第10回 北インド風ヨーグルトベース・フライドオニオンのチキンカレー
日本人にとって、もっともベーシックかつもっともバリエーションの広いカレーメニューのひとつは「チキンカレー」であろう。 |
北インド風ヨーグルトベース・フライドオニオンのチキンカレー 材料(4〜6皿分) 骨付き鶏肉(ぶつ切り、ウィングスティック、手羽先など)600グラム、たまねぎ1ヶ、にんにくとしょうがのすりおろし 合わせて大さじ1、青唐辛子2本(なければししとう4本で代用)、プレーンヨーグルト1/2カップ強(100cc強)、塩 小さじ2程度、サラダ油 計1カップ程度(フライドオニオン用を含む)、お湯か水 計2カップ半〜3カップ程度、香菜のみじん切り 大さじ山盛り1(なければ省略)、トマトの粗みじん切り1/2ヶ分(なければ省略) 《ホール・スパイス》 グリーン・カルダモン2粒、ビッグ・カルダモン1粒(なければ省略)、シナモン・スティック2センチ、ブラック・ペパー10粒、ベイリーフ1枚 《パウダー・スパイス》 ターメリック 小さじ1/4、カイエン・ペパー 小さじ1〜同山盛り1、コリアンダー 小さじ1、ガラム・マサラ 小さじ1(市販品でも一応可。抜群な風味になる秘伝の配合については拙著『誰も知らないインド料理』を参照のこと) |
下準備パート1 【フライドオニオンをつくる】 @たまねぎの皮をとり、縦ふたつに割ったら、繊維を断ち切るようにして、 横方向に薄く均一にスライスする(この方向に切ると、煮込んだとき、早くたまねぎが煮くずれて、よりおいしいのだ)。また、ペーパータオルや新聞紙を敷いたバットや平皿も用意しておくといいだろう。 A厚手の鍋を用意したら、1カップ程度たっぷりとサラダ油を入れる (使用後の余りは、香ばしい「たまねぎ油」として、炒め物やサラダ、ラーメンなど、インド以外の料理にも使えて重宝だ)。 B火をつける前にスライスしたたまねぎをオイルに入れ、それから火をつける。最初は強火。 Cたまねぎをほぐすようにしながら、強めの火加減で揚げるように炒めてやる。 Dやがて、たまねぎの水分が抜け、かさは減りはじめ、泳ぐような感じになってくる。そうしたら、徐々に火を弱めてさらに揚げ炒めしよう。 Eたまねぎスライスのひとつひとつがそれぞれ茶色っぽく色づきはじめたら、そろそろ佳境。 これから先が勝負だ。スピーディに手際よく決めよう。絶対にこがさないように。 Fこげないように火を弱めつつ、丹念にかきまわして揚げ炒めすると、やがて、たまねぎは全体的に黄金色になる。そうしたら、ペーパータオルや新聞紙を敷いたバットや平皿に、たまねぎをすばやく引き上げる(※上の写真の下の方が、引き上げ直前の状態。これ以上加熱すると、余熱でたまねぎに火が入りすぎ、こげることもあるので要注意)。 Gベチャッとならないよう、薄く広げて余分なオイルを切っておこう。 これで「揚げたまねぎ=フライドオニオン」のできあがりだ。 下準備パート2 【ほかの材料の準備】 @にんにくとしょうがはおろし金などですりおろし、ひとつに混ぜておく。 にんにく1かけと同量のしょうがを用意すればいいだろう。 Aヨーグルトはダマのないようかき混ぜておく。 B青唐辛子があれば縦半分に切るか、スリットを入れる(なければ省略)。 ししとうを使うときは小口切りにしておこう。 Cあれば、香菜はみじん切りに。トマトは粗みじん切りにしておく(どちらも、なければ省略)。 D骨付き鶏肉はサッと水洗いしたら(インド料理は基本的に「あく」をとらない。 そのため、煮込み用の肉はあらかじめ洗う。挽き肉を洗う人までいるくらいだ)、水切りしてボールなどに入れておく。 調理 @フライドオニオンをつくった油(「たまねぎ油」)をいったんすべて鍋から上げ、あらためて、大さじ3程度の「たまねぎ油」を入れ直す。 A中火にし、すぐにホール・スパイスをすべて加える。こげやすいベイリーフのみ、ひと呼吸置いて、後から入れるといいだろう。 Bカルダモンがふくらみ、スパイスのいい香りがしてきたら、火を止め(こげつきと「はね」防止のため)、にんにくとしょうがのすりおろしを加え、サッと炒め合わせる。 Cにんにくとしょうがのいい香りがしたら、火を止めた余熱状態のまま、青唐辛子かししとう、あれば香菜のみじん切りも加え、さらにサッと全体をかきまわす。 