限らず、この辺りの人々は皆、ルルーシュ達(達、という事は、ルルーシュの妹も含まれている、当然)の事を良く思っていない。歓迎していない。寧ろ積極的に敵意を向けている。ただし、大人は子供のように行動には移さない。ただ不満や不平、そして不快を隠す事がない。それが子供に伝染して(情報として伝達されて)、子供はルルーシュ達の事を敵として見なすようになる。子供達はきっと、あまり難しい事なんて分かっていない。ただ大人達の言う言葉を全部鵜呑みにして、不満や不平の捌け口としてルルーシュ達を利用しているだけなのだろう。そこには本気の悪意や憎悪はないのかもしれないけれど、抽象的な敵意だけは存在していた。敵と見なされるという事は個人としてみてもらうことが出来ないという事だ。個人をあらわすことが無い「敵」という代名詞を貼り付けられ、子供達はそれを的にして遊んでいる。それだけの事。それはルルーシュを否応無く物理的に傷つける結果となっていた。つまり、外出すれば殴られる、蹴られる、何もしていない、ただ買い物に出ているだけだというのに、彼らに干渉するつもりなど、ルルーシュ本人には全く無いというのに、言われない暴行を受ける。今回はそれが少々エスカレートしたようだった。人が来ないような場所を通ろうとしたのが悪かったのだろうかと痛みよりもぬるりとした血液の感触が気持ち悪くて、ルルーシュは顔を顰めた。子供達が遊んでいなさそうな寺を近道として通ったのだけど、どうやらルルーシュの感覚は間違っていたらしい。子供達にとって、車が頻繁に通ってさえいなければ、道路でさえ遊ぶ場所になるのだ。こんな町のど真ん中にある森の寺なんて、恰好の遊び場だったのだ。大人がずかずかと入り込んでこない、ある程度広さがある寺。引き返す暇も無くばったりと出くわしてしまった瞬間、ルルーシュは内心、下品にも「げえ」と思ってしまった。もしかしたら友人の口調が移ってきたのかもしれない。
 それはともかく、見つけられたら即、いつものように暴行が始まった。そして中の誰かが提案して、ルルーシュをこの井戸に落としたのだ。流石に抵抗はしたのだけれど、多勢に無勢だった。上から土や虫を放り込まれなかっただけましなのかな、と少し思う。ルルーシュを放り込んだ子供達の気配は既に無い。多分、ルルーシュが気絶してしまったから、驚いて逃げ出したのだろう。自分でやった事に責任が持てないというのであれば最初からしなければいいのに。子供にそれを求めるべきではないと分かっていながら、思うだけなら相手を責めている事実にはならないよな、と考える。責任をモラトリアムさせてもらっているからこそ子供なのだ。ルルーシュにはそんなモラトリアムを許してくれるような大人なんて何処にもいなかったから、そういう意味では、ルルーシュは子供というカテゴリに入っていてはいけないのかもしれない。
 ただし。
 ルルーシュはひとまず自分の片手を真上に上げてみた。明らかに届かない井戸のふち。切ない。
 そう、いくら精神的に大人びていようと、ルルーシュは子供である。からだはこども、ずのうはおとな。いやそんなの知らない。いらない。とりあえずルルーシュは平均的な十歳児の身長しかなかった。つまり140弱。男の子は女の子よりもちょっとちっちゃい。本国を離れる時、一切年下の異母妹はルルーシュよりも一センチほど高いか、もそくは同じくらいだった。三歳年下とはいえ、妹もルルーシュの身長を越えちゃったりする瞬間はあるのだろうか。いやそんな心配は今は必要ない。現在重要なのは、突き落とされた井戸から、ルルーシュが自力で這い出るには、少々井戸が深すぎるという事実だ。
 目算、約二メートルほど。助走をつけられるほど、井戸の中は当然広くないので、ルルーシュは垂直飛びを試さなくてはならない。しかし、困った事に垂直飛びをしたところで井戸の縁に手は届かないのだ。結論。つまり、ルルーシュがこの井戸から這い出るには、石の隙間に手足を差し込んでとっかかりとして登るという、所謂ロッククライミングに挑まなければならないという事だ。
 さて、考えていたところで登れるはずが無い。それに、ここで声をあげたところで、誰かが不快な思いをするのは目に見えている。仕方が無い。きっと明日は全身筋肉痛になるだろうけれど、登らなくてはいけない。
