シェフズ・スペシャル
カレー伝道師特製オリジナル・レシピ

第2回 キャベツのスパイス炒めしょうがとバター風味


 本格的な中国料理、あるいは日本の家庭料理でもキャベツの炒め物といえばシャキッと歯ごたえよく仕上げるのがふつうだろう。
 ところがインド人の発想はユニークである。
 キャベツであれ、青菜やピーマンであれ、野菜の炒め物といえば完全に火を通してしんなりやわらかに仕上げる。調理術にしても、鍋を振ってあおったりせず、オイルやスパイスを材料に絡ませるようサッと全体を炒め合わせたら、ふたをして弱火で蒸し煮する。

 しんなりやわらかい炒め物というとあまりおいしそうには感じられないが、実際は違う。野菜自体の滋味が予想以上に前に出ていて、口にしたときの第一印象は「甘い! おいしい!」ということになる。
 何といってもポイントはスパイスである。スパイスを加えながらじっくりと加熱することで素材にスパイスの風味が染み込み、短時間の炒め物では味わえない独特の深い味わいが醸し出される。しかも炒め煮にした分だけ歯触りは後退するものの、かさが減って量をたっぷりとることができるし消化もよい。逆転の発想ともいうべきインドならではの独創的な調理法である。

 ここでは胃腸にいいキャベツを、やはりすぐれた健胃整腸作用のあるしょうがと組み合わせた炒め物をご紹介する。風味をさらに高めるスパイスにも胃腸によいマスタード・シードやクミン・シード、ターメリックなどを使う。ふだんから胃弱気味の方ならば、辛さをグッと控えめにしてつくればいい。

 おもしろいのは、コクを出しながら全体にまろやかな風味を加えるためにバターを用いることだ。そうすることで動物性のスープやだしの力を借りずとも野菜自体のうまみが存分に引き出されるのである。
 本来はご飯に混ぜ込んで食べるが、パンとの相性も抜群だ。サンドウィッチの具など、多彩に活用していただきたい。
 
 
キャベツのスパイス炒めしょうがとバター風味

材料(四人分)
キャベツ1/2ヶ、トマト1/2ヶ、たまねぎ1/2ヶ、青唐辛子2本(なければししとう4本で代用)、しょうがのみじん切り 大さじ1、サラダ油 大さじ3、塩 小さじ1/2〜1、バター 大さじ1〜2(お好みで加減しよう)、カレー・リーフ10枚(なければ省略)、香菜のみじん切り 大さじ1(なければ省略)
《ホール・スパイス》
チャナ・ダルとウラド・ダル 各小さじ1、たかのつめ1本、ヒング少々、クミン・シード 小さじ1/2、マスタード・シード 小さじ1/2
《パウダー・スパイス》
ターメリック 小さじ1/4、カイエン・ペパー 小さじ1/4
 
下準備

@キャベツはザクザクと5ミリ幅程度の粗めの千切りにする。
Aたまねぎはみじん切り、トマトは粗みじんに刻む。
B青唐辛子はスリットを入れるか、縦半分にカットする。ししとうの場合は小口切りにしておく。

 
調理

@中華鍋かフライパンにサラダ油を入れて火をつける。
A弱火にし、表記の順にホール・スパイスを加えていく。
Bすべてのホール・スパイスを入れたら中火にして、こがさないように鍋をゆすりながらスパイスの香りを鍋に移す。
Cダルがやや茶色に色づき、マスタード・シードがパチパチとはじけだしたら、たまねぎを加えて炒める。
D透明になるまでたまねぎを炒めたら、しょうがのみじん切りを入れ、香りが出るようサッと軽く炒め合わせる。
Eキャベツ、トマト青唐辛子かししとう、あればカレー・リーフや香菜もすべて鍋に加え、全体をサックリと混ぜる。
Fキャベツに油がまわったら弱火にして、パウダー・スパイスと塩を加え、スパイスが全体に絡むよう、さらに1分程炒めよう。
Gバターも加え、ここからはふたをして弱火で蒸し煮する。
Hキャベツがしんなりとして、やわらかになるまで煮ればできあがり。塩加減をチェックしよう。少し塩を足すことになるはず。

  おいしくするコツ

・ふたをすれば、キャベツとトマトの水分だけで十分に蒸し煮が可能だ。最小限の水分で蒸し煮することでキャベツの甘味が前に出るし、できあがりの色つやもよくなる。
・それでもこげそうだったら、大さじ1から2ずつ差し水しよう。
・キャベツといっしょにグリンピース(冷凍でかまわない)、短くカットしたいんげん、おなじく1センチ角ぐらいに刻んだじゃがいもなどを入れていっしょに蒸し煮してもいい。じゃがいもを使うときはサッと下ゆでするか、キャベツやほかの材料より先に炒めはじめるといい。
・キャベツの火の通り具合はお好みで。シャキシャキ感が残るくらいで仕上げてもいいし、じっくり加熱するのもまたおいしい。

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