Dさらに鍋の火を止めたままヨーグルトを入れたら、今度は弱火にして全体を30秒ほどかき混ぜる。鍋底ににんにくやしょうがが張り付いている感じがしたら、こそげておこう。 Eここで、フライドオニオンの登場。できれば、指先でちぎるようにして細かくしながら(「手動あるいは人力ミキサー」のイメージだ)、ヨーグルトそのほかの入った鍋に入れる。 Fかきまぜつつ、そのまま弱火で1〜2分炒めたら、ガラム・マサラを除くパウダー・スパイス3種類(表記した順番で入れるといい。 さもなければ、とにかく「ターメリックが最初」と覚えること)と塩を加え、スパイスに火が通り、粉っぽさがなくなるよう、1〜2分、弱火で炒める。 スパイスもまたこがさないことが基本だ。 Gさらに「ヨーグルトと同量程度(カップ1/2)」の水かお湯を加え、火加減を弱めの中火にアップし、5分程かき混ぜながら煮込む。途中でこげそうになったら、さらに少しずつ水かお湯をチョロチョロ足そう。 H5分ほど炒めると、表面に赤っぽい色のオイルが浮いてくる。これがカレーのベースとなる「マサラ」(スパイスや香味野菜、ヨーグルトなどのミックスを「マサラ」という)の「できあがりサイン」だ。そうしたら骨付きチキンを入れよう。 Iチキンを入れたら、肉の表面に火が入って白っぽくなるまで(5分程度)、中火で炒める。水やお湯を足さずにしっかり肉を炒めることで、できあがりが断然おいしくなる。 J肉の表面に火が入ったら、ヒタヒタになるくらいの水かお湯(せいぜい2〜2カップ半程度だろう)を、1/2カップずつぐらいに分けて入れる(こうすると、不思議と水っぽさや粉っぽさが避けられる)。一度水やお湯を加えるたびにかきまぜつつ沸騰させ、また水かお湯を加える。これを繰り返そう。 K水かお湯がヒタヒタまで入ったら(ビギナーの方は「肉がかぶるかかぶらないか」ぐらいで止めておいた方がいい。水の入れすぎは厳禁)、沸騰するまでは強火、その後は沸騰を維持できる弱火で、肉がやわらかになるまで、ときどきかきまぜながら、ふたをして煮込む。チキンの肉質や火加減にもよるが、時間にして30〜40分というところだろう。 L肉がやわらかになり、最初はシャバシャバだった「グレービー(カレーソースのことだ)」にもトロみが出れば、ほぼできあがり。ガラム・マサラとトマトの粗みじん切りを加え、さらに5分ほど煮込もう。 M仕上げに香菜(分量外)をふりかけ、塩加減をチェックすれば、いよいよ完成。表面に油が浮くのが気になる方は、おたまなどですくいとろう(いちばん上の写真はオイルをとる前。一方、下の写真はオイルをとってからごはんにかけた状態だ)。 おいしくするコツ ・多くのカレー同様、水やお湯を入れすぎないこと。基本的かつ最重要なコツのひとつである。 ・たまねぎは余熱で火が入る。揚げすぎ、炒めすぎは「こげ」につながるので要注意! 「もうちょっと色をつけたいな」という状況で引き上げた方がうまくいく(上の写真もそうだ)。 ・お気に入りのガラム・マサラが手に入らないときは省略してもいい(グリーン・カルダモンとブラック・ペパーを同量すりつぶしたもので代用しても、これまた美味。私の師匠はよくそうやって仕上げていた)。香菜がないときも、同様に省略可能である。 ・骨付きチキンを入れたら、すぐに水やお湯を足して煮込まずに、しばらくキッチリ炒める。これもおいしい肉カレーづくりの大事なポイントである。 ・できあがりからしばらくすると、チキンがグレービーを吸って、カレーソースの量が減る。このとき、グレービーが少なすぎると思ったら、ほんの少しだけ水かお湯を足して、さらにひと煮立ちさせよう。 ・同じくできあがりにコクがないと思ったら、トマトの粗みじん切りを増やせば、おいしくなる(ただし、入れすぎると、せっかくヨーグルトをベースにした意味がなくなる)。 ・ヨーグルトがベースだからといって、あからさまに酸っぱいカレーにはならないことも、頭に入れておくといいだろう。肉やスパイス、揚げたまねぎなどの風味を高めるのが、このレシピにおけるヨーグルト最大の役割だ。
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