 みゃぁう
 小さな声が聞こえて、気合を入れていたルルーシュはぽかんとその声に顔を上げた。切り取られた空の中に、黒い塊が見える。金色の目をした黒猫が、ルルーシュを見下ろしていた。ぱたり、と尻尾が揺れる。振られるのではなく、ただ揺れただけのそれを見て、ルルーシュは苦笑した。なんだか、じっと見下ろしている猫に、励まされているような気がしたのだ。
「大丈夫だよ、お前に言われなくても、ちゃんとここから出て帰るさ」
 思わず、口元が緩んだ。





 そしてそれからはなんていうか戦争だった。死んだ母や異母姉、異母兄達が駆けている戦場などルルーシュは一度たりとも拝んだことが無いが(ただし、地獄ならば見たことがある、絶望ならば知っている)、ルルーシュにとっては己の限界や井戸の絶壁との戦争だった。何しろ井戸なんてものは内部から登るためにできていない。水を桶に汲むだけの用途で掘っている穴をそう呼ぶのだから当然だ。日本だろうがブリタニアだろうが、過去存在した井戸は大概断崖絶壁九十度直角の円筒形をしていて、つまりなだらかになんてできていない。枢木神社の傾斜にさえ、妹を負ぶっていたというハンデがあったにしろ、ルルーシュにとっては限界への挑戦にしか映っていなかった。だからもはやこれは、階段よりは距離が短いとは言っても限界への挑戦というレベルではない。諦めろといわれているようなものだ。しかしルルーシュは諦めるつもりなんて毛頭なかったから、肩に引っ掛けている買い物袋が邪魔だろうと、耳には自分の吐息しか聞こえなかろうと、必死でその絶壁に挑戦し続けていた。ルルーシュを見下ろしていた猫はいつの間にかいなくなってしまっていた。その事実は特にルルーシュの気をそいだりはしなかったが(何しろ猫は気まぐれな生き物なのだから)、自分の体力の無さには哀しくなった。自分の体重も満足に支えることが出来ない両腕、既にがくがくと震えている両足。一番楽なのは、このまま落ちて何も考える事が出来ないどこかで眠り込んでしまう事だけど、それは身体にとって楽な事であり、ルルーシュの精神的には全く楽な事ではなかったので、ルルーシュはそれを採用する事無く現在この瞬間最大の天敵と言うことが出来るだろう井戸の壁にかじりついた。
 その甲斐あってか、時間間隔がほとんど消え去ってしまった頃、ようやく井戸の縁に手をかける事が出来た。
(や、やった……!!)
 思考能力なんてその頃にはほとんどそがれてしまっており、ルルーシュがその瞬間に思うことが出来たのは、そんな一言だった。けれどそんな一言でも、充実感というか、達成感というか、とにかく言葉にするよりも実感した方が早いような嬉しさが胸を満たした。
 だけどそれがいけなかった。知っていたはずだ。最後まで気を抜いてはいけないと。
 ずる
「!!!!!」
 心臓が本当に跳ねたと思った。達成感とともに全身の力が、少しだけ、本当に少しだけ抜けたのだ。息を吐いた分だけ抜けてしまって、そしてルルーシュの四肢はルルーシュの身体を小さな面積で支える事ができなくなってしまった。どれくらいかの時間をかけて上り詰めた二メートルがゼロになってしまうかもしれないという事が、臓腑に冷たいものを落とし込む。
 嘘だろ馬鹿じゃないのか僕いやそうじゃなくて今からどうやってこの絶望的といえる状況を打開するんだ、既に後ろへ重心が移動してしまっている、ここからどうやって前にある石にかじりつく、あまり考える事無く行動したら多分普通に落ちてしまう、いやでも考えているうちにも落ちてしまう、いっそ惨めに縋りつくか、指が駄目になってしまうだろうけど構いやしない、いやでも、傷付いた指では力が入らないかもしれない、ここは一度落ちてからもう一度、駄目だ、多分もう一回ここまで登るだけの体力なんて僕に残されてない、どうすればいい、どうすれば。
 心臓がはねて、臓腑が冷えて、それから喉の奥が痙攣した。どうする事もできない。こんな廃れた寺にルルーシュを助けてくれる人間なんていない。このまま落ちてしまう。せっかく、登る事ができたのに。
 「   」!!
