ようこそ、まちぞうの部屋へ。
まちぞうの部屋の箪笥には手のひらに乗るほどのとてもちいさなちいさな女の子が棲みついています。
そのちっちゃい子とまちぞうは携帯メールやパソコンで会話をしてお互いを確認しあっています。とびらの向こうとこちらがわ、すぐそばにいるけれど決して顔をあわすことはありません。それがここでのルールだからです。
まちぞうはいつか箪笥のとびらをあけて、ちっちゃい子と遭遇する日を夢見ていますが、それをする勇気がありません。
なぜなら、とびらを開けた瞬間に、ちっちゃい子はもうどこかよその部屋の箪笥へと引越してしまうに違いないからです。
このあいだ、ちっちゃい子が箪笥からいなくなって驚きましたが、その日は大阪梅田の駅前第一ビルで「全国箪笥の中で暮らす会」の例会があったそうで、それに出席するために、まちぞうがちょうどシャワーをしていたときにこっそり箪笥を抜け出したのだということでした。
でもいつか、ちっちゃい子に風に揺れる花や夕焼け空をみせてあげたいと願っているまちぞうなのです。