「ルルーシュ!!」
 鼓膜に聞こえた声は確かにルルーシュの名前を音にしていた。声と同時にずるりと滑っていた手が、同じくらいの大きさの手に掴まれる。落下感が止まった。ただし、ルルーシュにかかっている重力が消えるわけではないので、瞬間、ルルーシュの右腕にルルーシュの全体重がかかった。
 だけど、それはさらに腕を引っこ抜かれるかと思うくらいの力で引っ張られてしまう。片手ではなく、両腕でしっかりとルルーシュの右手首を掴んだ相手は、井戸の外側の縁に両足を引っ掛けて踏ん張り、ルルーシュの身体を井戸から引っ張り挙げた。自分ひとりを、地面に縛り付ける事が上手に出来ていた重力が、その時確かになくなっていた。つまり、引き上げられた力が大きすぎたお陰で、ルルーシュの身体は勢い良く井戸から飛び出てきていた。
 先程と酷似した、けれど明らかに異なる浮遊感。井戸から身体が出たお陰で、視界に映る世界はびっくりするぐらいに広がった。それから、ぱちりと合わせられる、綺麗な翠の、目。くるくるふわふわとした明るい茶色の髪をした同じ年頃の少年が、道着姿でルルーシュをぽかんと見上げている。
 スザク。
 少年の名前が遅れてルルーシュの頭に浮かんでくる。それが浮遊感の消滅だった。
 がくん、と通常の重力に従い、ルルーシュはスザクの上に倒れこんだ。どたどた、ともつれて転ぶ音がする。ルルーシュは顔面から地面に叩きつけられることを覚悟していたのだけれど(何しろ、角度的に、確実にルルーシュはスザクを飛び越えて地面直撃コースだった)、衝撃以外ほとんど痛みがない事に気付いてぱちりと瞼を挙げた。映るのは白い道着。どうやらスザクを下敷きにしてしまったらしかった。いや違う。多分、スザクが下敷きになってくれた(何しろもしかしたらスザクを敷いてしまうかもしれない位置ではあったけれど、顔だけは絶対に免れないだろうと思っていたのだ)。あの短時間でルルーシュを庇うことが出来るなんて、本当に並外れた反射神経をしているな、と頭の隅の方で思う。痛た…と呻く声に、はっとなり、ルルーシュは慌ててスザクの上からどいた。
「すまない、大丈夫か!?」
「それはこっちの台詞だこのド阿呆!!」
 心配して声をかけたというのに、返されたのは怒声だった。思わず目を白黒させてしまう。スザクは何故こんなに怒っているのだろうか。潰してしまった事を怒っているのだろうか? それとももしかして、出掛けに何か彼に対して失礼な事でもしてしまったのだろうか?
 あまりの剣幕に、普通に「こっちの台詞」の意味をスルーしてしまっているルルーシュである。
「ど、ド阿呆?」
 罵りの言葉だっていつもと違っていて(日本語のスラングなんて、流石にたくさん知っているというわけではない)、聞き返してみると、少年少年した顔に収まっている大きな目を目一杯に吊り上げて、スザクはルルーシュに人差し指を突きつけた。
「いつまで経っても戻ってこないと思ったらこんなとこにいるし! 怪我ばっかりだし、体力ないくせに自力で登ろうとしてるし落ちかけてるし!! 俺が来なかったらまた落ちてたぞ馬鹿野郎!! 少しは助けを求…められないのかもしんないけど! 俺がお前ここに落とされたって聞いた時、どんだけ怖かったか分かるのか!!」
 ぱちり。
 身体の痛みとか、助けられたけど、流石に引っこ抜くようなあの馬鹿力はやめてほしかったなあちょっと脱臼するかと思った、とか、どろどろの身体が気持ち悪いとか、力尽きててほとんど何も考える事が出来ないとか、今何時なんだろうとか、色々と自分の中で思うことはたくさん会ったのだけれど、ほとんど泣きそうになって顔を真っ赤にしているスザクのまくし立てた言葉を反芻してみて、ルルーシュはぽつりと呟いた。
「……ごめんなさい」
 言った後に我に変える。何で僕が謝らなくてはならないんだ。いや僕が弱いから子供達から逃げられなかったというのもあるだろうけど、落とされてしまったら僕にはできる事と言えば限られてしまっているじゃないか。なんで怒られなくちゃならないんだ。いや、でも、あれ、ということは、スザク。
「心配してくれたのか」
 地面に座り込んだまま、スザクに問いかけると、スザクはさらに泣き出しそうな表情になった。友人。ルルーシュがたった一人、そう呼ぶことが出来る、この世界で今の所唯一、味方とみなすことが出来る同じ年の少年は、目元を真っ赤にさせて立ち上がった。自然、ルルーシュはスザクを見上げ、スザクはルルーシュを見下ろす姿勢になる。
「お前はっ」
 どなってばかりだな。と思いながら、ルルーシュはスザクを見上げる。怒るのは体力がいる事だと聞いた事がある。スザクは体力が無尽蔵なんだから、こんなに怒っても疲れないのかな。もしかしたら、体力が有り余っているから怒りっぽいのかな。ああ、でも、僕もあんまり他人の事は言えないかもしれない。
 何しろ僕は世界に対して怒っているのだから。
 とりとめの無い事を考えているルルーシュの耳に、けれども素通りする事無く、真っ直ぐにスザクの言葉は入り込んできた。
「もうちょっと俺がお前の事好きだって事自覚しろ!!」
 息を切らせて言い切ったスザクを、ルルーシュはしばらく見上げていたけれど、やっぱり首が疲れるので立ち上がった。先程倒れこんだ中でも、一応あまり買い物袋が潰れていない事を確認して安堵してから、スザクをもう一回見返す。
 顔を耳まで真っ赤にしながら、スザクはルルーシュを真っ直ぐに睨みつけている。それは敵意の目とは違う感情を幼い顔に乗せていた。睨みつけられているのに、警戒心で身体が固まらないというのは、ある意味貴重な経験なのかもしれない。
 そんなに言うのが恥ずかしいのなら、別の言葉にしていればよかったじゃないか。つまりスザクは他の周囲の人間とは違って、ルルーシュ達の事が嫌いじゃなく、それから特殊な環境下で育てられてしたにしては、あまりにも真っ直ぐに育っているという事なのだろう。それがルルーシュにとっては煩わしくない事で、嫌ではない事で、いっそ羨ましい事で、それから嬉しい事だった。
 絶望から、掬い上げてもらってばかり、だな。
 世界には敵しかいないと思っていた。妹を救うには自分だけでは駄目だった。井戸から自分の力だけでは這い上がることが出来なかった。
 全部、目の前でルルーシュに好意を示してくれている少年が、打開してくれた。心配して怒ってまでくれる。そんな人いないとずっと思っていた。だから、感謝なんていくらしても足りることが無い。ただ、それを正直に言葉に出来るほど、ルルーシュは普段は素直な子供ではなかった。つまり、現在は普段とは色々と異なっていた。
 まず、とても疲れていた。元々体力がないルルーシュが、ずっと垂直ロッククライミングに挑戦していたのである。全身の疲労はもはや限界を超えてしまっていた。恐らく明日はまともに動くことが出来ないだろう。それから、少し凹んでいた。井戸の中という閉塞的な空間に長時間閉じ込められていた事がいけなかったのだろう。さらに、スザクのタイミングが良すぎた。本当に駄目だって思ったときに来たのだ。
 そんな全部が、ルルーシュの口を素直にさせた。自他共に認める捻くれ者が、少しだけ、素直になっていた。だから言う事が出来た。
 頬が緩む。それにスザクが息を呑んだのに気付かず、ルルーシュは口を開いた。
「何かヒーローが来たのかと思ったぞ、スザク」
 その笑顔がスザクにとっては何よりの褒美だったという事なんて、ルルーシュは自覚していない。ただ、スザクという少年の存在は、ルルーシュにとって、確かに母親以来の、ヒーローのように見えていたのだった。





次代のヒーロー






「それで、もしかして僕を落とした子供から僕の場所を聞いたのか?」
「いや、違う」
「SP」
「それも、違う」
「じゃあ…」
 みゃぅ
「あ、お前、また来たのか」
「そいつ」
「え?」
「そいつが俺とナナリーのとこに来て。ナナリーが訳した」
「何を」
「猫語を」
「……」
「俺だってちょっとは疑ったけど本当にお前いるし落ちかけてるし」
「ナナリー凄いなあ」
「そこでそう言えるお前も本当凄いよな」





 多分スザクさんは恋愛の好きを言っているつもりなのに、日本語だからルルーシュさん全力で友愛だと勘違いしているために、告白スルー状態、です。あれ、もうちょっとラブラブするつもりだったのですが、すみません…。それでも捧げもの宣言してしまう深鷺です。とても図々しいです。いらなければゴミ捨て場にぽいしてください。二次環境破壊ゴミを申し訳ありませんでした。




ちょ、萌え 死   ぬ   !!(悶)
子スザクと子ルルはどこで引き取れますか養えますか。
もう2人とも私の全財産を注ぎ込んで面倒見ます対価は私の部屋で
ラブラブして頂ければ結構ですお願いします 引 き 取 ら せ て !(目がマジ)
子スザクがいじらしくて本当にかわいいです。幼少の彼はルルへの想いが素直に
表に出てきてくれるので好感度が上がりっ放しですよ。(所詮ルルバカ)
この後は是非とも泥んこルルを引き摺って2人でお風呂に入ってしまえいばいいと思います。
ゴミだなんてとんでもないです!私の神殿(お宝ファイル)に大切に保存させて頂きました。
本当にかわいいなぁ・・・癒されるなぁ・・・えへへもう1回読み返そう・・・